第10話 名探偵奈々子
【古川家って、本当にお金持ちの家なの?何考えてんの?どうして家族全員がこんなにも簡単にこの“ヒモ男”に振り回されてるの?】
古川家:うう、叱られちゃった。
【特に古川朔!。冷徹で策を巡らすのが彼の本領じゃない?普段はあんなに鋭そうなのに!】
古川:…俺でも人の内面までは調べられない。特別の能力を持っている訳じゃないし。
古川は前々から山本雅が大したことない男だと思っていた。
しかし、姉が好きならそれでいいかと考えていて、特に干渉はしなかったし、何かアドバイスをする程度に留めていた。
まさか内側にこんな爆弾が仕掛けられているなんて、思いもよらなかったのだ。
奈々子はこの一連の展開を見て、いよいよ我慢の限界に達し、箸を置いた。
【もう我慢ならない。いっそのこと、私が直接彼らを引っ掻き回しに行くわ。秘密を直接言うわけにはいかないけど、ここでひと騒動起こしてやろう。】
古川は奈々子心の声のを察し、思わずため息をついた。
仕方ない、ここは自分がやるしかない。
古川は気を引き締めて言った。「姉さん、我々の意見は変わらない。やはり離婚した方がいい。もし離婚しないのなら、今後山本家との取引や支援をすべて中止にする。」
古川'sはすぐに、これは山本雅の本音を引き出すための“試し”であることに気づいた。
本当に権力に興味がないのかどうか、この言葉に対する反応で分かるはずだ。
たとえ古川が奈々子の話が本当だと信じていても、家族全員がそれを完全に鵜呑みにしているわけではない。
これは奈々子が言う真実を確認するための古川朔の一手でもあったのだ。
「何ですって!」山本母は慌てて古川家の両親に視線を向けたが、古川父が冷静に言った。「今の古川家をまとめているのは古川 朔だ。彼の決定が我が家の意思だ。」
山本雅の顔は真っ赤になり、怒りと困惑が入り混じった表情が浮かんでいたが、しばらくして黙り込んだ。
一方、山本母は必死で智子の腕を掴み、「智子、あなたのお弟は君が家族だと思ってないじゃない!それに、こんなことしたら私たち山本家はどうなるのよ!君が子供を産めたら、こんなことにはならなかったのに!」と叫んだ。
その言葉に、古川母はすぐさま顔を曇らせ、娘を自分のそばに招いた。
「雅には他の女と結婚すればいいじゃない。産みたければ何人でも誰も止めはしないわ。どうしてそんなに智子と離婚したくないの?」
山本母は慌てて息子の方に助けを求め、山本雅が古川を見て話そうとした瞬間、古川は冷たく笑い、「名声が気になるなら、安心してください。もし本当に離婚するのであれば、古川家が姉に無理やり離婚させたと言っておきます。君には一切影響はないはずだ。これまで古川家はずいぶん山本家を助けてきたんだ、まさか今更になっても姉が君に借りがあるとは思わないだろうね?」と言い放った。
この言葉が偽りの仮面を叩き潰し、山本雅の顔はさらに蒼白になった。
【すごい!古川朔、よくやったね!私の出番はなさそう!】
奈々子の歓声が聞こえ、古川の口元には自然と微笑みが浮かんだ。
古川家も無実の子供が困るのは望んでいないが、それ以上に大事な娘が悲しむのを見るのは耐え難い。
冷たい夫だけでも大変なのに、さらにもう一人養わなければならない子供が増えたら、智子は精神的に追い詰められてしまうに違いない。
だから離婚こそが最善の選択なのだ。
山本雅の視線は険しくなり、脅しを含んだ冷たい声で、「智子、家族がこう言っている以上、君も同じ気持ちだということでいいのか?」と尋ねた。
以前なら、山本雅が少しでも不機嫌な素振りを見せれば、智子はすぐに機嫌を取り戻そうと努力していただろうし、山本家のために古川家に懇願したかもしれない。
しかし、智子は黙っていた。奈々子から聞いた真実に大きな衝撃を受け、まだ気持ちの整理がついていなかったのだ。
