今ならこれが付いてくる 前編(新しい売り方)
お待たせしました
「それじゃ、防具も新しいの造ってみるか」
「了解、親父。防具って言うと店に売ってるのは基本『鉄の鎧』か『皮の鎧』、この2つかな」
そう言って聖剣サマは飾ってある『鉄の鎧』と『皮の鎧』を指さした。
まあ聖剣サマには指はないので、なんとなく指してる気になっただけだが。
『鉄の鎧』
その名の通り鉄で造られた鎧だ。
金属の材質、つまりただの金属か魔力のこもった魔金属なのかで重量も強度も変わる。
基本的に重く、多少の攻撃にもビクともしないのが特徴といえる。
冒険者の中でも前衛が買って行く商品だ。
『皮の鎧』
こちらは皮で造られた鎧だ。
こちらも材質、普通の皮なのか魔物の皮を使ったものなのかで強度が大きく変わる。
基本的には軽さの代わりに、『鉄の鎧』よりも強度が劣ってしまう。
それでも多少の刃物や魔物の牙・爪を防いでくれるのだが。
冒険者の中では後衛が買って行く商品。
「普通の獣の皮を使った『皮の鎧』が安くて駆け出し冒険者が買う装備だな。『鉄の鎧』は高いし、駆け出し冒険者には重すぎる」
「実力的に重いってこと?」
「それもあるけど、物理的に重い。『鉄の鎧』着て走り回れるだけの筋力がいる」
駆け出し冒険者は、騎士や軍に務めてた奴が冒険者に転職でもしない限りほぼ一般人と変わらない。
そんな奴がいきなり鉄の装備を着けて走り回るのは厳しいだろう。
そもそも『鉄の鎧』がいるほどの魔物なら、駆け出し冒険者には倒せないだろう。
「なので『駆け出し冒険者応援フェア』で売る防具は『皮の鎧』になる」
「けどさ親父、親父の造った『皮の鎧』は魔物の素材で出来てるだろ」
「そうだな。店で売っている『皮の鎧』は基本的に魔物の皮で出来ているな」
「その分高くなるんじゃないかな? 魔物使った武器も防具も高値が付くしさ」
「確かにな。けど普通の『皮の鎧』も造れなくはないぜ」
「隣に上質な魔物の皮の『皮の鎧』があるのに普通の『皮の鎧』買いたくなるかな?」
「あー、なるほど。そう言われてみれば確かに」
目の前に自分が買おうとしているものと同じ種類で、なおかつ明らかに性能が上の物を見ながら買うのは若干辛いだろう。
何か買いたくなるような理由を考えないとな。
「そうだな、じゃあ特典を付けよう」
「特典?」
「ああ、普通の『皮の鎧』を買ってくれた人には、無料で何かオマケするって感じだ」
「確かに、それなら買ってくれるかもしれないけど」
「問題は何を付けるかだな。貰って嬉しくて、なおかつ店の損にならないもの・・・・・・」
「そうだね、人によっては嬉しいけど店としては要らないもの・・・・・・」
「・・・・・・お前?」
「鋼鉄タックル!!」
「うご!」
つい、店に要らないものとして聖剣サマを指してしまったらタックルを食らった。
床に転がりながら、聖剣サマをなだめる。
本当に何を付けようかな?
読んでくださった方々、ありがとうございます