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教えてっ、お風呂ってどうすればいい?

 百均で買って来た荷物を新しい俺の部屋に置いて、元の部屋に置いてあるベットの上でグデーっと脱力していると、徐々に睡魔が襲って来て意識が朦朧としてきた。


 それもそうか。


 今日という一日はあまりにも濃すぎた。


 午前中にイベントが集中しすぎて、前半に畳み掛けるなと言いたくなった。


 何となくだけど、だんだん意識が遠のいていくのが分かる。


 寝汗でベタベタになるのは勘弁だったので、何とかエアコンの電源を入れることに成功するが、力尽きたようにパタリと腕が落ちる。


 もうだめだ。眠すぎる。お休みなさい。


 すやぁ……。




────────




 ふと目がさめてまわりを見渡すと、電気をつけていない部屋は真っ暗だった。


 寝る前にカーテンを閉めた記憶がないと言うのにここまで暗いということは、もう夜になったのか。


 鈍く痛む頭とだるくて重い体をなんとか動かしてリビングに降り、エアコンのスイッチを入れてから時計を見るともう七時だった。


 エアコンから出てくる冷たい風に当たっていると、くぅ〜っと可愛らしい音が腹から聞こえてきた。


 そういえば、まだ飯食ってなかったな。


 幸い俺は料理ができる系男子……女子なので、この時間帯からわざわざコンビニにとかにお弁当を買いに行く必要はない。


 この料理スキルはTS関係なしに、ただ単に自分で美味い飯を作って食べたかったが故に習得したのだが、実際に女になったことで必修スキルとなった。人生何が起きるかわからないもんだねぇ。


 と、言うわけで、今からご飯を作って行くのだが……。


 今から焼いたり刻んだりすんのは面倒だし……もうパスタでいっか。


 確か湯煎で使える缶のトマトソースがあったはずだから、お湯を沸かして中にぶち込めば完成するな。


 三分クッ◯ング〜♪(BGMは脳内再生を推奨します)


①まずは鍋を二つ用意してお湯を沸かします。


②お湯が沸いたら、それぞれの鍋にパスタとトマトソースの缶をぶち込みます。


③適当に頃合いを見てパスタを皿に盛り付け、トマトソースをぶっかけます。


 はい、完成☆


 三分クッ◯ングって言ったけど所要時間三分も要らなかったな。


 お腹ぺこぺこなので早速食べちゃいますか。


 いただきます。


 完食。


 いやぁー、結構雑に作ったけど美味しかったな。


 男の時に食べてたのとおんなじ量を作っちゃって、作りすぎたかなーって思ったけど、案外ぺろっと食べれたよ。


 飯を食ったら後片付けをしないといけないんだが──。


「皿洗うのは面倒だから、風呂上がってからにするか」


 パスタとか油物って、ソースがお皿にこびりついてるから洗うのが大変なんだよな。あと茶碗も。


 よく昔から母さんに言われたなぁ。「油物と茶碗は水につけろ」って。


 苦労して皿洗いを終えてフゥッと脱力すると、急に汗のベタつきが気になり始めた。


 料理中にも結構汗かいちゃったし、眠気覚ましの意味も込めて風呂にでも入りますかね。


 そうと決まれば部屋に戻って、下着とパジャマを──


「……新しいパジャマ買ってなかった」


 ぐぅっ、せっかく今日この炎天下の中我慢してモールまで行ったのに。すっかり失念していた。


 パジャマで思い出したけど、そういえば部屋着もないな。


 ま、別に誰かに見られるわけでもないし、下着の上に男の時の服を着て彼シャツみたいな感じにすれば十分かな。最近暑いし、結構涼しそうだ。我ながら名案だ。


 風呂上がりは体が火照って仕方がないので、体を冷やすためにも風呂に入る前からエアコンの温度を下げておく。


 え、体に悪い? 大丈夫だろ。この程度で風邪を引くようなやわな鍛え方はしてない。体が変わってしまったので、この理屈が通用するかは少し不安だが。


 フラグじゃないぞ?


