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恋人は戦場の聖母 〜王子の全力溺愛物語〜  作者: 嘉多山 瑞菜
第2章 絡み合う時間
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どんなに逡巡しても、真理の足はその場に来てしまっていた。


王宮での勉強会から10日が経っていた。


近頃はさすがに真理の気持ちも現実に戻っていて、あの王子から下賜されたスマートフォンの存在もやや気にならなくなっていた矢先、トークメッセージが届いたのだ。


---スピルナ・ホワイトの写真を観に行きませか----


真理はこのメッセージを観たときクラっとした。


スピルナ・ホワイトは星空やオーロラなどの自然を撮る有名な天体写真家だ。

たくさんの写真集を出していて、真理も冴え渡る漆黒の中で煌めく流星群の写真をSNSで観て以来、ずっとファンになっている。


だから観たいに決まってるのだ。


しかしスピルナ・ホワイトの写真をどこに観に行くというのか・・・肝心なことは何もなく、行くか行かないかだけの選択しかない。


王子に会ってはいけない・・・

夢を見ちゃいけない・・・

身分不相応だ・・・

パパラッチに撮られたら王子に迷惑がかかる・・・


迷って迷って、でも・・・王子の「貴女と話しがもっとしたい」そう言って柔らかく微笑んでくれた顔を思い出すと胸がどうしようもなく苦しくなる。


「これっきりにしよう」


自分の中の迷う気持ちに言い訳をする。

なぜか自分に関心を持つ王子に、はっきり言おう。


「あなたとお友達になるつもりはない。構わないでほしい」と。


そう決意して、真理は指定された待ち合わせ場所に赴いていた。


そこには迎えの車が到着していて、真理の姿を認めると運転手が恭しくドアを開けてくれる。


王子は現地で待っていると連絡があった。


誰もいない座席に乗り込むと、真理は落ち着かない気持ちのまま、動き出した車窓の風景に眼をやった。


落ち着け、落ち着けと言い聞かせながら。


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