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恋人は戦場の聖母 〜王子の全力溺愛物語〜  作者: 嘉多山 瑞菜
第4章 溺れる愛しさ
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「私・・・経験がなくて・・・殿下を楽しませられないと思います」


突然の真理の告白にアレックスは眼を剥いた。


彼女の拒絶に、がっつき過ぎ、いそぎ過ぎたかと後悔するが、この状態を止めるのは・・・。


そんな恐怖に駆られて身体を起こせば、なんとも真理の可愛らしい告白。


そういえば、今、この瞬間まで、彼女が処女かどうかは気にしていなかった。

処女であろうがなかろうが、男慣れしてない事はわかっていたから、とてもとても大切に優しくトロトロになるまで焦らしながら抱くつもりではいたからだ。


だが、真理の気にしていることの論点が、どうも違うと感じてアレックスは渋々起き上がった。


真理の身体も抱き起こして、彼女の両手を握り締める。

2人して正座だ。


唇で辿っていた首筋が扇情的に朱に染まっているのを見て、喉が鳴るのを抑える。


「真理・・・どういうこと?」


真理はアレックスの顔を潤んだ瞳のまま見上げて続ける。


「わっ、私・・・男性とこんな事したことがなくて・・・何度かレイプされかけた事はあるんですけど・・・」


「レイプっ?!何度か???!!!」


あまりの単語にアレックスは仰天する。

報道カメラマンとして戦地を歩く彼女が、どれほどの危険に晒されているのか突きつけられて、訳の分からない怒りが噴出する。


顔色の変わったアレックスに真理は、マズイと思ったのか宥めるように言葉を継いだ。

そもそも彼女の言いたいところはそこではないのだろう。


「・・・レイプといっても未遂なので・・・だから・・・最後まではいってないから・・・経験が無くて・・・アレックス殿下が今までお付き合いされた素敵な方のように・・・私じゃ、殿下を楽しませられないと思って・・・」


そこまで言い切った真理の顔は真っ赤で、申し訳ないような表情も滲んでいて。


アレックスははぁーーーと上を向いて大きく溜息を吐いた。

真理が自分に向けられた溜息かと思って、不安でぴくりと肩を揺らした。


そんな事はない、と慌てて華奢な肩を宥めるように抱き寄せて摩る。


アレックスは過去の自分の所業とそれを隠しもしなかったことを呪った。


初めて大切だと思う女性にこんな風な気を使わせるなんて・・・。

クロードが知れば「あんた、最低ー、最悪っす」と言われても仕方がないだろう。


「そんな心配はしなくていい。俺にとって真理は誰とも比べられない大切な女性だ・・・君の初めてが俺だなんて神に感謝したい!!

俺の過去は消せないけど・・・この部屋に、ベッドに迎えたのは誓って真理だけだ、信じて欲しい」


それに、とアレックスは続けた。


「真理を抱きしめて、触れているだけで俺は幸せを感じる」


真理がますます頬を赤らめて、アレックスの胸元に顔を埋めて、自信無げに小さく呟いた。


「・・・マグロでも平気?」


真理らしからぬ言葉にくつくつとアレックスは楽しそうに笑った。


「そんな言葉は知ってるんだ」


からかうように言って、俯いたままの真理の頬を指先で擽る。


真理は擽ったそうに僅かに身をよじると、顔を上げてアレックスを見つめた。


熱っぽさを纏ったままの表情は艶っぽい。


真理はバツが悪そうに

「耳年増だとは思うの・・・」


アレックスはそのまま彼女を押し倒しベッドに組み敷いた。


「それだけで十分、あとは・・・俺に任せて」


眼の端にキスを落とすと真理の瞳がトロリとして、やっと王子の長いお預けは終わりを迎えた。





*****






パチリと目が覚めた瞬間、真理は一瞬どこにいるのかわからなかった。


目の前に裸の厚い胸板があって、身体は逞しい腕に抱き込まれている。

その様に、一気に昨夜の情事が蘇って赤面してしまった。


身体だってひどい気怠さに鈍痛。


してしまった、、、王子様と。


雰囲気に飲まれて、かなり自分も積極的にアレックスを求めてしまった。


処女なのに、あんなにはしたなくて良かったのか、、、どっかの国の娼婦みたいな振る舞いじゃなかったかと、アワアワする。


真理は育った環境と本人のおおらかな性格からか順応性や適応力が高い。

それが、こんな場面で発揮されるなんて・・・恥ずかしい。


あれこれ考えてると、頭上からくくくっと笑い声がする。


「おはよう、真理。なんでそんな百面相なんだ」


見上げると優しい笑みの彼がいて、自分を見る眼は肌を重ねた親密さがある。


「おはようございます、でん・・・」

「アレク」

「おはようございます、アレク」


満足したようにアレックスが真理の頭にキスを落とす。


「身体は痛くない?」

「大丈夫・・・多分」


抱きしめていた手が裸の背中や腰、太腿をサワサワと撫で始める。


ギョッとして真理は不埒な手を止めるように抑えた。


期待して目が潤むのはこの際気づかないフリをする。


「ダメ。もう今は絶対ダメ」


真理の拒絶なんてアレックスにしてみれば、可愛い以外、なにものでもないが、それでも止めることにしたようだ。


安心したのもつかの間、身体を起こしたアレックスにのしかかられ、朝には似合わない濃厚な口付けをかまされる。


散々、唇と口内を貪られ、やっと抱き起こされると、アレックスはやれやれと諦めたように言った。


「仕方がないな、昨夜の情熱的な君に免じて今は我慢するよ」


「???!!!」


昨夜の自分の痴態を仄めかされて、ボンっと頭に血がのぼる。

そんな真理をからかうように見ながら、アレックスは真理にバスローブを羽織らせると耳元で楽しそうに囁いた。


「最高に君は素敵だった」


とどめの一言に真理はますます羞恥にかられると、アレックスはクスクス楽しそうに笑う。


「風呂に入るか?腰が立たないなら俺が一緒に入るよ」

「大丈夫だから!!」


真理は、脱兎のごとくベッドを出ると、若干怪しい足取りで一人でゲスト用のバスルーム飛び込んだ。


寝室では楽しそうなアレックスの笑い声がまだ響いていた。


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