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恋人は戦場の聖母 〜王子の全力溺愛物語〜  作者: 嘉多山 瑞菜
最終章 きみを死なせない
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「ひぇー、参った参った!人数が多過ぎる!なんだよこれ!?」


おしゃべりに夢中になってると、突然紗幕が開いてアレックスがクロードにぶつぶつ言いながら入ってきた。


「クリスティアン殿下っ!?」


キャロルは驚きのあまり飛び上がるように立ち上がった。

アレックスはそんなキャロルに、にこやかな笑顔を見せると、まずは座っている真理の頬に身を屈めて軽くキスをし、楽しんでるか?と聞く。


「ええ、とっても。殿下、私の親友を招待してくださってありがとう。紹介するわ」


アレックスが優しく頷く。

キャロル、と真理が声を掛けると、彼女はかなりギクシャクとしたカーテシーをアレックスにし、名乗った。


「彼女は私の親友で色々なことを教えてくれる姉でもあり、優秀な医師でもあるの」


そう説明すると、アレックスは優しい瞳でそうか、と言いながらキャロルに声を掛けた。


「真理・・・アメリアの良き相談相手だと聞いてる。私からも感謝する。これからもよろしく頼む」


華やかに微笑んで言われれば、さすがのキャロルも真っ赤になる。

もごもごと「もったいないお言葉で」と呟いた。


さすがにそれだけではと思ったのだろう、聡い彼女は、キリッとした顔をすると「これからもアメリアの大親友でい続けますので、よろしくお願いします」と言ってくれた。


それに満足そうに頷くとアレックスは真理に言う。


「まだまだ挨拶が続きそうだ。逃げられないから、君はゼペット嬢と楽しんでて」


真理がふふっと笑い「王子様は相変わらず大変ね」と言って冷えた水を差し出す。喋りすぎだろう、声が掠れているのが気になった。

アレックスは仕方がないと肩を竦めると、真理から渡された水を嬉しそうに受け取り、ごくごくと一気に飲んだ。


ふぅと一息ついて今度は真理の唇に触れるだけのキスをわざわざ3回もすると、今度はクロードを伴って、また和かな笑顔を振りまきながら、フロアーへ出て行った。


「うわぁー、ホンモノにビックリ!!心臓止まるかと思った!!本当にイケメン!!!!!しかも、アメリアの扱いがスマート過ぎ!!!!」


感激しきりのキャロルと、過去に王子のことを、遊び人や結婚詐欺師と評したことを2人で思い出し大笑いする。


大いに笑って、真理はフロアの中央で歓談を続けるアレックスを見つめた。


穏やかな笑顔、真理の大好きなアレックスの顔だ。


自分のためにキャロルを招き、忙しい合間を縫って、キャロルに自分から顔を見せに来てくれた。

そして挨拶までしてくれる・・・自分の恋人として。


いつだって、アレックスは自分のことも、自分が大切にしているものも、同じように大事にしてくれる・・・。


まだ気持ちをちゃんと言葉にしていない。

そのことを不意に思い出して、鼓動が鳴った。


ザルティマイで気持ちを告げていないことに後悔をしたのだから・・・早く言わないと・・・彼の気持ちに甘えてばかりではいけない。


勇気を出さないと。


真理は鼓動がトクントクンと早鐘のように鳴るのを感じていた。









帰るキャロルを出入り口まで見送ると、付いて来ていたテッドに、席を変えるから、と言われる。


「そうなんですね、分かりました」


パーティの最中に座る場所が変わることに、真理が少し訝しむような顔をすると、テッドがうっすらと微笑んで説明した。


「あちらのお席にアメリア様がいる事が、周りに伝わってしまって、少し騒がしくなっています。パーティももうじき終わりますから、こちらで休憩されながら殿下をお待ちください」


先程まで座っていた場所からは、かなり離れた個室に案内される。

この場所からはフロアのアレックスも見えない。


テッドが持ってきてくれたイチゴを食べていると、テッドもお呼びがかかったようだ。


「アメリア様、申し訳ございませんが、一旦私はここを離れます。殿下ももうじきこちらに戻られますので、このままお待ちください。くれぐれもこの部屋からは出ないように」


外に護衛がいますので、そう言い置いて秘書官は部屋を出て行った。


久しぶりの華やかな場での高揚感と、キャロルに会えた喜びが相まって、若干の疲労を感じ、真理はおとなしくこの場で休むことにした。


出されたロイヤルミルクティを飲むと、ホッとする。

アレックスと初めて会った時に出されたのも、美味しいロイヤルミルクティだった、と懐かしく思い出す。


あの勉強会からまだ一年と少ししか経っていないのに、ずいぶん自分を取り巻く環境も自分の気持ちも変わった。

それが、嫌でない理由はもう十分に理解している。


思わず目尻がじんわりと滲んで、真理は慌ててクリスタルビーズで覆われたクラッチバッグの中を探った。

ハンカチを取り出そうと見ればバッグの中にはなくて、そういえば先程までいた席のテーブルに置いてきてしまったと思い当たる。


取りに行こうと部屋を出ると護衛がいて、事情を話すと、元の席まで一緒に行ってくれることになった。


廊下を抜けて、パーティ会場のフロアに入る。

中央では相変わらずアレックスがヘンドリックと一緒に招待客と談笑していた。


その姿に思わず口元が緩むが、チラチラと自分に気がついたような視線を感じて、慌てて顔を引き締める。


壁伝いに歩きながら人波を避けて、先程までいた席に近づくと、真理は歩みを止めた。


紗幕に覆われて人目につかないようになっているその場所から気配がしたからだ。


誰かが座っているのだったら、入るのも悪いと思って耳を澄ます。


押し殺した呼吸、ギシギシと軋む耳障りな音に、縺れ合うような衣摺れ・・・


瞬間、ハッとする。 戦地や治安の悪い土地で、往々にして耳にしてきた音だ。


合意じゃない・・・暴力によるレイプ!!

誰かが襲われている???!!!


真理は護衛が止めるよりも早く、紗幕を捲りあげ、その場に飛び込んだ。


そして・・・思いもかけない光景に呆然と目を見張った。


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