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恋人は戦場の聖母 〜王子の全力溺愛物語〜  作者: 嘉多山 瑞菜
第5章 それぞれの想い
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ホストのヘンドリックは大らかな笑顔でアレックスと真理を出迎えると、手を差し出した。


「ようこそ!ミス・ジョーンズ!!よく来てくれたね!」


アレックスに続いて握手をすると真理も微笑みながら礼を述べる。


「映画祭のご成功おめでとうございます。お招きに感謝申し上げます」


ヘンドリックはニコニコしながら


「嫌だなー、今日は映画祭スタッフがメインの打ち上げだから、堅苦しい挨拶は抜きで」


言いながら、真理の手を握りしめる。


「俺はアレックスとは高校からの悪友だから、俺には気を遣わないで欲しいな」


ギュッとヘンドリックの手に力が込められた瞬間


「いい加減、離せ、おら」


不機嫌かつ乱暴な言い方で、ぐいっと真理の手はヘンドリックから引き離された。

そのまましっかり握りしめられる。


「おいおい、妬くのは早いぞ」


真理がアレックスを見上げると、王子は不貞腐れた顔をしている。


ヘンドリックは笑いながら、彼を諌めるが揶揄いたい欲求は止まらないようで


「ミス・ジョーンズ、俺のことはヘンディーって呼んでくれ。俺もあなたの事、真理って・・・」


「ふざけんなっ!!」


速攻、横入りが入って真理は眼を丸くした。

アレックスの腰に回した手に力が入る。


「それは俺だけのものだ。お前は今の通りで良い」


おおっ、怖っ!とヘンドリックは両手を上げてニヤニヤする。


「そのテンプレ通りの反応はやめろよ、面白すぎる」


なおも揶揄う気満々の悪友を、アレックスは険呑さを露わにして「お前は今まで通り呼べ」と言い切ると、ヘンドリックを無視して、真理を引っ張り、会場に向かって歩き出す。


そんな2人の背中にヘンドリックの声が追ってくる。


「おいっ!ワインの差し入れ、感謝する!!」


どうやら、労いにワインを差し入れたのだろう。

ヘンドリックの感謝に振り向きもせず、空いた手を軽くひらひら振って答えだけにしたちょっと大人気ない王子を、真理はクスクス笑って見上げた。


真理の視線に気づいて、アレックスが歩みを止める。


「なんだよ」


まだブス垂れ顔だ。


「殿下はハミルトン様と仲良しなんだなって思って」


「はぁ?あれが仲良しか、どう見たってあれは俺への嫌がらせだろ」


「そうな風には。ふふっ、すごい仲の良いやり取りに見えました」


真理がそう言うと、やっとアレックスは頬を緩めた。機嫌が戻ったらしい。


「まぁ、、、そうかもな。あいつには色々世話になってるから」


目元に温かさを滲ませると、アレックスはまた拗ねたような顔をした。


「人前で気にするのは仕方がないが、でも二人だけの時は、アレクって呼べよ」


俺は真理って呼ぶんだから・・・そこまで言われて、あっと思うまもなく抱き寄せられる。


「でっ!殿下!!」


返事をする間も与えられず、廊下のど真ん中で真理は王子に口付けられた。


口紅を乱さない程度の軽いキスだが、人前でのそれに真理は顔を真っ赤にした。


王子のキスを、パーティ会場に向かう人波が礼儀正しく見なかった事にしてくれているのを、真理は知る由もない。


アレックスは真理の唇を確認するように、指先で軽くなぞるとご機嫌な顔で「こっちだ」と言って、王子用に設えられた席へと連れていかれた。

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