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溜めて打つ渾身の一撃

作者: 堆烏

寒い冬。のはずなのに急なポカポカ日和。気分的にはとても嬉しい。

だけど頭は痛くなる。これぞ片頭痛持ちの厄介なところだ。

むぅーっと唸りながら頭痛薬をお茶と一緒に飲み干す。常備しているとこういうときに助かる。

気圧の変化ってやつなのかな。空の天気はコロコロ変わる。暑いと思ったら寒くなったり、雨だと思ったら急に晴天に変わっていく。友達のカオルちゃんみたいな性格だ。


カオルちゃんは、気分屋。毎日違った顔つきをしてる。カワルちゃんとも言われちゃったり。本人は気にしてないみたいだけど。

気分の乗ってる時期のカオルちゃんは何でも絶好調。テストだって運動だって人一番良い成績を叩き出せる。だけど日が悪いと学校にも来なかったり、簡単な問題だって解けない。頭が上の空になっちゃんだとかなんとか。高校入試までにその性格を直してほしいと私は思ってる。入試の日が絶好調なら別にいいんだけど、運悪く調子が出ない日だったら一緒の高校に行けないかもって思うから。

 私はカオルちゃんと同じ高校に行きたいのだ。勿論、私が落ちちゃうことも普通にあるから毎日こうやって放課後も図書館で勉強している。カオルちゃんは隣で寝てる。やる気が出ない日らしい。部活が終わっても勉強しないんじゃ不安で不安で私はたまらない。


カオルちゃんはテニスの部活をやっていた。勿論中学三年の冬は既に引退し終わっている。テニスをやってた頃も、その実力は日や曜日によって左右されてたみたいで、顧問の先生からは調子の良い日、調子のよい曜日だけレギュラーに選抜してもらっていたようだ。理解のある先生だよ~ってヘラヘラしてた。カオルちゃんを扱える先生がいるとは思わなかったのですごいと思った。


結局入試本番までカオルちゃんはあんまり勉強してなかった。入試会場は別だったから余計に心配だった。でも、別れる寸前、彼女は言った。


大丈夫。今の感覚を私は知ってるの。絶不調だった7月31日から次の日になった時、8月になって初めてサーブを打ったあの日と似てる。あの月は試合じゃ誰にも負けなかった。だから大丈夫。今の私は8月の私と同じだから。


調子の良いカオルちゃんのサーブを触れれた選手はいなかったという。ちょっと安心して私は入試にのぞんだ。



寒い冬が過ぎて4月。入試トップの成績で合格したカオルちゃんの顔は久しぶりに見た絶好調の笑顔だった。

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