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10ゴールドの聖剣  作者: 喜助伊洋
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お国のお勉強 (国外追放の理由)

「ありがとうございましたー」


 一礼しながら武器を買って行った常連客たちを見送る。

 金払いから見ても、おそらくベテランなのだろう。

 今回も結構な数の武器を買って行ってくれた。

 これでこの店の評判も良くなってくれるといいが。

 ・・・・・・俺が厳つい顔してるのは店の評判に関係ないと思いたい。


「なあなあ、親父。ちょっと相談したいんだけど」

「ん? どうした?」

「さっきのお客さんたち、いい人っぽいし自分が聖剣って伝えてもいいか? きっと高値で買ってくれるって」

「いや、いつも言ってるだろ? お前が聖剣ってバレたら俺たち国外追放なんだって」

「でもさ、コッソリ伝えればいいじゃん。んで内緒にしてもらって、適正価格で買って行ってもらう。どう? だれも損しないじゃん」

「俺も考えたよ、内緒にするって取引してお前を売り飛ばすって方法。でもそれは危険なんだよ」

「危険?」

「そう、危険。特にこの国だと罪を犯したやつを我先にと捕まえる可能性があるからな」

「どういうこと!?」


 このブレード王国は刑罰が非常に極端だ。

 軽犯罪なら『罰金』、重犯罪なら『死罪』か『国外追放』といった感じになる。


 ブレード王国の住民は非常に多く、そのほとんどが冒険者か、その冒険者を客にする商人。

 冒険者も商人も、基本は他所からの流れ者なので、細かいルールや規則を作っても馴染むまでには時間がかかる。

 さらにはこの国の収益の多くは冒険者が集めた貴重な薬草、魔物の素材、ドロップ品の宝などを買い取り、それを他国に売ることで生まれている。

 そのために多くの冒険者を集める必要があるが、あまりに刑罰が厳しいと冒険者が集まらない。

 そもそも厳しくした結果、犯罪者を捕まえても、閉じ込めておく牢屋を造る時間も労力もない。

 なのでこの国には牢屋などの「継続的に罰を与える」ための施設がない。

 奴隷送りにするという意見もあったが、この国では奴隷という制度を認めていない。

『聖剣の勇者』が建国した聖なる国で、奴隷制度は行えないとのことだ。

 これらの理由から、刑罰の基準はシンプルかつ甘めに設定され、

 ケンカや暴力などから、強盗や窃盗といったものまで金額の差はあるが軽犯罪とされ『罰金』。

 そして何度も行う常習犯や国に対しての大きな犯罪をした者は『国外追放』となる。

『国外追放』になると国に入る際見せる身分証に印が付けられ、入ろうとすると追い返される。

 それでも不法入国しようとしたり、人の命を奪うなどの犯罪をしたものは『死罪』となる。


「実は誇張した表現で品物売るのは詐欺扱いで、この国じゃ軽犯罪になるんだよ」

「え? じゃあ親父も自分も国外追放なんてされないんじゃないか?」

「ところが『聖剣』に関する詐欺は国への侮辱とみなされて、罪のランクが上がるんだ。死刑とではいかないだろうが、国外追放は確実だろうな」

「なるほど。それで「罪を犯したやつを我先にと捕まえる可能性」ってなに?」

「この国にも警察はいるけど、他の国に比べて数が少ない。といか冒険者の数に対して圧倒的に足りてないんだ」

「自警団とかはいないのか?」

「その自警団の役割を担っているのが、さっき武器を買って行ってくれた冒険者たちなんだよ。この国にいる間なら冒険者は犯罪者を現行犯なら捕まえることが出来る」

「え!? じゃあもし、さっき自分が聖剣ってことをバラしてたら・・・・・・」

「即、確保されるだろうな」

「で、でもさ。冒険者には捕まえるメリットがないわけだし、黙っててくれる可能性も・・・・・・」

「ない。犯罪者を捕まえた冒険者にはいくらかの賞金が出る。嘘の報告をすれば罰金はあるらしいけどな」

「・・・・・・賞金額以上の金を渡して黙っててもらうってのは?」

「賞金は罪の重さによって変わってくるけど、国外追放レベルの犯罪者の賞金は俺の店を土地ごと売り飛ばさないと出てこないな」


「つまり自分たちは」

「聖剣って冒険者にバレるだけで国外追放一択」

「・・・・・・ごめん、冒険者たちになんでもかんでも話すの止めることにするよ、親父」

「わかってくれたか」


 握手はできないが何となく剣との絆が深まった。

 そんな気がした1日だった。

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