10-2
三日目に何も得られなかったから、森を見限り岩山へ来ている。
四日目ともなると慣れたもので、宿を出てから屋台へ寄ってホットドッグと飲み物を買い求めてから出発していた。
午前中にはずっと道なりに進んでいたが、午後からは道を外れてみようかと考え中だ。唇の端についたケチャップをなめ取りながら周囲を見回す。森の中は昼間でも少し暗くてじめっとしていたが、岩山は背の低い木がまばらに生えている以外は草も控えめで、明るいを通り越して少しまぶしかった。白っぽい茶色の岩肌はからからに乾いている。温水湖から上がってくる湯気もここまでは届かないらしい。
アーシィはミントが混ざった茶を飲み干すと、ゴミをナップザックに入れて立ち上がった。道から逸れて崖に足をかけ、下を見下ろす。そこには湖が青く広がっていた。湯床はここからだと端を囲う柵が遠く小さく見えるだけだ。濃い青色は湯が深いことを表している。落ちたとしても大丈夫かな? などと考えながら崖から離れ、またエストの手がかりを探し始める。
が、二時間ほど経ったところで、ふと足を止めた。
アーシィの頭の中で急速にたくさんの疑問符が回り出す。
そういえば、今自分が探している手がかりって、例えばどんなものだ? 闇雲に歩き回って、何か得られるんだろうか? 考えてみれば、エストのフンの形も知らない。図鑑にも出てなかった。それにそうだ、あの子は白っぽい場所は避けて近付かない。
──僕は、どうしてこんなことをしているんだろう?
アーシィは力なく腰を下ろすと、影もない岩場にごろりと寝転んで、細く長い息を吐き出した。
真夏の空はやけに青く見えて、視界の端にもこもこと立ち上がる入道雲がいやにまぶしくて、両目を閉じてもまだ明るくて、何だかなぁ。と思って眉根を寄せた。
──ああ、そうか。僕は
「……フィアンタに来さえすれば、エストの方から会いに来てくれると思ってたんだ……」
それで、そうではなかったからといって、勝手に期待していたのに勝手にふてくされているのだ。
そうでなかったのなら、これからどうすれば良いのか、考えなければいけない。岩山には探すところがあまりなく、あまたのハンターがそろってお手上げ状態になっているのもうなずけた。
アーシィはため息ひとつもらして大の字になった。少し、何もせずに頭を冷やしたかった。そうする内に眠ってしまい、目を覚ました頃にはすっかり日に焼けて頬がヒリヒリと痛んでしまっていた。
* * *
五日目。アーシィはもやもやした気分のまま探索を続けるのは止めにして、街へ来ていた。
まだ路銀には余裕があったが、ちょっと良い食事を摂りたくなったため、日雇いのバイトをあっせんしてくれる紹介所を訪れている。予想以上に混雑しており、それだけであきらめて引き返したい衝動に駆られたが、フィアンタで働くのは気分転換も兼ねていたため、何とか踏み止まった。
「{すみません。僕、旅行中……仕事、欲しいです。一日だけ}」
「{ああ、それなら三番窓口だわ}」
三番の窓口で紹介されたのは森の清掃だった。




