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探し人が変わっただけだ──。
エストと合流できたアーシィはそう考えることにした。
本来ならエストと一緒に帰郷の途についている頃合いなのだが、彼女の言葉を取り返すまではお預けだ。しかし夏休みが終わるまでに見つからなければ志半ばにして帰らなければならない。一抹の不安を残しながらも二人はイオを探すために出かけていた。それがエストと再会した次の日の話だ。
「あいつは角を勝手に持ち去った泥棒だし、エリシャちゃんの事故の元凶になった弓使いだ。一番酷いのは、エストの絆を解くために何人も殺してるところ。デルシリスでは指名手配されてる。フィアンタでの扱いがどうなのか確認しよう。まずは警察だよ」
──あのね、マスター。私、分かるかもしれない
「分かるって……イオの居場所がかい?」
──うん。私の角、一本しか使われてないの。残りはここ何年も動いてない
「その残りがどこにあるかが分かるってわけか……なかなか有力な手がかりだね」
もしかしたら道具屋や薬剤師に売られて在庫として保管されてるのかもしれないと前置きした後で、アーシィは真っ直ぐにエストを見つめながら言った。
「ともあれ、行ってみよう」
* * *
商店街は色とりどりの看板が鮮やかに並んでいる。観光客目当ての土産物店が半分を占める中、青果店や喫茶店、肉屋に魚屋、質屋などなど。薬屋もあったが、エストはそこをスルーして他の路へと入っていく。住宅街へ続く路だ。少しだけ期待が高まってきて、アーシィは武者振るいした。もし本当に本人だったらどうしよう。これまで捕まえたことがあるのはすべて動物だ。人間を捕まえたことは一度もない。いや、捕まえる必要はないのか。イオを捕まえるのはリーヤの仕事だ。こちらの目的はエストの呪いを解くこと。角を使った人物に上手に魔女の薬を飲ませれば、不老不死の薬効だけ消え去って目的を果たせる。どうやって飲ませるか。そこが問題だ。
先導していたエストがぴたりと歩みを止めた。目の前には小さい一軒家がある。アーシィは両目を真ん丸にして息を深く吸い込んだ。
「ここなの? エスト」
──うん。ここよ。
アーシィはすぐには行動できず途方に暮れてしまった。どうしよう。呼び鈴を鳴らすでもないし、張り込むでもないし。と、迷っていると向こうのほうから動きがあった。ドアノブが回ったのだ。
「!!」




