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恋人は戦場の聖母 〜王子の全力溺愛物語〜  作者: 嘉多山 瑞菜
第9章 同じ空の下
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多国籍軍の空爆は、驚きと賞賛、そして非難をもって世界中に生中継された。


多国籍軍総司令官 グレン・マッケシーは、宣戦布告は行わない、国連憲章に基づいた攻撃による開戦であると発表した。


最初の攻撃誘導が成功したことでグレート・ドルトン軍も活気づいていた。


テッドの部隊の諜報は完璧で、ガンバレン国の軍事力の割り振りを把握できたおかげで、効果的な空爆計画を多国籍軍と立てることが出来たからだ。


ガンバレン国軍はウクィーナ共和国の国境方面に軍を集中させていたが、わざとそこを外して軍備が手薄なサンダバルト国側の軍事施設と物資保管などを行う重要拠点を急襲した。


ガンバレン国は出鼻をくじかれ、急遽、自国領内の防衛を固めなければいけなくなっただろう。ウクィーナ共和国の国境線から、いくつかの部隊が撤退しているとの報告も上がっている。こうなると、ウクィーナ国の国境付近を奪還できるのはすぐだ。


テッドはもう一つ、重要な情報を持ち帰ってきた。


今回の戦争の首謀者、ガンバレン国の国防相ナトリカ・アダム・サイレンは確かに死亡していると。

齢75歳になるこの国防相は、ウクィーナ共和国へ侵攻した直後に、心臓発作を起こして急逝したらしい。

突然の事態に慌てたガンバレン国軍のナンバー2であるサッシブ大佐が、後釜にその長男を据えたらしいが、軍人としての優秀さは父親に比べてかなり劣るらしく、求心力を失って、力が弱くなりつつあるようだ。


自国内で抵抗勢力の王室と民主主義派のパチルザンも活発に動き始めているとの報告もあった。


この情報を聞いて、まだ空爆作戦は残っているが、アレックスは長引かせず短期で決することが出来るのではと考える。


なるべくなら被害は最小に、流す血は少なくありたい。

タブレットをテーブルに置くと、アレックスは馴染みのある矛盾する葛藤を抱えながら、次の空爆ポイントを確認し始めたのだった。



※※※※※



真理は多国籍軍のメディア利用に憤りながらも、TVクルーに同行することに決めた。

一番の理由は、彼らが報道する内容や場所をTVでは伝わらない、伝えない部分を自分で見て撮ろうと思ったからだ。


真理は父親から「戦争報道とはそこにある事実を伝えること」だと口を酸っぱくするほど教えられてきた。


報道は時として取材する人間の主観で大きく内容が変わる。

戦争を支持している立場なのか、反対の立場なのかでその国で流れるニュースは全く違ったものとなってしまうのだ。


そもそもがそんな選択が意味がない。

戦争は無意味だ、起こしてはいけないという事を伝え続けなければいけない。


戦争が起こるとそこに生きる人の過酷さは伝わってこない。犠牲になるのは普通に生きる人たちなのに、だ。


だから、真理は戦場ジャーナリストの責務は、現場に立ち、虐げられる弱者の声を、そのまま世界に伝える事だと信じている。

偏った報道にさせないためにも、TVクルーと同じ場所に立ち、自分の目で真実を切り取ろうと考えたのだ。


ランディに話したところ、彼もテレビクルーに帯同すると言った。

彼の場合は空爆が終われば地上戦に移行するだろうから、効率よく制圧した場所に連れて行ってもらい、取材をしたいとの、合理的な理由だが。


もはや、この戦争は多国籍軍とグレート・ドルトン王国軍の圧倒的な軍事力で短期決戦で終わると予想されている。


真理はどこまで真実に切り込めるか、そこに生きる人の叫びを撮ろう、と決意していた。


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