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恋人は戦場の聖母 〜王子の全力溺愛物語〜  作者: 嘉多山 瑞菜
第2章 絡み合う時間
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アレックスは浮かれていた。

それはもう、側近達が呆れるくらいに。


上質なフラックスカラーのカジュアルテイストなスーツに身を包み、髪型を入念に鏡でチェックする。


側近中の側近、主席補佐官のクロードはその姿を見ながら呆れたように口を開いた。


「これって、公私混同っすよね」


その言葉にピクリと頬を痙攣らせると、アレックスは振り返って「違う」と言った。


クロードは意外に容赦がない。


「そうっすか?だって殿下の探し人が【ハロルド】氏、そして、その正体がミス・アメリア・ジョーンズだって気づいたから、権力使って呼び出したんすよね」


そう、アレックスはヘンドリックからもらった情報で水を得た魚のようになったのは間違いない。


そもそもこうなれば簡単な話だ。


【ハロルド】はデイリー・タイムズでしか写真を発表してない。

そして、デイリー・タイムズの編集長はロナルド・ジョーンズなのだから。


報道記者を父に持つ姪がいれば、【ハロルド】がその姪じゃないかと考えるのは簡単だ。

そして、何よりもその父の名前がハロルドなのだ。


そして【ハロルド】は【戦場の聖母マドンナ】と呼ばれて女だと噂が立っている。


だから、軍経由でロナルドを懐柔するとか、クロードに馬鹿みたいにミス・ジョーンズに突撃させたりするとか、そんな手間暇かかることよりは、文化人として王宮に招くのが手っ取り早いと踏んだのだ。


それまでの空回りが嘘のように、そこからは簡単だった。


もともと、活躍している著名人や有名人を王宮に招いて話を聞く機会は多い。


王室も様々な見識を増やし深めるために積極的に【勉強会】と称して一般人と会うのだ。


その勉強会に【ハロルド】を招くことにした。


我ながら妙案だとほくそ笑んだのは秘密だ。


幸いにも兄の王太子とその妻シャーロットも【ハロルド】の写真には興味を持っていたので【非公式の勉強会】を賛成してくれた。

父の国王陛下も軍人である自分の意見を尊重して、従軍カメラマンを呼ぶことを許可してくれたのだ。


デイリー・タイムズはかなり、かなり本当に王室の招きにも関わらず、かなり渋ったが、最終的には折れた。


条件は「正体の秘密は守ること。そして軍や政府に干渉させない」


これがもう【ハロルド】が負傷兵を救助した人間だと言ってるのと同じで。


その答えを聞いてからはアレックスの頬は緩みっぱなしだった。


公私混同と言われようが、権力行使といわれようが、そんなことは構わない。

自分は何としても、命の恩人に会いたいのだ。


登城するとの返事をもらってから、今日という日を指折り数えて待っていた。


あと1時間もすれば探し人に会える・・・。

そして、あの日のことを訪ねて感謝の気持ちを伝えたい。


ポケットにしまったあのハンカチにそっと触れる。


アレックスの頭の中は彼の人のことでいっぱいになっていた。

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