商会長との会話 前編 (ウエポンズの立場)
今回も分かれてます
「じゃあ俺は商会行ってくるから、留守番よろしくな」
「わかったよ。気を付けて行ってきてくれよ、親父」
ソード商会。
この国で一番の勢力を持つ商会で『ウエポンズ』もその傘下に入っている。
そして月に1度、商会で各店舗の代表が集められ会合が行われる。
俺も『ウエポンズ』の代表として出席しなければならない。
なので店は閉めて、留守番は聖剣サマに任せている。
「おおー、『ウエポンズ』! よく来てくれたな」
「相変わらず店名しか覚えてませんね、商会長」
「お前だって儂のこと、役職でしか覚えてねーだろうがよ」
商会長。
正直、これ以外の呼ばれ方してるのを見たことがないので、名前すら思い出せない。
だけど、この呼ばれ方以外に呼ばれることがなくても問題ないくらい、長い間商会長を続けている人だ。
今年で100年目になるのだろうか。
別に代々商会長をしてるわけではなく、この人がずっと100年間続けているのだ。
なぜならこの商会長、人ではなくドワーフ。人族よりもずっと長い生きな種族だからだ。
「しっかしお前みたいな若造が店を構えてから、もう半年以上も経つのかよ。時が経つのは早いな」
「なにおじいさんみたいなこと言ってるんですか、商会長。まだまだ元気でいてくれないと困りますよ」
「もう200も超えるじじいに何言ってるんだよ、そろそろ引退させてくれよ」
「いやいや、まだまだ頑張ってくださいよ。困るんですよ、切実に」
実際、この商会長が引退したら『ウエポンズ』はマズいことになる。
なぜなら『ウエポンズ』が細々とだが経営できてるのは、この人のいい商会長だからである。
実はソード王国の武器屋の仲間内で、『ウエポンズ』は結構浮いている。
どこかで修行して独立したわけでもなく、成り上がり冒険者が突然始めた店。
『鍛冶』スキルという、普通じゃないやり方で造ってる店。
出所不明の素材を使って商売してる店。などが『ウエポンズ』の評価である。
そんな評判の店なのに、商会で仲間外れにされずに済んでるのは、商会長が「まあ、いいんじゃね?」のという認識だからである。
この商会長、基本的にいい人と言うかおおらかな人で、大きなトラブルが起きなければトラブルの種になりそうなことでも受け入れてくれる。
だから元冒険者でなぜかお金を持っていて、なぜか武器屋をいきなり始めた新参者の俺みたいなやつでも、愛想良く相手してくれる。
これがもし、違う人が商会長になったら?
まず間違いなく俺は武器屋を造った理由と素材の出所を尋ねられ、場合によっては直接店に来られての調査が入るだろう。
武器を扱う商人だけあって、『鑑定』スキルを持っている人もいるらしい。
最悪、聖剣サマが『鑑定』されたら、めでたく俺と聖剣サマは国外追放になる。
つまり聖剣サマが『ウエポンズ』にある間は、この商会長サマが商会長でいて貰わないと困るのである。
「儂もそろそろ次の世代にバトンを渡したいのよ。どう思うよ『ウエポンズ』?」
「何を言ってるですか商会長、商会長にはあと100年は頑張ってもらわないと」
「わっはっは、あと100年もしたら、儂でももう足腰経たなくなっちまうよ! まあ頑張って欲しいって気持ちは伝わったよ」
「そうですよ、そう簡単にやめて貰ったら(国外追放的な意味で)困るんですから」
ハハハ、と笑いあう俺と商会長。
だが、商会長の内心は知らないが俺の内心はヒヤヒヤものである。
まさか最低でもあと50年は商会長でいてくれると思っていたのに、引退も視野に入れてたとは。
これは店に戻ったら聖剣サマと相談しないといけないかもな。
今回はここまでです
すみませんが後編は来週になります
読んでくださった方々、ありがとうございます