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恋人は戦場の聖母 〜王子の全力溺愛物語〜  作者: 嘉多山 瑞菜
第7章 揺るぎない想いと抱える痛み
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いつ出るか、出るかと思いながら、毎日、高級紙や大衆紙に眼を通すが、特に記事は出なかった。


心配したアレックスからは護衛を増やす、と連絡があったが真理はそれを断った。


ここが王子の私邸であることは、このあたりの住民やメディアには知られているし、そこに出入りしている以上、自分の存在が注目されるのは時間の問題だと考えていたからだ。


王子はかなり渋ったが、真理の覚悟めいた気持ちも嬉しかったのだろう、それ以上はなにも言わず真理の好きにさせてくれている。


アレックスの帰国まで5日と迫った日、唐突にそれは始まった。



朝、目覚めると、私邸の前の道路にたくさんの報道陣がいたからだ。


目抜き通りを塞ぐほどの勢いで、鈴なりになっていて真理は、あぁと嘆息した。


とうとう出たのだろう。

護衛も慣れたもので、警察を呼んでメディアの交通整理をさせているが、数は時間が経つにつれ増える一方だった。


護衛がタブロイド紙を持ってきた。

ありがとう、と礼を言って受け取ると、グレート・ドルトン王国一番のタブロイド紙「ザ・ワールド」だった。


真理はふぅーと溜息を吐くとタブロイド紙を眺める。

一面に堂々と登場していて、思わず眼が丸くなった。

先日撮られた、私邸から出て買い物をする自分の横顔が、数枚、割と鮮明に写っている。


「ザ・ワールド」は一番売れているタブロイド紙だ。

理由は、有名人のゴシップなどを多く報道しているからで、そういえばアレクも良く掲載されていた、と真理は思い出す。


物議をかもす取材方法や虚偽の記事でよく問題をおこすが、それでも長年、中流階級を中心に愛されている。

だから、反響は大きい。


もちろんタイトルは

「第二王子!新恋人か?!」だが、読むと内容は結構酷い。


王子に囲われてる女、ソーンディック侯爵家を 差し置いて、図々しく私邸に入り込んでいる尻軽女!

ドルトンでの学歴が確認できないことから、教育を満足に受けていない、今までの王子の相手のなかでは最低ランクの学のない頭の悪い女!みたいなことが書かれている。


ハロルドについては何も書かれていないので、真理はホッとした。


囲われてる、と言われるのは複雑だが、大した取材は出来てないのだろう。

自分のプライバシーが侵害されているとは、あまり言えないかもしれない。

いい加減な内容だからこそ、他のメディアがこぞって取材に来たというところか・・・。


いずれにしろ真理にとっては、ハロルドさえ表に出なければ、自分への中傷は、どうでも良いのだ。


過去の第二王子のお相手達と比べられれば、自分ははるかに劣る。

見た目も普通、確かにこの国での学歴もない、身分も平民、そしてハーフ、本来なら王族になんて会えない階層の人間だ。


だから余計に関心を唆るのだろう。


不必要に目立つ必要はない。

真理は少し考えて呟いた。


「これは、当分、外に出ない方がいいわね・・・」


この私邸の出入り口は目抜き通りに面した正面 の麗しいエントランスか、業者などが出入りする裏口だが、どちらにも報道陣はいる。


アレックスが帰国するまで大人しくしよう、真理はそう決めると、タブロイド紙をテーブルに放った。


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