3-1
次の日、学校は休みになった。クマが森から出てきた時と同じで、出歩いているのはハンターの資格を持っている者くらいだ。アーシィの両親は共に資格を持っている。二人とも朝から出かけてしまった。
どきどきしていた。今なら探しに出られる。エサになりそうな果物やパンをたくさん持っていって、図書館か、もしくは森へ。目撃されたのはその二ヶ所だそうだ。図書館の前を左右に伸びている通りは住宅街と反対方向へ歩けば森に出られる。もっとも図書館前に限らず、この町を扇形に区切っている通りはどれを選んでも全て森へと辿り着く。そして森は泉や丘を包みながら大きく広がり、やがて他の里や村と境目を作る。
持っていくものは本当に食料だけで良いだろうか。武器になるものは? けれど、まだ使い方もろくに習っていない。それにーー
「捕まえにいくんじゃないんだ。ハンターたちのように」
アーシィはバターロールを二個と家にあった果物ーー梨、ブドウ、リンゴ、バナナをリュックサックに入れて、こっそりと家を出た。
玄関の扉を閉めて鍵をかけると、町中がしーんと静かなのに、肌を刺すように空気がピリピリしてもいた。一歩、二歩、慣れるまでの間は地面を踏む度に心臓が痛むほど胸が強く高鳴った。アーシィは左右に気を配りながら図書館への道を辿っていった。道すがら、弓を持って茶色の防具を身につけた赤毛の男性や、黒いローブを頭からすっぽり被って長い杖をついている細身の人物を見たりした。そういったハンターたちにも見つからないように、アーシィは図書館へ行くのに度々遠回りしなければならなかった。途中で、腕時計を持ってこなかったのは失敗だったと思ったが、さすがに諦めた。どうせ両親が何時に帰ってくるかは分からないのだ。いや、母親は普段と同じく晩ご飯の準備に間に合う時間に戻るかもしれないがーーそうすると、もう家に帰らないと間に合わないだろうか? 明日も家を出て獣を探したい。外を出歩いていることを知られたらマズイ。曲がり角に身を潜めて迷っていると、とんでもないものが視界に飛び込んできた。
「エリシャちゃん!?」




