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恋人は戦場の聖母 〜王子の全力溺愛物語〜  作者: 嘉多山 瑞菜
第3章 恋に落ちて
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「へぇー、アレックス殿下でも、そんなことができるんすね・・・随分、ご執心っすね」


クロードのあけすけな物言いが、若干不愉快だが、機嫌の良いアレックスは不敬な発言を不問にふすことにした。


猛烈にタブレットで数々の申請を承認しながら、真理とのデートを思い出す。


「警戒心丸出しのミス・ハロルドにグイすぎじゃないっすか?」


「なんだよ、グイすぎって?」


「グイグイ行き過ぎの略っすよ」

「ふん、くだらん」


クロードの当然の小言も今のアレックスにはどこ吹く風だ。


「いや、彼女はこれくらいの方がいい。でないと、他の誰かに攫われる」


「でも、殿下のアプローチ、本気にしてないんすよね」


まぁ、王子に迫られてるなんて思わないっすよね、普通・・・とケラケラ笑いながら言うクロードにムッとした。


「だいたい、殿下は過去の悪業も多いっすし、遊び過ぎっすから。

あんなウブそうな女性じゃ、殿下の言葉が本気なんて理解できないっすよ、駆け引きだって無理っす」


「・・・別に俺が頼んだわけじゃない、みんな向こうから寄ってくるだけだ」


言い返すやんごとなきお方の言葉に、何もかもを見てきた側近はハイハイと軽く返事する。


「急に本気の相手が出来てしまって、貴方が執着したいのは、まぁ分かるんすが、それにしても相手の気持ちを無視するのはやめた方がいいっすよ」


ミス・ハロルドは軽く扱っていい相手じゃないっすから。


付け加えられた言葉に無視してないし、そんなことは分かっていると鼻白んで答えると、アレックスは先日の真理の様子を思い出す。


写真に夢中になったり、困ったり、急に気が強くなってみたり、清楚だったり、凛々しかったり、そして何よりも愛らしかったりーーー

彼女の新しい表情を見るたびに夢中になっていく。


命の恩人とかそういうことじゃない。

本当に一目惚れしたのだ。


あんな華奢でそれなのに戦地で写真を撮る勇気ある女性に。


ひたむきに戦場の過酷な現実を見つめ、伝えようとするその姿に。


アレックスは仕事の手を止めるとクロードに言った。


「俺は駆け引きするつもりはない。とにかく次にあっちへ行くまでに、彼女と会う時間を最優先でたくさん作れよ。彼女に俺の本気を理解してもらわないとな」


仕事を調整しろと命じられて、クロードはヘーイと返事した。


致し方ない、王子が本気ならこちらも頑張らねば。


首席補佐官としての腕の見せ所だ。


そこで、ハタとクロードは気付いた。


「それにしても、殿下、自分ってミス・ハロルドに会える日が来るんすかね?」


なにしろクロードは真理からはつきまとわれた危険な人間で認定されている。


アレックスは苦笑すると、ちゃんと話して会えるようにするから心配するなと返した。


どこまでも恋に楽天的な王子に側近は呆れたような吐息を零したのだった。

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