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第6話

「でも、ミシェルには本当に感謝してる。ありがとう」

リュオンのお礼の言葉にミシェルは少し恥ずかしくなる。何度もお礼を言われると照れてしまう。

「そんな、私はあの時、本当にリュオンを治すことしか考えてなかったから。でもよかったわ、まだ完治したわけじゃないけど元気になって」

リュオンの怪我はまだ完治したわけじゃない。だからまだ空を飛ぶことができないのだ。それだけ傷が大きくて深かったのだ。翼がもがれなかったのが不思議なぐらいだった。


「早く治さないと、竜王の所へ行けないからな。無理はしないでミシェルの治療はちゃんと受けるよ」

リュオンも自分の状況がわかってるので素直に言う。


「なぁう」

ノエもそうだといわんばかりに鳴く。

「ふふふ、ノエったら」

ミシェルはそんなノエに笑った。



「二つ目の理由はとある女性を捜しにこの地に来たんだ」

リュオンがもう一つの理由を話す。

「女の方?」

ミシェルはこの辺りに自分以外の人が住んでてだろうか?と考えた。


「そう、名はマリューシェというんだが、ミシェルは聞いたことがないだろうか?この付近に住んでいると聞いたんだが…」

リュオンの口から出た名前にミシェルは驚いた。

「…っ…そ…その名は…」

なぜ、竜族がその名を知っているのか?


「ミシェル?どうしたんだ?」

リュオンはミシェルがなぜそんなに驚いているのかがわからなかった。

「あっ…ご…ごめんなさい。リュオン…残念だけど…その方に会うことは出来ない」

ミシェルははっきりと言い切った。


「えっ?どうして?ミシェルは何か知ってるのか?」

リュオンはミシェルが言った言葉に驚いた。会えないとはどういう意味なのか?ミシェルは何を知っているのか?ミシェルは小さく深呼吸をして

「マリューシェは私の母の名です。母は数年前にいなくなったんです。私も居場所はわからなくて…だから…会うことは出来ません」

リュオンが捜している女性に合うことが出来ぬ理由を告げた。


「えっ?彼女がミシェルのお母さん?いなくなったって…」

リュオンは驚いてそれ以上は言葉が続かなかった。ミシェルの表情は悲しげで固まっている。



暫く二人の間には重苦しい沈黙が続いた。先に口を開いたのはリュオンだった。


「マリューシェを捜している本当の理由は俺も知らないんだが、彼女と竜王と竜妃は知り合いらしいんだ。だから捜してきてほしいと俺は頼まれた」

リュオンから出てきた言葉にミシェルは驚いた。母と竜族が知り合いだったなんて知らなかったからである。

「竜族のことは一度も聞いたことがないわ…母は必要以上なことは話さなかったから私は知らないことが沢山あるわ…」

ミシェルは本当に知らないことだらけだった。自分の力のこともその一つである。嘆きの雨のことも、母にちゃんと説明されていないのでなんのことかわからない。


リュオンと話をしていて、母に教えられていないことが沢山あるとミシェルは気が付いた。それにいなくなってしまった理由さえもわからない。


「すまないミシェル」

急に黙り考え込んでしまったミシェルにリュオンが謝る。

「えっ?あっ、なぜ?」

リュオンの突然の謝罪にミシェルは驚いた。


「いや、知らなかったとはいえ君に悲しいことを思い出させてしまった」

リュオンがすまなさそうな顔になる。

「あっ、ヤダ私ったら。大丈夫よリュオン。ちょっと、びっくりしただけなの。まさかリュオンの探し人が自分の母で竜族と知り合いだったって聞いて驚いただけよ」

ミシェルは少しだけ困った顔をしながら大丈夫だと告げる。母のことを思い出せば悲しくなるけど、でも、母には母の理由があっていなくなったんだと割り切っていた。だからそこまで気にはしていないのだ。

ただ、知らないことが多すぎるなと考え込んでただけで…。


「王たちとは古くからの知り合いだと教えてもらった。まぁ、出逢った経緯とかは教えてもらえなかったが、すごく仲の良い友と言っていたよ」

リュオンは竜たちとの関係をミシェルに教えた。

「母にも同じように微力ながらも不思議な力があったから、きっとその力で竜たちを助けたのかもしれないわ」

ミシェルはリュオンに説明しながらも、母なら自分と同じようなことをしただろうと思った。


マリューシェもミシェルが幼い頃に何度かケガをした小動物たちを力を使い治療していたのだ。



『いいミシェル、力を使いすぎてはダメよ。この子たちをダメにしてしまうから。少し力を貸すだけ、後はこの子たち自身の力でケガを治せるようにね』

『うん』

ミシェルの前で力を使いながら教えてくれた。治癒の力の使い方を。力を使いすぎず、動物たちの治癒力を信じることを教えてもらった。それは今でもミシェルの中で教えとして残っている。



そんな母だから竜を助けることだってあったのかもしれない。自分がリュオンを助けたように母もとミシェルはそう思った。




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