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10ゴールドの聖剣  作者: 喜助伊洋
15/20

『こん棒』ってなんだっけ(新商品の試作)

「それで親父、駆け出し冒険者に買いたいって思わせる方法はあるの?」

「そこでまずはこれを改良しようと思う」

「これって、『こん棒』か?」


 俺が用意したのはこん棒。

 こん棒はこの国で認可されてる武器の中で、最も安いとされている武器である。

 木で出来ているので安値で取引され、殴るだけという単純な使い方。

 駆け出し冒険者向きの1品だ。


「それで、そのこん棒を改良するの? 新しい武器は造らないの?」

「ああ、新しい武器を造っても命を預ける武器だからな。馴染みのある武器を選ぶのが冒険者だと思ってるからな」

「それだったらみんなご存じのこん棒を改良した方が良いってわけか。納得したぜ、親父」

「イメージは出来てるから、さっそく改良していくか。まずは使いやすさからだ」

「確かに今のこん棒って丸太の片方だけ削って手で持てるくらいに細くしただけだから、使いにくくはあるけど。どう改良するの?」

「そこはもう考えてる、より振りやすく、より便利に使える形。つまりコレだ」


 そう言って俺は、ある店から買ってきた新型の『こん棒(仮)』を取り出す。


「・・・・・・親父それって、バット、ですよね?」

「バットだぞ」

「バットってあれだよね。最近ブームになってるスポーツ、「ヤキュウ」で使うやつ」

「そうだな、コレもスポーツ用品店で買ったものだしな」

「それが、こん棒?」

「正確には新型『こん棒(仮)』だけどな」

「それ良いの!? こん棒として売り出して良いの!?」

「大丈夫だ、ちゃんと了承は取ってる」


 国にはこん棒の規格違いを売っていいか、ということを。

 スポーツ用品店にはバットをこん棒として売って良いかということを。

 どちらも「問題ない」との許可をもらったから売り出すのだ。

 流石に確認なしでスポーツで使う道具を冒険者の武器にはしない。


「まあ、問題はないから心配するな。今回は実験ってことで買ってきたやつだけど、売り出すときはちゃんと自作するしな」

「なんか不安なんだけど、まあいいや。そもそもバットってこん棒として使えるの?」

「何言ってんだ、思いっきり振れるように作られた木。それがバットだろ」

「いや、振れるだろうけど! そうじゃなくて威力として足りるのかなって、丸太よりだいぶ細くなっちゃったし」

「あー、確かにな」


 こん棒は結構重い。

 当てた衝撃で魔物を倒すため、かなり太めの丸太を加工したものが使われてきた。

 それに比べるとバットはかなり細く見えるだろう。


「つまり、威力が低くなってるってことだな」

「うん、まあそんな感じ。もっと太くすればいいけどそれじゃあ元のこん棒と変わらなくなるし」

「大事なのは、このサイズでちょっと重量を増やして威力を上げるってことか」

「どうする? 全部金属にしちゃう? 親父なら鉄からでも造れるでしょ」

「それだと剣と変わらない金額になるからな、安上がりで済みそうなもので重量というか威力を上げる方法・・・・・・・あ、思いついたかも」


 俺は一旦鍛冶場に向かい、剣や鎧なんかを造るときに余った鉄のかけらを集めていく。

 それらを『鍛冶』スキルで大体均等なサイズにして尖らしていく。


「親父? それってゴミにする予定の鉄だよな、使えるの?」

「ああ、これだったら元手0みたいなものだしな。あとはコレを」


 両端を尖らした鉄のトゲをさっき見せた木製のバット、もとい新型『こん棒(仮)』に、

 思いっきり突き刺していく!


「親父!? 何してんの!?」

「まあ見てろって、あと5,6本くらい刺しこんで抜けないようにハンマーで打ち込んでっと、出来たぞ」

「・・・・・・えーとビジュアルが大変なことになってるけど、そのバットに何本かの鉄のトゲみたいなのを刺したのがそのー」

「新型こん棒、名付けて『トゲ付きバットこん棒』だな」

「そのネーミングセンスにも物申したいけど、コレを売るの?」

「不満か? 振りやすく、重量はそこそこで威力も出る。そして何より安く仕上げられる。いい商品が出来たと思ってるぜ?」

「なんて言うか、外見が凶悪すぎると言いますか、こんなの持ってる冒険者がいたら間違いなく通報するぜ?」

「まあ、これは試作品だ。とりあえず新商品の候補に入れておこうぜ」

「まあ、いいか。とりあえず新商品第1案、完成おめでとう親父!」

「ありがとうな」


 照れくさいがやっぱり新しいことをしたときに一緒になって考えてくれたり応援してくれたり、完成を喜んでくれたりするやつがいるのは嬉しいものだ。



【新商品『トゲ付きバットこん棒』を作成した】



読んでくださった方々、ありがとうございます

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