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恋人は戦場の聖母 〜王子の全力溺愛物語〜  作者: 嘉多山 瑞菜
第3章 恋に落ちて
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真理はテーブルに並んだものに眼をやると、ホッと安堵の息を吐いた。


出来上がりが間に合うか心配だったのだが、元々料理好きなおかげで、手こずることなく準備ができた。


幼い頃、母がキャンプでよく使ったピクニックバンパーを出してテーブルに置く。

保冷剤も忘れない。


アレックスの地道な努力

「王子に慣れようキャンペーン」は

着実に実を結びはじめている。


初デート以来、彼は時間を作っては真理を食事やお茶に誘い出してくれて、だいぶ王子と過ごすことに落ち着けるようになっていたのだ。


好きなことや物や趣味、色んな話しをたくさんしている。

ちょっとばかりは軽口の応酬ができるようになってきたのは、真理にはかなりの進歩だ。


当然ながら公人の彼は忙しい。

アレックスの公務のニュースはテレビでも新聞でも雑誌でもネットでも、毎日何かしら目につくと言っても過言ではない。


王室府は人目、特にゴシップ紙やパパラッチにすっぱ抜かれないよう恐ろしいほど気をつけていて、今までのデートは、いつも貸し切りの外とは隔絶された空間だった。


だから、先日のデートで王子から

「ヘルストン・コート・パレス・フェスティバル」に行こう、誘われた時は正直びっくりしてしまった。


ヘルストン・コート・フェスティバルはロイヤル・ドルトンの首都、ヘルストン市の中心に位置する王城、ヘルストンコートパレスの中庭で毎年開かれる音楽祭だ。


この音楽祭の素敵なところは、パレスに到着すると誰もが、持参したピクニックセットをコンサート会場であるパレス内の中庭に持ってきて、ピクニックシートを広げて気に入った場所を確保することができるところだ。


持参した食事を楽しみながら、大切な人と一緒にのんびりとシートに寝そべりながら極上の演奏に聴き入る。


そして、夕暮れになるころ、プログラムのインターバルには、ライトアップされた宮殿や庭、噴水を散策しながら、優雅にピクニックを楽しむことができる、ドルトン国民の誰もが愛してやまないフェスティバルだった。


最初、このフェスティバルに誘われた時、真理はもちろんかなり躊躇った。


それまでの誰もいない密会のようなデートから、1万人近く集まる衆人環視の中で王子と過ごすことに不安だったのだ。


誰かに見られてゴシップネタになるのは当然ながら絶対無理だ、自分というよりは王子にとって。


アレックスは、そんな真理の不安を元々自分の居住区!だし、貴賓専用の天幕を用意するから心配ないと、押し切っていた。


そして、彼は・・・キャロルに言わせれば女たらしのごとく、ドン引きするような、甘い笑顔ではにかみながら真理にリクエストしたのだ。


「真理とピクニックランチがしたい」と。


前に料理を作るのが好きだとうっかり喋ったことを覚えていたらしい。


自分の料理の腕前なんて、料理好きとはいってもたかがしれている。

しかも一番の得意はキャンプどころか野営料理だ。


いつも一流シェフの料理を食べ慣れている肥えた舌に合う料理は作れない、と必死で抵抗したのだが、断れば断るほど悲しげな顔をするアレックスにとうとう絆され?丸め込まれ?て、自分がランチを準備することを了承していた。


気取った料理なんて作れないから、自分らしく。

ただ王子の好きなものは一応聞いて。


でも、彼のために作ることは嬉しくて・・・。


自分の気持ちの矛盾に蓋をして、真理は完成した料理の数々を、期待に胸を膨らませながらピクニックパンパーに詰めていった。


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