第7話
「マリューシェと会えなかったことは竜王には伝えなくてはならない。怪我が治ったら俺は一度、城に戻らないとな」
リュオンの言葉にミシェルは寂しいなと思った。
傷が癒えたのなら帰るのは当たり前だから仕方がないとはわかってはいるのだけれど、3人でいた時間はすごく楽しかったのだ。
母がいなくなり一人で寂しい思いをしていた日々、そこへノエがひょっこりとやって来て、寂しくなくなってノエが傍にいるのが当たり前になっていた生活。
そこへ突然、現れた竜。
大きな怪我をしていて助かるかどうかわからなくて、凄く不安だった日々、だけど助かってホッとしたつかの間、人の姿になったリュオンを見て驚いた。
そんな中、リュオンとノエが遊んでいる姿を見るのが好きだった。
本当に楽しそうに遊んでいる2人を見ると心が温かくなり幸せな気持ちになった。もっと続けばいいのにって思っていた。
「ミシェル…ミシェルに頼みがあるんだ」
一人で考えこんでいたミシェルにリュオンが声をかける。
「頼み?私に出来ることならいいけど…」
ミシェルは自分に出来ることは少ないけれど、出来ることなら手伝いたいと思った。
「俺と一緒に城へ来て欲しい」
「えっ?えぇぇぇ!!!」
リュオンの行き成りの言葉に大声を上げてしまいミシェルは慌てて口を押えた。
「驚かせてすまない。マリューシェのことを竜王と竜妃に話してもらいたいんだ。俺が話すよりも彼女のことを知っているミシェルが話した方がいいと思ったんだ」
リュオンはその理由を口にした。
「それはかまわないけど、役に立つかしら…」
ミシェルにはそれが心配だった。
「大丈夫。それにミシェルとノエにはお礼がしたいんだ。俺を助けてくれた命の恩人だからな」
リュオンは城へ連れて行く目的はそれだけじゃないと告げる。
「えっ?そんないいわよ。お礼なんて大袈裟よ」
ミシェルは慌てる。お礼が欲しくて助けたわけじゃないのだ。
大きな怪我をしてる竜を見つけたから治療したわけで、助けたいと思ったから助けたのだ。
「なんかミシェルらしいな。見返りは求めない。ただ弱ってるものを助けたかっただけ。そう言いたいんだろ?」
リュオンが笑いながら言えば
「そうよ。見返りが欲しくて人助けするわけじゃないわ。って、私が助けてるのひとじゃないけれど…」
ミシェルがハッキリという。
「それでも、城に行ったらお礼をさせてくれ。というか…多分、竜妃がそうしないと納得しないだろう」
リュオンは自分の母の性格からしてお礼をしなかったら、後々で文句を言いまくるだろう。
「そうなの?」
ミシェルは不思議な顔をする。
「竜妃…母はそういうことには厳しい方でね。お礼はちゃんとしないと許してはくれないんだ」
苦笑を浮かべながらリュオンは説明をする。
「じゃぁ、こうしましょうリュオン。今回のお礼にお城についたらお城の中を案内してもらうっていうのはどうかしら。勿論、お城の周りも見てみたいわ」
「そんなことでいいのか?」
ミシェルの提案に少々驚きながらリュオンは聞き返す。お礼ならもっと他の事だってあるだろうに。
「いいの。お礼をしてもらう私がそれがいいって言ってるんだもの。それ以外は受けつけないわ」
ミシェルは少しだけ意地悪く言う。
「わかった。じゃぁ、君たちへのお礼はお城の案内にするよ。城の周りにも色んな動物たちがいるからミシェルは喜ぶかもしれないな」
リュオンはミシェルの提案を飲むことにした。じゃないと本当にお礼をさせてもらいそうになかったからだ。
「ふふふ、じゃぁ、約束ね」
「あぁ、勿論ノエも一緒に来るだろ?」
「なぁん」
3人はそれぞれに返事をした。