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一部屋の追憶

作者: 乾燥人生


「煙草やめてよ」

怒る私に

「沁みた?」

「ごめんね」

と笑いながら謝る君

君の腕の中は煙たくて目が沁みた

でも何故か満たされて

幸せだったんだ


狭いワンルーム

私の東京はこの部屋で君だったよ



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「別れよう」


いつもの喫茶店

いつもの時間

いつもの煙草

いつも通りのあなたが言った


「うん。そうだね別れようか。」

「今までありがとう、楽しかったよ。」


言い合いをするでもなく

引き留めるわけでもなく

私達は終わった



きっと明日も好きだったよ



なんて若さに塗れたメッセージを送って

返事も見ずに君を鞄にしまった


私の大学生活は折り返した



卒業までの2年間、私は沢山人を好きになった。

付き合ったり別れたり

都合良く扱われたり扱ったり

快楽と安心の果て

探した愛は鞄の中に入ったまま



あれから君がどんな毎日を過ごしたのか

私は知らない

私を捨てた後悔で

進めなくなってしまっていれば良いのに

そんな感情の雨が

私を濡らして進めない


寂しさを埋めようと

誰かに縋る自分は愚かで虚しかった



君の為に誰かを求める

その度に頭の中で

「無理すんなよ」

なんて悲しい顔で君が言う



「無理させたのは君なのにね」



明け方、君が忘れた東京

虚しさと空っぽの愛が反芻する

熱の下がった狭いワンルーム

ごめんね、煙草の煙はもう沁みないの

君じゃない誰かの横で私は呟く



きっと明日も好きだったよ






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