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第四話 強襲の関羽

中国軍の主力艦、天空城塞神舟の機関部に侵入したイザナギとイザナミが見たのは、黒い闇の中に浸された、何か動物の心臓のような形で、ドクンドクンと波打つように運動する、城塞のエンジンだった。そのエンジンを破壊しようとイザナギが両方のビーム砲をエンジンに向ける。

その時、イザナギの右横から黒いビームが飛んできて、右肩のビーム砲を破壊した。イザナギは飛び退いて振り向く。其処には、紅いラインをまとった黒い機体、強襲の関羽の姿があった。目や粒子の羽根まで真っ赤である。関羽はイザナギとイザナミに向けて、背中の砲口から大量のホーミングミサイルを放ってきた。

イザナギとイザナミは其れをかわしながら接近し、まずイザナミが五十メートル前後まで間合いを詰めて、両腕の刀を振り上げて関羽に突貫、関羽の頭に刀を降り下ろそうとする。そして、イザナミは関羽の頭を縦真っ二つに割った…筈だった…。関羽の姿はイザナミのパイロット、如月ナオミの視界から消えていた。

ナオミは、何が起こったのか理解できていない。

「ぐうぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

後ろで聞こえた(厳密に言えば無線越しに)悲鳴にイザナミは振り向く。

イザナギが…関羽の右腕の大剣で頭を斬られていた。


おそやく、関羽のパイロットは何らかの方法でナオミの脳をハッキングし、時間感覚を麻痺させたのだろう。その間にイザナギの元へ移動したのだ。


勿論コクピットは胸部にあるから沙良は死んでいないが、これで沙良は戦場での視覚を失ったことになる。…いや、視覚はもう一つ残っていた。アイカメラの破損と同時に起動するサーモグラフィーである。

ミサイルが全身の装甲を破損させるのを無視し、イザナギは関羽に向けて突貫する。というのも、ミサイルで被弾した傷くらい、高性能ベルセルクは自然治癒するからだ。失った部位を、残された部位を溶かし、伸ばして補おうとする仕組みである。決して生物という訳ではないが、実際このシステムのモデルは人体の自然治癒能力である。

そして、イザナギは腰の左側に収納していたレーザー刀の鞘を、引き抜く。関羽は、パイロットが混乱しているうちに、イザナギの首を切り落とした右腕を切断されてしまう。

ここから、如月兄妹の大逆襲が始まった。

パイロットが動揺したのを視て、イザナミは関羽に突貫する。関羽はもう片方の腕をイザナミの大剣で切り落とされ、左の太股をイザナギのマシンガンで撃ち抜かれた。

最後の手段として関羽が放った大量のホーミングミサイルは、イザナギに迎撃された。

戦闘の手段を失い、関羽は撤退した。


□□□


その頃指令室では、マオ将軍とさっきと同じ華奢な軍人が話をしていた。

「将軍、関羽が戦闘不能に…」

「逃走経路にステルスを用意しろ、撤退だ」

「しかし自衛隊はほぼ壊滅状態です」

「壊滅したなら当分いつでも滅ぼせる。しかし今殺されては、私は国家首席の座を手に出来ない」

「はっ…」


結果、戦局は好機に関わらず、中国軍は神舟を捨てて逃げ出し、中に居たイザナギとイザナミも、河のように流動する黄兵に紛れて脱出した。神舟は時限爆弾で爆発し、破片はその直下の海面に降り注いだ。既に全滅していた自衛隊の戦艦に、ある意味で被害は無かった。


□□□


その数時間後、ロンドンで。

「日本の自衛隊が、中国軍を撃退した」「そんな、あんな大勢の軍隊をですか!?」

「ああ。海上保安隊は全滅したが、たった二機のベルセルクが天空城塞に浸入し、内部から破壊したそうだ。機関部にまでその二機が侵入し、最後の盾だった関羽も戦闘不能になったので、城塞に爆弾を仕掛けて脱出したそうだよ」

ロイ・ギルフォードとカンナ・アンダーソンが話している。ロイは机に肘をつき、顔の前で指を絡めて、極めて冷静な表情だが、カンナは衝撃のニュースに唖然としていた。

「ここで日本に味方すれば、中国との全面戦争になるだろう。だが、中国に味方すればアメリカが敵になる。だから、次の指令はこうだ。ヨーロッパ全土及びアメリカと連合軍を組み、中国に報復せよ」

「は…」

どんどん拡大する戦争に、カンナは不安を覚えていた。


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