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恋人は戦場の聖母 〜王子の全力溺愛物語〜  作者: 嘉多山 瑞菜
第5章 それぞれの想い
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打ち上げパーティーは、ヘルストン市内で人気のクラブハウスを借り切っている。


ヘンドリックの趣味の良さが伺えて、会場内では映画祭のドキュメンタリーを流していて、上映された作品や監督の紹介、インタビューなど映画好きにはたまらない。


会場内で一番奥まったソファー席に通されて2人で座る。

真理は、ドキュメンタリーが楽しみで、それに集中したいが、なかなかそうもいかない。


王子に会いに来る人間が多いのだ。


王室の社交の基本は謁見だと何かで読んだ気がするが、なるほどと真理は思った。


映画祭の時もそうだったが、アレックスが動く必要はない。

入れ替わり、立ち替わり、許可を得た人間がこの国の第二王子に挨拶に来る。


これを謁見と呼ばずして、なんと言おう。


真理はジャーナリストの集まりには出たことがあるが、あれは人脈を作るために、みんなあちこちに挨拶に行き、名刺を交わす、参加者が良く動くパーティだったが、アレックスの場合は全く違う。


座ってれば良いのだ。


今日のパーティは気心の知れた知人も多いのだろう、にこやかに出迎え、立ち上がって握手をすることもある。


ただ、世間話しを軽くする程度で、相手が何か・・・例えば、事業拡大の話だったり、投資話だったり、領地経営の話だったり、王国軍の話だったりすると、ぴしゃりとそれはやめさせる。


真理を抱き寄せ、「大切な人と一緒だから無粋な話しはやめてもらえるか」と言って、真理のこめかみにキスをする。


それを繰り返されて、真理の精神力はかなり試された気がした。


「王子様は大変ね」


喉越しの良い炭酸水を飲みながら、真理は言った。

アレックスはクラッカーにレバーパテを塗ると、彼女の口元に差し出した。

意味が分かるから恥ずかしいが、口にするまで許してもらえないので、おずおず一口齧る。


アレックスは満足そうな顔をすると、残りを嬉しそうに自分の口に放り込んだ。


「大変?そうか?」

「たくさんの方とお話ししなければいけないし、色々な人の思惑にお付き合いしなければならないから」


真理がそう言うと、アレックスはハハッと笑った。


「99%は流して聞いてる。キリがないしな、王族は平等が原則だ。まあ、俺は個人的な投資や事業も手がけてるから、その手の話をしに来る奴は多い。下心や野心、蹴落そう、陥れてやろうとか考える奴は多いから、俺はそんなのには耳を貸さないことにしてる」


そこまで言って、アレックスはふっと真面目な顔で真理を見た。


「怖いか?真理」


王子の瞳はひどく静かな琥珀色だ。

問われてる意味を考えながら、真理は頭を左右に振った。


「いいえ」

「どうしてだ?俺がいるのは人間の欲望、腹黒さ、汚いものが渦巻く世界だ」


真理はふっと笑った。


「だってそれは殿下が王族だからということではないから。人間関係には必ずつきものだし。父が昔言ってたわ。人間の欲と業の深さが戦禍を招く、と。殿下のお人柄がそうではないと分かるから・・・」


私は怖くありません、そう微笑む真理にアレックスは瞠目した。


「君は・・・」


そう呟いて瞳を伏せるのは一瞬で、すぐに身を乗り出すと、真理を抱き寄せ、赤く染まる首筋キスを落とした。

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