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恋人は戦場の聖母 〜王子の全力溺愛物語〜  作者: 嘉多山 瑞菜
第2章 絡み合う時間
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真理は緊張から喉がカラカラに乾くのを感じていた。

王宮に到着し、王室府の補佐官に小部屋に案内されここで待機するように言われたのだ。


小部屋といったって王宮なわけで、その煌びやかなアール・デコ様式の華やかな建物に、眼を見張るばかりのアンティークな調度類に囲まれて真理はいたたまれない思いでいた。


ロナルドについてきて欲しかったが、王室府からは「お一人で」と指定されていた。


真理は大きな鏡に映るじぶんの姿をしげしげと見つめた。


そこには見慣れない自分がいる。


非公式の勉強会だからドレスコードはオフィスカジュアルな服装で良いと言われて、ごく普通の紺のパンツスーツを選んだ。


戦場カメラマンとして話をするのだから、飾り立てる必要もないと考えたのだ。


そんな姿を、とりあえず王宮まで見送りにいこうと来てくれた叔父のロナルドと、いつも世話になっている編集委員のソフィアに見せたところ、叔父はともかくソフィアが眉間に皺を寄せた。


そして、手近なショップに連れていかれ、あーでもない、こーでもないと着替えさせられてしまったのだ。


その姿がこれだ。


ネイビーのラメツィードで仕立てたブラウスとテーパードパンツのセットアップだ。

リネン素材に重厚な華やかさがあり、真理の肌の色によく映える。


真理の若々しさを引き立てるかのように、襟元は上品なキーネックになっていて、鎖骨を綺麗に見せている。

すっきり感といまどきの女性らしさを香らせるディテールだ。


艶やかな光を放つ黒髪は、ストレートのまま背中まで垂らしている。


アクセサリーは耳のピアスだけ。

亡くなった母から譲り受けた真珠のピアスをつけた。


化粧は肌のきめ細かさを生かすよう薄化粧だけで良いと言われて、普段すっぴんが多い真理は四苦八苦しながらなんとかメイクをしたのだ。


シンプルながら真理の魅力を存分に引き出した着こなしに、ロナルドは若干驚き、ソフィアは満足げに頷いていた。



とはいえ、、、鏡に映る自分を見て今度はため息をついた。


自分は報道カメラマン。見た目は関係ないのだ。


何をやんごとなきお方が自分に聞くのかは分からないが、自分の写真や被写体についての想いは伝えられるように頑張ろうと決意する。


傍らの相棒のカメラを撫でる。

少し緊張が和らいで、気持ちが落ち着いてきたような気がした。


コンコンと部屋のドアがノックされる。

迎えが来たのだ。


真理ははい、と返事をすると重厚な扉が開くのを息を詰めて待った。


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