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恋人は戦場の聖母 〜王子の全力溺愛物語〜  作者: 嘉多山 瑞菜
第7章 揺るぎない想いと抱える痛み
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後ろ髪を引かれる思いとは、こう言うことをいうのだろう、そう思いつつ、アレックスはなんとかその想いを断ちながら表に出た。


車の前ではクロードとテッドが待っていた。

クロードはアレックスが近づくと、最高にヘラヘラした笑顔で、 ゲシっと尻に強烈な蹴りを入れた。


「いってーな」


王子の恨み言をスルーすると


「一発で許されてることに感謝するっす」


と悪友の側近は言い返した。


「俺は出来る準備と段取りはしてっただろう」


車に押し込められながら言い返すと、助手席に座ったテッドが口を挟んだ。


「確かに今までにないほど見事に段取りされてましたよ、クリス殿下」


「そうっすよ、こんだけ出来るなら、普段からちゃんとやって欲しいっす」


クロードはアレックスの隣に座ると、車が走り出した。


ああ、真理との休みも終わりか・・・濃密な時間の終わりにアレックスは嘆息する。

当初の目的は達成できたのだから、今は満足するしかない。


クロードもテッドもタブレットを開いた。


「ミス・ジョーンズのためとは言えど、頭使ってる殿下の仕事っぷりには驚いたっすよ」


これからの2日間は大忙しっすよ、とクロードは嫌味ったらしく言うと、テッドが続けた。


「大使館に一旦9時に入ってから、分刻みのスケジュールになっております」

「分かってるさ、俺がもともと組んだスケジュールだ」


クロードは隣で落ち着いた顔をしているアレックスをしばらく見ていたが、ズバリと聞いた。


「プロポーズはしたっすか?」

「!?なっ!!」


ギョッとしたアレックスの顔を見て「あー、そこまではいってないっすか・・・まだまだヘタレっすねー」と呟くと悪い顔してヘヘッと笑った。


言い返したい気持ちはあれど、そこはぐっと我慢してアレックスは言った。


「彼女は1週間後にドルトンに戻る。私邸に入るよう言ってあるから、手配をして欲しい、テッド」


助手席のテッドは、前を向いたままかしこまりました、とだけ言った。


アレックスは、しばらくしてから言葉を継いだ。


自分でかなり頑張って準備して、この5日間の休暇をもぎ取ったのは確かだが、それでも勝手に段取り、いきなり何も言わずに国を出た責任は大きい。

薄々感づいて見守っていたにしても、さすがに慌てたろうし、心配もかけただろう。


「2人には迷惑かけた、申し訳ない。感謝してる・・・ありがとう」


王子の感謝の言葉に、側近2人は黙りこくると、同じタイミングではぁーーーと盛大な溜息を吐く。テッドは嫌そうな声で振り向きもせずに言った。


「感謝ができる殿下は薄気味悪いですね」


アレックスが不貞腐れたのは言うまでもない。




※ ※ ※ ※ ※





真理はニュースでアレックスの華やかな笑顔を見ていた。


さすが王子様と言うか、フル回転で外交をしている。


ウクィーナ国によるガンバレン属国解放戦線にあたって、日本の自衛隊は物資輸送の後方支援を行なっている。


それに対しての国境警備に入る前の、感謝の訪日という目的になっているらしい。


脱走?家出?出奔?した王子の来日理由としては立派過ぎる。

どんな手を使ったのだろうと、真理は思わず笑ってしまった。


この家を出た昼には首相と防衛大臣に官邸で出迎えられ懇談を行い、その足で後方支援を担った自衛隊基地を表敬訪問し、支援の感謝を述べてた。


夜はそのまま首相主催で、非公式の歓迎食事会となったようだ。


ニュースやワイドショーでアレックスを観るたびに不思議な気持ちになる。

画面で見る彼は確かに自分の恋人で、そして王子様なのだ。

きっちり外交をこなす彼もまた素敵で、ワイドショーの女性コメンテーターがハンサムで素敵ですね、と一様に彼の経歴を振り返りながら褒めそやす。

真理はそれを擽ったい思いで聞いた。


自分も、守られるばかりではなく、彼の側にいられる相応しい存在になりたい、、、そう心境が変化していた。


アレックスは二日目は日本の皇室に招かれて天皇陛下ご夫妻と懇談を持ち、その後、グレート・ドルトン王国大使館職員に労いのランチ会を開催すると、夕刻にウクィーナ国隣国のノントレイ共和国へと出発した。

ウクィーナ国の国境警備に当たるための準備だ。


真理はそのニュースを見て、自分もグレート・ドルトン王国に戻る準備を始めた。


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