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恋人は戦場の聖母 〜王子の全力溺愛物語〜  作者: 嘉多山 瑞菜
第3章 恋に落ちて
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最初に触れたのは瞼。

彼の吐息が睫毛を掠めると、すぐに鼻先に熱が降りてくる。


チュッと鼻の頭を軽く吸われて、肩が震えてしまうのを宥めるように彼の手に摩られる。


シートに座ったまま逃げることを許さないように抱き込められて、目を閉じているだけで精一杯の真理の唇にやっと熱を帯びた柔らかいものが押し当てられた。


それだけですぐに離れた唇はまた戻ってきて、今度はやんわりと真理の下唇を食むと、閉じたままのそこを軽く舌で擽ぐる。


「ん・・・・・・」


彼の舌の官能的な動きに真理の喉が甘く啼くと、アレックスは唇を僅かに離し囁いた。

王子からもふわりとエールの芳醇な香りがする。


「口を開けて舌出して」


真理だって大人のキスがどんなものかは知っているが、自分のこととなるとうまく出来ない。


ギュッと閉じていた眼をおずおずと開けると、目の前に、熱のこもった瞳で自分を甘く見つめる王子様。


トクントクンと鼓動が速くなり、身体が熱くなる。

彼の顔が近づいてきて、また眼を閉じると重ねられた唇が、自分の口を開けさせるように角度を変えてやわやわと蠢いては不埒なことを唆す。


唇を甘く吸われただけで、じんわりと下腹のあたりが痺れるのを感じながら、真理は唇を開けて王子に舌を差し出した。


待ち構えていたアレックスの舌に自分の舌が捉えられると、真理の頭の中は心地よさにぼんやりしてしまう。


王子の舌がするりと入り込んできて、舌の裏側や頬をなぞると飲みきれないどちらのものかわからない唾液がこぼれ落ちる。


「んんっ・・・・・・んふっ」


息が苦しくなり、耐えきれず真理がアレックスの胸をおし返して、唇を離そうとするが、それを許さず、アレックスは体重をかけて真理を押し倒した。


真理はもうどうして良いかわからず、なすがままで。


逞しい身体に抱き込まれて、クチュクチュと舌を絡め取られては、粘膜を擦り合わせ、歯を甘く立てられたり吸い上げられる。


零れ落ちて顎を伝う唾液も気にならないくらいキスに溺れてしまう。


ぐんと体内の温度が上がって、閉じた眼の奥が潤んで。


それなのにゆっくりと身体が溶けていくような心地に包まれて嫌じゃないのだ。


真理がもっとと強請るようにアレックスの背に手を回すと、キスを解いたアレックスが苦しそうな顔で真理の首元に口付ける。


襟元を乱しながら、首筋や耳朶に唇を這わせ、何度も甘く噛むような刺激を与えられて、真理は羞恥に耐えきれずに顔を両手で覆った。


いよいよアレックスの手が真理のスカートの上から太腿に触れようとした時・・・


勢いのよいシンバルのジャンっ!!という音が鳴り響き、アレックスはハッと顔を上げた。


そして真理を組み敷いてることに慌てて「わわわ、ごめん、ごめん」と情けない顔で起き上がる。

抱き起こし、慌てて乱した襟を整えると、はぁーっと大きな息をついて真理をもう一度抱きしめた。


「すまない、止まらなかった、もう少し我慢するつもりだった・・・んだ?」


なぜか語尾が疑問形で、しかも思春期の子供のような言い方なのに、でもアレックスの優しさが感じられて真理ははクスリと微笑んだ。


もう、自分の気持ちを誤魔化すことはできなかった。


遊びでもいい、でも王子はいつだって自分に誠実な姿勢で向き合ってくれるから・・、信じてしまう。


真理もアレックスをおずおずと抱きしめ返すと、恥ずかしいけど想いを口にした。


「大丈夫です・・・私も・・・したかったので・・・」


もう、ごまかせなくなっていた。

自分は確かにこのやんごとなきお方に触れてもらいたい、そう思うことに。


ダメだと思うのに、自分の今までを全て失う危険をはらんでいるのに、どんなに厳しく律そうとしても、日に日に彼へ想いが募っていくのを真理は止められなくなっていた。



その言葉にアレックスはパッと顔を上げると、驚いたように真理を見つめた。


だが、思いのままに貪ったせいで、ぷっくりと腫れて赤くなった真理の唇をそっと親指でなぞると、もう一度唇を寄せてくる。


真理はその熱を受け止めると、あとは与えられる心地よさに夢中になった。


今だけは、このひとときだけは・・・

そのひそやかな願いを胸にアレックスの背をもう一度抱きしめる。


庭園ではガーシュウィンの甘いメロディーが流れ始め、夕闇が訪れる中、2人だけの天幕は熱に浮かされたような吐息と水音だけが響いていた。

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