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ヨーダは、場所から始まって、見た時間、大きさ、色、形、動き方など、細かく聞いてきた。
アーシィは、次々に答えていった。学校帰りであったこと、図書館のそばにいたこと。とび箱なら七段くらいの大きさだったこと。色と形は白い衣をつけられて揚げる前のフライドチキンのようだった。角のようなものがてっぺんに付いていて、そこから衣に見える皮が破けており、中からドロリとした液体が溢れ出ていたことーー。
「やっぱりかよ……確実にあいつの第二段階じゃねえか」
「あの獣が脱皮してるってことか? 独りで? まさか! 主候補がこれだけ大勢いて、 はぐれるものか」
「事実なんだから仕方ねえだろ」
「脱皮? あれが?」
「ああ、虫やトカゲの仲間じゃねえが、古い皮を脱いで全く新しい生き物に変わりやがる」
アーシィはまたドキドキしてきた。
(あれが脱皮中の姿なら、出てきた後の姿はどうなんだろう?)
「ねぇ。あの獣、名前はなんていうの?」
さっきからずっと気になっていたことをようやく聞けたアーシィに、ヨーダが軽く笑って答えた。
「もしも本当にあれであるならーー『幻獣図鑑、239ページ』だね」
「え? それが、名前?」
「他にもあるけどね。変化獣っていうんだ。姿がかなり変わるから。ちなみに第一段階は可愛らしい子犬みたいなんだよ」
「脱皮の度に変わるが、特に第三段階がすげぇんだ。一匹も同じにならねぇ。ここにいるやつもとんでもねぇ変化をするだろうぜ」
「……だから、別の生き物だろう。何も脱皮する幻獣はあれだけじゃないさ。最初の目撃例がどこだったか忘れたわけじゃないだろう? ここからじゃ遠すぎる」
「だから、確かだと言ってるじゃねぇか。どういう理由で森を越えてこんなへんぴな町まで来たのか知らねぇが、聞けば聞くほど、あの獣がはぐれたとしか思えねぇんだよ! ……くそっ」
イオと呼ばれていた大男は、いら立ちを隠しもせず柱を横なぐりにした。振動が床を伝わって足の裏がびりびりした。
議論になっている二人組に割って入るようにアーシィの母親がやんわりと言った。
「迷子になった子のことは心配でしょうけれども、うちの子をそろそろ寝かせてあげたいのよ。構わないかしら?」
「ああ! これは気が付かず申し訳ない。……アーシィ君、今日はありがとうね。おやすみ」
「いえ。また何かあれば」
「ーーあれば、な」
まだ苛立っている様子の大男のほうからも声がかかって、アーシィは何だか自分が睨まれているような気がして落ち着かなかったが、無視されるよりは良かったと思うことにした。