ずっと待ってた
妻を亡くして20年経った僕も既に70歳になった。
40歳、婚活アプリで知り合うと、すぐに意気投合し、告白する前から交際していた。
指輪をプレゼントするにも指のサイズがわからないし、通販で調整が可能な1000円くらいの指輪をプレゼントしてサイズを確かめようとしたら、そのまま1000円の指輪が婚約兼結婚指輪になっていた。
肌荒れもしないし、調整できるし、デザインも気に入っていたから。
お互いに40を超えて子供には恵まれなかったとは言うものの、現実に子供を養えたかはわからないし、君の身体の負担を考えると子供を作ることは考えようと言っていたまま、君は感染症の犠牲者になってしまった。
妻の遺影に腕枕して寝る日々……。
この1000円の指輪は10億を積まれても売ることはできない価値となった。
もっと早くに出会いたかった。
そして、若くして君のために誠実になりたかった。
処方されていた睡眠薬は飲まない時が多く、だいぶ増えた。
一気に飲んで眠くなりたい。
そしてこの闇に紛れて視界には見えない黒煙の中で_______
初めて見る、若く美しい女性。
でも、彼女だとわかった。
なんと言うか……オーラと言うか、動作と言うか。
「ずっと待ってた。でも、なんで私だとわかったの?」
僕にとって、一番綺麗な女性だから……
インスピレーションは妻と一緒に死のうかと話したことがあります。
そのときは抱き合ったまま布団の中で眠るようにと。
このふたりが出会うのは希望よりは遅すぎた。
でも、あの世界で妻は若いまま、夫が来るのをずっと待っている。
初めて見る妻の若いころだが、その暖かなオーラで気付く二人。
改札口で彼女を待っていた若いころ、雑踏の中でも気付いたものです。その瞬間、彼女だけしか見えなくなることも。