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第十二話 END OF THE PEACE

ネルヴァが物語の軸となっていきます。奴の悪名にご期待。

欧州連合の陰の指導者、ネルヴァ・ヴェルギリウス副元帥は、アテネの地下で巨大戦略コンピュータ、《プトレマイオス》を使用し、計画を新たなステージへ進めようとしていた。

彼は北京に於ける地中城塞帝舟の爆破工作によって、中国人民政府を滅ぼした。

アジアの支配者の逝去に、世界は動揺している。


経済基盤が崩壊し、所有者の消えた土地には列強諸国の盲流が雪崩れ込む。


歪み、狂い、少しずつイビツなカタチになっていく世界…………。


彼は神に成っていく。


この世界の形を、手元の粘土のように、すべて思い通りに変えて。


ワルハラの玉座に昇っていく。


彼はキーボードを叩く。


ネルヴァ・ヴェルギリウス。180センチを超える長身、あまりの細さにイギリス人から《スリム》のあだ名を付けられた身体、頭は小さく、短い金髪をオールバックにした《勘違い紳士》。


プトレマイオスという巨大な部屋の中で、世界を地下から統べる者としての、反逆の序曲を奏でる…。

壁に埋め込まれたスピーカーから、パイプオルガンの音色が部屋に充満する。

醜く黒く、歪に歪んだ不気味な音色が………………―――――――――――――――――――――――《北京の爆破工作の黒幕は未だ不明、政府を失った中国本土には四方の列強諸国が軍隊を派遣、勢力が衰退していたロシアも南下を開始し、既に満州を占領する勢いです》


戦闘終了後、崩壊した中国の中東領土の奪還に踏み切ったイスラム諸国連合の陣営、現ウイグル民主共和国(旧新疆ウイグル自治区)の首都ウルムチのレジスタンス(現ウイグル・イスラム党)のアジトで、戦死したカダフィー大佐を除き全員は、イスラム式の夕食(ラム肉とかナンとか羊のミルクとか)を摂りながら、液晶テレビのニュースを見ていた。政府が潰滅し、事実上解体した中華人民共和国の領内には、隙を見たロシア、独立を回復したASEAN、アメリカの援助を受けた日本などが進駐し、分割戦争が起こりつつある。


「数百年掛けてヨーロッパを統一したローマは、たった半世紀足らずの内紛によって滅びた。同じように、今、百年の歳月を掛けて発展した中国もたった一日で滅びた。夏の夜の夢夢花火ってね♪」

「日本人らしい詩的表現だが…………フナ寿司よりも臭いっ!!!!!!」

「っいってぇっ!!!何で蹴るんだよ!?」

「何となく不愉快だったからだ」

今話している二人は、如月沙良とイルマ・ヴァレリウスだ。今もう片方を蹴ったのがイルマ、被害者が沙良である。

「ハハハッ、外見も背丈もそっくりなのに、俺とイルマの性格は正反対だ。俺が笑ってる時、こいつはいつも怒ってる。その逆もある」

ギルバートが割り込む。

「兄さんの場合は泣く時もあるぞ」

イルマが言った。

「お前だって泣いたことあるじゃねぇか!!」

「ばっバカな……兄さんの前で泣いた事なんて軍に入ってからは無いのに……」

「週一回は枕が濡れてんだよっ!!」

「何故気付いたのっ!?」

「兄弟用二段ベッドで寝てる身だからな、そりゃ気付くさ」

「兄さんっ……酷いよぅ…………こんなところでバラすなんてぇ………黙っててくれるって言ったのにぃ………グスぅ……」

「あ〜泣かした〜」

ナオミが茶々を入れる。

「どうせ嘘泣きだろ!?放っときゃ泣き止むさ…」

「びぇ〜〜〜ん!!!!」

だがイルマの嘘泣きは激化していく。涙や鼻水までダラダラと流れる。誰がこれを嘘泣きだと思うだろうか。ギルバートがか弱い美少女を虐めたA級戦犯に仕立て挙げられるのには、五秒の時間も掛からなかった。

「あのぅ……カダフィー大佐が死んでしまったので、話し相手がいないから、そっちの会話に混じってもい………」

「黙ってろっ!!!!!!!!!」

カンナとギルバート以外の全員が言った。ちなみに、カンナは戦場での過労で基地に戻ってから水一滴飲まず眠り続けている。

その後、彼らはギルバートを散々に虐げ、暑苦しい陽光に覆われていた白銀の満月が姿を現す頃に眠った………。


□□□


《アテネ 連合軍議会会議場》


欧州連合連合軍元帥ウァレリア・アントン(53,♂)は、擂り鉢状の巨大な会議場の中心の、窪んだ演説台に立っていた。額から脳天まで禿げ上がった坊主同然の茶髪、170にも満たない小柄な身長、パスタの食べ過ぎか、腹は妊婦のような有り様である。

「我々はアジアの眠れる獅子(多分中国のこと)の死によってアジアに進出する力を獲得した。今ヨーロッパは百年前(ちなみに現在は204X年ということになっている)の分裂し互いに殺し合う醜い姿ではない。今のヨーロッパは欧州連合という巨大な連邦を形成し、その科学技術と団結によってアジアに植民地を拡げる……!!!!!」

何万人もいる議員達から歓声が騰がる。彼らの熱と湿気が会議場を内側から蒸す。

だが、中央の重鎮の席が一つ空いている。そして演説が終わる頃、円形の会議場に四つ等間隔に置かれた出入口の一つから、ネルヴァ・ヴェルギリウスが現れた。ただし、彼はにやけている。とても真面目な会議をするつもりには見えない。

「おいネルヴァ、遅いじゃないか。僕は君を待っていた所為で昼食のパスタを食べ損ねてしまったぞっ!!!!夕食は必ずお前におごって貰うからなっ!!!!!」

アントン元帥は人懐っこい笑顔でネルヴァに迫る。

「非常に言いにくいが、君は多分、もう二度とパスタを食べられないよ…」

そういうとネルヴァズボンの右のポケットに手を伸ばした。そして、一発の銃弾がアントンの脳髄を貫くまでに、時間は一秒と掛からなかった。

アントンは額の穴から鮮血を吹き上げ、何処の民族もしないような下手なダンスを踊って、机に倒れ込んで絶命した。そして、ネルヴァは演説台に上がる。


「やぁ誇り高き同胞諸君、私の名は新元帥ネルヴァ・ヴェルギリウスっ!!!!たった今前元帥アントンを暗殺し、ヨーロッパ全軍部の主導権を掌握した。たった今から我がEUは世界を我が領土にすべく軍事力を行使するっ!!!!!!」

その中継は世界中に流れ、カンナや仲間達もそれを聞いた。そして誰もが、《平和が終わったこと》を知った…。


次回、カンナ軍団とワルハラ騎士団が殺り合うでしょう。

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