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恋人は戦場の聖母 〜王子の全力溺愛物語〜  作者: 嘉多山 瑞菜
最終章 きみを死なせない
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なるほど、と真理は眼を見張った。

すっかり忘れていたが、「ごくごく内輪」と言っても主役がこの国の第二王子なら、軽くこれくらいの規模になっても当然だろう。


ヘンドリックが経営するクラブハウスを貸し切りにしてのパーティは、100人を超える参加者がいる。


「やれやれ、相変わらずハミルトン様はやることが派手っすね」


パーティに帯同しているクロードが嘆息しながら、真理にカクテルを持ってきてくれた。

ありがとう、と言って受け取ると真理はドサリと目の前に座った首席補佐官に笑顔を向けた。


恐らくパーティの参加者達はアレックスが真理を紹介する事を期待していただろうが、側近達はその必要は無い、とアレックスが真理を見せびらかすのは会場に入る時だけにさせた。


会場入りするとすぐに、ヘンドリックへの挨拶もそこそこに、アレックスから離れフロア奥に特別に設えられた席に案内されたのだ。

洒落た紗幕で囲われたそこは、外からは見えそうで見えない、でも中からは会場内が見渡せるなんとも心憎い作りになっている。


真理はその気遣いも嬉しい。さすがにこんなに華やかな雰囲気は気後れする。


数日前に第二王子のご学友、ベルグランド公爵家の嫡男、ヘンドリック・ハミルトンが王子のための帰還祝賀パーティを開催することは、会場も含めてニュースに出ている。


会場の外は凄まじいメディアの数だ。

誰も彼もが、真理の紹介を心待ちにして会場の出入り口を張るが、側近達のガードは固い。


アレックスは会場の中心で色々な人間と歓談している。

和かなアレックスの後ろで、テッドが冷静過ぎる顔で控えているのが面白い。


ふふっと笑いながら、そう言えば、と真理はクロードに尋ねた。


「こういうプライベートな内輪のパーティにも、クロード様やテッド様は付いて来られるんですね」


今までのデートでは、彼らはいなかった。護衛ばかりだったから、不思議に思ったのだ。


クロードはテーブルに並んだ料理を旺盛に食べながら、ニヤッと笑った。


「まっ、そうっすねー、普段はプライベートは護衛だけなんすが、戦後初のパーティっすから。なんか恨み買って狙われたりすると困るっすからね、プライベートなもんでも、しばらくは付いてるんすよ」


ムシャムシャ食べながら物騒な事を楽しそうに言う補佐官だが、彼の耳にもインカムがあり、逐一報告が上がっているのは真理に分かる。

護衛の数も、この規模のパーティにしては多い気がした。

改めてアレックスの置かれてる立場が危険と隣り合わせなのだと言う事を実感しながら、真理はカクテルを口に含んだ。


「ミリー、お客様です」


ティナに案内されて入ってきた女性を見て真理は、思いがけない人物に思わず立ち上がった。


「キャロル!」


もう泣きながら自分を抱きしめる親友に、真理は驚いた。まさか彼女に会えるなんて思わなかったからだ。


「アメリア!!ああ、無事で・・・本当に無事で・・・」


自分に抱きつき、おいおいと号泣し始めた親友に真理の目にも涙が浮かぶ。


パッとクロードを見れば、ニコニコしてるから、恐らくアレックスとクロード達がキャロルを招いてくれたのだろう、そう思うと胸が熱くなる。


クロードが気を利かせて、ティナと一緒に席を離れると、真理はキャロルと抱き合ったままソファーに腰を下ろした。


取り乱したように泣いていたキャロルだったが、クロードがキャロルのために持ってきたカクテルをテーブルに置いた頃にはやっと落ち着きを取り戻した。


禿げたマスカラを気にせず、ハンカチで目元を拭いながら話し出す。


「あの時、私はノントレイ国の難民キャンプに派遣されていて、そこでザルティマイが占拠されたというニュースを聞いたの。卒倒しそうになった」


その言葉に、真理は苦笑する。


「何が起こるか分からないのが戦争だって分かっていても、アメリアがあんな目に・・・人質になるなんて・・・!!」


「心配かけてごめんなさい」


そう言うと、キャロルはううん、と頭を左右に振ると気持ちを落ち着かせるように、カクテルを一気にあおると続けた。


「私はノントレイの山岳地帯にいたから、ウクィーナに行くことも出来ず・・・心配でロナルド編集長に連絡したの」


「ロニー叔父様に?」


そう、と頷くとキャロルは続けた。


「そうしたら・・・アメリアは大丈夫だから・・・クリスティアン殿下とドルトン軍が必ず助けてくれるから、静かに祈って待つように、と仰られて」


「そう・・・」


いちいち恥ずかしがるのは、もう止めようと思うのだが、どうしても顔は赤くなる。


多分、その頃には叔父はすでに、アレックスの兄であるエドワルド王太子殿下から事情説明を受けた後だったのだろう、

だから、そんな台詞が叔父からでたのだ。


「それを聞いたら、少し安心できて・・・そうだ!アメリアの彼は王子で軍神だ!って思ったら落ち着けたの、本当に本当に良かった!」


握りこぶしを作りながら、強く言う彼女に真理は苦笑した。

キャロルは医者だ。仕事は冷静だが、元々の性格は割合に激情型だったことを思い出す。

親友と王子の恋に盛り上がっていたが、ここでも真理以上に情熱的にアレックスを褒めている。


真理は恥ずかしさを忘れて、久しぶりのキャロルとの会話を楽しんだ。

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