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第二話 大空のイザナギ&大海のイザナミ

アイルランド軍鎮圧を終えたカンナ・アンダーソン兵長は、ロンドン基地に帰還した。ドックに入ったヴァルキューリから、翼と眼光が消える。

ヘルメットを外し、英国人と日本人のハーフの顔があらわになる。背中のハッチを開き、コクピットから飛び降りる。

ドックの奥の部屋から、基地の廊下の一つに出る。基地内での戦闘に備えややこしい造りになっているが、幾つかの手順を踏んで、指令室にたどり着く。鋼鉄の自動ドアが不快音を立てて開き、目の前の椅子、部屋の中心の一際大きな上官専用のデスクとセットになった肘掛け椅子に座る、茶髪で楕円形の顔、茶色の髭を顔中に程よく生やした、推定三十代後半の上官、ロイ・ギルフォード。上級貴族の出身で、実家は本国で銘柄・玩具・最先端研究・軍事兵器等、広域に渡る経済力を持つ大資産家である。


「今回の作戦、ご苦労だった。予想以上に上手く行ったぞ。アイルランド政府は我が国との国交断絶に踏み切った。約束通り、報酬は君の両親に送っておこう」今回の作戦は、本国イギリスのベルセルク(まあヴァルキューリのことなのだが)をアイルランド領内に侵入させ、警備の機体数機を破壊することで戦争を誘発することだった。ベルセルクの導入で軍事力を強大化させたヨーロッパ諸国は、それぞれの旧植民地諸国を再び吸収しようと侵略戦争を始めた。まずアフリカ諸国が制圧され、今はインド、香港自治政府との抗争を続けている。そして、今度はアイルランドである。もう、この国に平和などという言葉は要らないのかも知れないと、カンナは思った。


その頃、日本海上空では、自衛隊と進入してきた中国軍が衝突していた。中国軍が率いてきたのは、直径5000メートルを超える円盤状のホバーシップ、神舟シェンチョウである。その中には二千機程の量産型ベルセルク、《黄兵》が格納され、表面付近には五万基を超えるレーザー砲が収納されている。

対して日本側の戦力は平凡な海上戦艦が二千隻と、まだ実験段階の量産型ベルセルク、《飛鳥》だけで、有利なのはどう考えても中国側だった。実際、既に数百隻の軍艦が撃沈している。これは日本が中国の植民地にされるか否かの戦争なのだから、当の日本人にとっては大事である。

そんな戦局を舞鶴の軍港で見詰める二人の人物が居た。


「あんな古い軍艦でエンバンと戦うなんて、ばっかみたい。ねぇ、早く行きましょ、美味しい餌が無くなっちゃう」

「そういう不気味な言い方を止めろ、ナオミ」

ナオミと呼ばれたのは、如月ナオミ(15)という赤髪の少女。おそらく髪は染めているのだろうが、その小柄な体格に反して、顔は20代後半と言われても疑えない程だ。彼女は単独型ベルセルク《大海のイザナミ》のパイロットである。

そして彼女をナオミと読んだのは彼女の兄、如月沙良(15)である。彼は単独型ベルセルク、《大空タイクウのイザナギ》のパイロットで、背はナオミより高いが、大人びた顔は変わらない。「ねぇ兄さん、早く行きましょ、あのハゲ頭のおじさん達死んじゃうよ?」

「よしわかった。まだ本部からの命令が来てないけど、今行ったって怒られないだろ」

そうして、緑の軍服姿の二人は部屋を出た。


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