山本雅の高慢な表情は一瞬崩れたが、すぐに山本母が叫び声を上げた。
「だめだ、離婚なんてできないわ!智子はもう子供が産めないのよ、他に誰がもらってくれるって言うの!」
「ふん!うちの智子を迎えたいっていう人は山ほどいるわ!」古川父は冷たく言い放った。
「でも…産めないじゃない。迎えるとしても、みんな裏の意図があるだろうし…。」
「それなら嫁に出さなくてもいいさ。我が家で大事に養っていくつもりだ。」古川母は続けて、「子供が欲しいなら、孤児でも養子にでもしておけばいい。私の娘が幸せなら、それでいいの。」と言った。
【私からすれば、子供ができないのは智子一人のせいってわけじゃないよね?むしろ山本雅の方が遺伝的に合っていないのかも。離婚して別の人となら、きっと智子も幸せになれるし、子供も何人でも産めるかもよ!】
奈々子の言葉は、古川家に新たな希望をもたらした。
智子もその言葉に少し心を動かされた。
もしも相手が変われば、自分の子供をもてるのかもしれない…そんな淡い期待が心に芽生えた。
【そうだ、智子さんの体調を調べてあげられるかも!医者よりも正確かもね。】
古川’s:えっ、そんなことができるの?!
【ふむ…確認してみるわね。あぁ、確かに体の調子がよくないし、妊娠は難しい。でも、まったく不可能ってわけじゃないわね。】
古川’sはがっかりして、医者の言ったことと変わらないと感じた。
すでに九年が経った、医者もわずかな可能性が残しているだけだと思っていたのだ。
しかし、突然奈々子が声を上げた
。
【おいおい!だから子供ができなかったのか!!これ、責任は半分ずつでしょ!】
古川’s:???
【九年も経っているのに…山本雅は月に数日しか家に帰らず、同居の回数も年に何度かあるかどうか。もともと確率が低いのに、これで妊娠できるわけないわ!もし子供ができたら、山本雅は逆に浮気を疑うかもね。】
衝撃の事実に、古川’sは思わず智子の方を見た。
智子は顔を真っ赤にして俯いた。こんなことまで分かってしまうの?彼女はもともと慎み深い性格で、こういう話を口に出すのは気が引けたし、自分に原因があるのだとずっと思っていたため、特に他のことは考えなかったのだ。
山本雅が智子を責める資格などない、そもそも努力すらしていない。
しかし、こういった話を持ち出して問い詰めるのも気が引けるし、もはや問い詰める必要もないと全員一致で思っていた。
「絶対離婚するべきだ!これでは智子さんがあまりにもかわいそうだ。もし智子さんがまだ迷うなら、強引にでも離婚させよう。」そんな決意が固まっていた。
だが、奈々子の考えはさらに広がっていった。
【おかしいわね?もし智子と一緒にいたくなくて帰宅しないにしても、じゃあ一体どこに行っていたの?本当に仕事で忙しくて帰れないの?それとも…】
古川’sは一瞬息をのんだ。心に不安がよぎる。【何を想像しているの?】と。
奈々子は山本雅の「清廉潔白」なイメージを気にせず、次々に推理を展開した。
【もしかして、外に愛人がいるとか…?】
大胆に仮説を立てて、慎重に証拠を探す――それが奈々子流。適当な推測をするわけにはいかない。
【なんてこと…!】
【なんてことなんだ!!】
次々に飛び出す驚愕の言葉に、問題の深刻さを感じざるを得なかった。
古川’sは緊張で心臓が喉元まで上がり、奈々子が真実を告げるのを待っていた。
智子ですら呆然としてしまい、心が凍りつくようだった。
【病院のすぐ隣にある高級マンションの18階で、山本雅と元恋人の恵美が夫婦同然の生活をこの九年間続けているのよ!】
古川家の人=古川’sにしました。
人数が多いと書きにくいですね。
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