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恋人は戦場の聖母 〜王子の全力溺愛物語〜  作者: 嘉多山 瑞菜
第3章 恋に落ちて
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「それで相談したいことって何なの?」


真理の親友、キャロル・ゼペットは椅子に座るなりワクワクしたような笑顔で切り出した。


真理が報道カメラマンであることを知っている数少ない1人だ。


7年前にとある自治区の暴動を取材していた時に、医療ボランティアとして難民キャンプにいたキャロルと出会った。


4つ年上の医師である彼女は、少々世間に疎い真理にとっては社会のお手本のような存在でもあり、なんでも心の中を打ち明けられる姉のような人だ。


「アメリア、あなたが相談なんてとーっても珍しいから楽しみにして来たのよ、さぁ、話して」


キャロルはニッコリ笑いかけながら真理が話し出すのを待った。


「あの・・・実は・・・困ってて」


真理は顔を赤らめると、決まり悪い顔をしながら、この数週間の困りごとを話し始めた。


数分後、真理の話しを聞き終えたキャロルはそれはもう、はたから見ると気味悪いぐらいキラキラした笑顔で、興奮していた。


「じゃあ、アメリアはその貴族の御令息に遊ばれてると思ってるの?」


やだわぁ、とウフフとまた楽しそうに笑う。


「だって、そうとしか思えないわ、一目惚れなんてありえないだろうし、2回あっただけで、そんな風になるなんて信じられない」


まさか第二王子とはいえないので、そこは「貴族の女性にモテる御令息」とごまかしている。


「その方は女性の扱いにとても慣れているし、貴族だし、私とは天と地との開きもある方だから・・・私のことは珍しいだけなのかも・・・えっと・・・珍獣?」


キャロルはなるほど、と頷いた。

彼女は真理の経歴を知っている。思春期をほぼ父親と一緒に戦地を渡り歩いていたことを。


この年頃に夢中になるティーンのような経験が欠落してるのが真理なのだと。


だから、いきなり目の前にステキな殿方が現れて口説かれていることに戸惑うのも無理はない。


「でも、アメリアも悪い気持ちではないんでしょ」


その問いに真理は顔を赤らめると、それはまぁとごにょごにょと呟いた。


「そりゃあね、貴族でイケメンでお金持ちで、女にモテモテな遊び人にアメリアが警戒する気持ちは分かるけど」


第二王子もヒドイ言われようだ。


「結婚詐欺にありがちな出来過ぎな話よね。でもね、なんか誠実さは感じるわよ」


結婚詐欺とはまたエライ言い方だが、真理はキャロルの誠実と言う単語に「えっ、そうなの?」と驚いた。


キャロルは励ますように身を乗り出すと、手をギュッと握りしめる。


「だってね、貴女の好きなものを用意して一生懸命楽しませようとしてくれてるんでしょ。遊びならこんな手間暇かけないわよ。速攻、ベッドに連れ込んで、やることやって、はい、サヨナラよ」


「キャ、キャロル何言って・・・?」


速攻ベッドに真理はさらに赤くなった。


「それに人を見る目があるアメリアが間違うとは思えないわ。いつでもあなたの人を見る目は、正しかった」


「そ、そうかしら・・・仕事限定かもしれないし・・・」


真理のわずかな自虐ツッコミを、キャロルはあっさりスルーすると続けた。


「だからね、気持ち悪いと思わないなら、信じてみればってことよ。だってこの地球上で貴女を恋人にしたいって言ってくれるイケメンが現れた!奇跡の出会いじゃない!」


キャロルの気持ちは盛り上がり、ドラマチックに語る。


「警戒して出会いを逃すなんてもったいないわ!だったらアメリアも楽しめばいいのよ、ステキなお付き合いを」


「そんな軽い感じで良いの⁈」


自分の価値観を軽く斜め上をいく発言に、真理はビックリする。


楽しむ・・・出会いを・・・?


「好きじゃなくてもいいの?」


子供のような質問にキャロルは破顔した。


「好きか嫌いかなんて付き合ってから決めればいいわ!」


「そんなもんなのね・・・」


真理の途方にくれたような顔を、嬉しそう眺めながら、キャロルはさらに真理を仰天させた。


「それで相手に遊ばれたんなら、それでいいじゃない!良い経験したぐらいで。あなたの恋愛スキルが上がるわよ!」


「えーーーー???遊ばれた方がいいわけ?!」


真理の驚愕の言葉に、キャロルは大好物といった目つきで力強く頷いた。






別れ際、真理はキャロルにギュウギュウ抱きしめられ、「アメリアの恋バナ聞けて嬉しい!続きを待ってるからね!」と鼻息荒く念を押された。


何となくそんな関係不適切だからやめた方がいい、と言われるのではと思っていたのだが、ネガティヴな期待は予想外にも外れてしまった。


自宅に帰るため駅に向かって歩きながら、真理は信号待ちでふとショップのショーウィンドウを見た。


そこに、なんとも平凡な自分が映っている。

脳裏にアレックスの言葉が過ぎった。


——恋人にしたい女性なんだ——-

——本気だ。俺は貴女に一目惚れなのに——


彼の情熱的な眼を思い出して、また胸がドキドキする。


——楽しめばいいのよ——

キャロルはそう言った。


確かに王子様との出会いなんて奇跡に違いない・・・


あんな風に言って見つめてもらえて光栄だ。


なら・・・遊ばれてもいい

今はこの出会いを楽しんでみようーーー


アレックスからしてみれば、かなりずれている話しだが、真理はようやく王子との時間を楽しんでみようという気になっていた。


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