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プロローグ「どいつもこいつも弱っちぃ」

「ババア! ガッコーに行ってくるぜ」


「はいよ。行ってらっしゃいね」


 玄関から見送る老婆に、見えるように拳を天に突き上げて返事をする不良少年。

 制服を気怠げに着ていかにもな格好をしながらも、真面目に学校へ向かう優等生……な訳がなかった。

 彼は学校へ向かう。ただし自分が通う学校の事ではないが……



 とある高校の前、彼は自分の記憶と校門を通り過ぎていく生徒を照らし合わせていった。ほとんどの生徒は多かれ少なかれ必ず彼を見て、すぐに目を逸らした。髪型はリーゼント、制服は着崩している。誰がどう見ても不良の少年が、自分の高校の校門のど真ん中で仁王立ちしていれば誰も関わろうとはしないだろう。

 生徒の話を聞いた先生に注意されようやくその不良少年は校門の前から退いた。


 しばらくして予鈴のチャイムが鳴る。

 元々彼は予鈴前の時間には目的の人物は来ないだろうと踏んでいた。自分と同じような不良の生徒はそうそう早い時間に学校には居ないからだ。

 見張りの先生が校門を閉め、校門前に誰も居なくなった頃にまた出待ちを始めた。


 完全に遅刻だという時間になって不良の生徒が数人現れた。

 彼らは校門の前で明らかに待ち構えている一人の少年を見てすぐに自分たちが目的だと気づき、少年に近づいて――――


「オイオイ、オイオイオイオイ? こんな所でガキがノコノコ一人で何してやが――――うぐぇ!」


 少年は確実にその男たちが目的の人物だと気づき即座に殴り飛ばした。


「テメェ! 一人で俺らに敵うわけ――――ごはぁ!」

「ぅぐふ!」「ぐぁ!」「ひぃっ、や、やめてくげぇぇ!」


 少年は一人なのにも関わらず強かった。道具も使わず己の拳のみで大人手前の若い肉体を一撃でダウンさせる。

 一対多数。だが、明らかにパワーバランスは傾いていた。


 次々と仲間が倒れていく中で、後方に立っていた男は殴られる前に悪魔のようなその少年の噂を思い出し額を地面に擦り合わせた。


「ま、まさかあなたがあの『死吐露嫌(デストロイヤー)』の『次期魔王』とは知らず……も、申し訳ありませんでした!」


 死吐露嫌(デストロイヤー)。出会ってしまえば誰でも何人でもどんな状況でも死にたくないと思わず口にさせてしまう、災害のように所構わず喧嘩を売る不良の中の新勢力。道場破りが如く、他校へ周り、一つ一つぶち壊す。悪魔のような所業を繰り返すチーム。


「チッ、根性無しがしゃしゃんなっつの」


 土下座を見せた男に対して舌打ちと罵倒を浴びせる少年。

 その行動には二つの理由があり、その一つはもはや知らぬ者など居ないはずの死吐露嫌(デストロイヤー)の構成員に唾をかけたというのに、いざ反撃されれば即土下座。それはあまりにも情けないという侮蔑。二つ目は彼自身の気持ちの問題である。

 その喧嘩強さに恥じないはずである『次期魔王』という二つ名のことだ。


「中学生の俺に土下座とか、それでも高校生(おとな)かよ」


 そう。彼はまだ中学生であった。中学二年生である。

 中学生にして高校生の軍団に圧勝できるのだ。彼を止められる者は少なくとも周りにはいないだろう。

 思春期真っ只中の彼は()()に憧れ、大人として見られたいのにも関わらずついた二つ名は『次期魔王』。()()なのである。もう俺は魔王だぞと本人は主張するも、次期である。

 本人にとっては『今期魔王』なのである。いや、『永遠魔王』のつもりかもしれないが。


「次はないからな」


 完膚なきまでに叩きのめし、そのまま少年は去ろうとする。

 その時、初めてその少年の背中を見たことに気がついた男は、己の弱さに、情けなさに、悔しさに打ち震えていた。プライドも何もかも砕け散り、このまま帰していいものか、後ろからならと浅はかな考えが巡った頃には身体が動いていた。


「あーあ。()()()()


 何かが折れたような音がした気がするが、その音が身体的なのか精神的なのか、それとも両方なのか、拳を受け止められた本人にはもう判断できなかった。




 つまんねーな。

 やっぱ技術班を襲った奴らじゃ全然強くなかった。わざわざ高校に張るまでもなかった。くそ。

 こっからガッコー行くのだりぃな。あぁでも、ババアが心配すっからな。めんどくせぇけど行くか。

 つーか、まだ次期魔王って言ってる奴いるのかよ! 普通に魔王だっつの! 普通ってか絶対強者の魔王! 俺より上はいねぇ!

 ……一人以外。だが、そいつと戦ったのは五年も前だ。

 今は分かんねぇ。同じくらい強くなったか、あいつも強くなったのか。あいつの居場所さえ分かれば行くんだけどな。


 そうだ、ガッコー行く前に技術班ん()行くか。

 おっと、ババアがこの辺に買い物に来てやがるからこの道は避け――――


 真っ直ぐな道路をふらふらと考え事しながら歩く。時には拳を強く握ったり、そうしたと思ったら物思いに耽ったり、傍から見るとかなり忙しない。

 そのせいだったのだろうか。彼の祖母に車が迫っていたのに気がつくのに遅れたのは。



 ――――――鈍い音が住宅街に鳴り響いた。

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