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その日の晩ご飯の話題は二つ。
アンジェの赤ちゃんが思ったよりお乳を飲まないため動物病院へ連れて行くこと。
もう一つは、正体不明の生き物の話。父親が言うには何人かの目撃証言があるらしい。話の内容に差があって目撃されたのが同じものかどうか分かりづらかったが、時系列に並べると見えてくるものがあった。岩のようにデコボコした塊だったと言う者。塊ではあったが、岩と言うより折りたたまれた巨大なカサのようだったと言う者。全身をどろどろした液体に包んだ馬のようだったと言う者。アーシィはもう迷わなかった。
アーシィに告げられて、両親は食事もそこそこに急いで電話をかけた。受話器に耳を当てなくても聞こえてくる大きい呼び出し音は、町内会長へつないでいる音だ。母親がかけているのは音からしてアーシィの友人宅かと思ったが、話の内容に耳を傾けていると、どうやらPTA会長と話しているらしかった。耳はそれほど良いほうじゃない。
父親が電話を終えて戻ってきた。聞けば、会長は目撃証言を集めているのでアーシィの話も聞きたいのだという。遅くなっても必ず今夜中には自宅に聞きにくるからそれまでは寝ないで待っていてほしいとのこと。次の日も学校があるのに、と反論すると、おそらく学校は休みになると聞かされた。そして、まさしくその通りになったのだった。
* * *
子どもだということで、他の目撃者よりも優先して話を聞きにこられたのだが、告白するのが遅かったので、町内会長が家へ到着したころには夜の十一時を回っていた。ウトウトしていたアーシィの目が急にハッキリ覚めたのは、会長に怪しげな二人組の連れがいたからだった。
片方はがっしり鍛えられた傷だらけの大男で、もう片方は人の良さそうな笑顔を浮かべた丸っこい顔をした男だった。
丸いほうが急な訪問を母親に詫びている間、大男のほうがズカズカとアーシィに近づいてきて、短く問いかける。
「どこで見た? 様子はどうだった」
「あ……えっと」
急な質問に戸惑っていると、丸顔の男が慌てた様子で取り持ってくれる。
「こらイオ。子ども相手に……もっと優しく聞けないか。やあすまなかったね。君がアーシィ君? はじめまして、よろしく。おじさんはヨーダ。いつもはそう、カフェのマスターをしてるんだ。だけど今夜は情報屋として動いてる。おじさん達に、君が見たものを教えてくれるかい?」
「ほらアーシィ、『よろしくお願いします』だろう?」
「あ、あっと。はじめまして。よろしくお願いします。僕の覚えていることなら何でも教えるよ」