 部屋に戻って紙袋の中からパンツだけを取り出す。


 夏曰く、「夜にブラをするのは、寝る時に窮屈で寝にくい」らしい。


 元の部屋からダボダボのTシャツを引っ張り出してから脱衣所へと向かう。


 服を脱いでいると、洗面所の鏡が視界に入る。


 全裸になってから、改めて自分の姿を見てみると、改めてその美しさに見惚れてしまう。


「我ながら何度見ても素晴らしいプロポーションだな」


 眼下に広がる巨乳(Eカップ)を十二分に堪能してから風呂場へと入る。


 椅子に座り、さぁ髪を洗おうとしたところで、ハッと気づく。


「俺、リンスとかの使い方わかんない……」


 さて、どうしたものかと考えながら美しい銀髪をそっと撫でる。


 さすがにこの絹のような手触りの素晴らしい髪を粗雑に扱ってはいけないことぐらいは俺にもわかる。


 ただ、粗雑にしてはいけないと言うこと以外は何もわからないのだ。


 例えばこの眼前にそびえる三つのボトル。


 《シャンプー》、《リンス》、《コンディショナー》だ。


 まだ《シャンプー》は分かる。男のときからずっと使ってきたからな。これは何の問題もない。


 問題は《リンス》と《コンディショナー》だ。


 いや、そもそもこの二つの違いって何なんだ? 男だった時は同じクラスの男友達から「名前が違うだけで効果は一緒」と聞いたのだが、果たしてそれは本当なのか?


 実際に何らかの違いがあったとしても、俺には一切わからないし、わかったとしてもどうすればいいのかわからない。


 ……詰んだな。


 さすがに髪を洗わないと言う選択肢はない。


 男の時は気にしてなかったけど、女になった以上、人の目は十分気をつけなければいけない……はずだ。


 いや、待てよ? 頭部の匂いの根源は、頭皮の脂がどうたらこうたらと以前テレビで聞いた覚えがある。


 それなら頭皮だけを洗えば万事解決じゃないか?


 ……そんなわけないか。


 はぁ、諦めて夏大先生でも呼ぶか。


 まだ体も洗っていないのに綺麗なバスタオルを体に巻くことに忌避感を抱いた俺は、家の中に誰もいないのをいいことに全裸で移動することにした。


 時刻はまだ六時半。


 俺の家から夏の家までは歩いて三十秒弱。


 夏の生活習慣的に、この時間帯だとお風呂に入らずにリビングでゴロゴロしながらテレビを見てるだろうな。


 うん、いける。


 LANE電話を使い、夏と通話する。


『もしもし』


「あー俺俺。急で悪いんだけどさ、もうお風呂はいっちゃった? まだだったらちょっと風呂セット持ってきて家まで来て欲しいんだけど」


『何でまた……あー、おっけ。だいたい予想できた。そゆことね。それじゃあせっかくだし、そっちに泊まっちゃってもいい?』


「何がせっかくなのかよくわからんけど、明日学校だぞ? 大丈夫なのか?」


『明日必要なものは全部持っていくから大丈夫。朝起きたらそのまま一緒に登校すればいいでしょ? 家近いし、お風呂に入ってからわざわざ帰るのもめんどくさくない?』


「まぁ、確かにそうだけど」


『それに、まだあんたに教えてないことたくさんあるから、この機会に覚えちゃおう』


「お前は教師か」


『まぁまぁまぁ。それじゃ、準備してからすぐにそっち行くから、ちょっと待っててねー』


 そういって夏は一方的に通話を切った。


 ……別にいいんだけどね。


 と言うか、リンスとコンディショナーだけでもてんてこ舞いなのにまだ覚えなければいけないことがあるのか。つくづく女って大変だな。


 全裸のままリビングに一人立つ銀髪の美少女の画。なかなかにシュールだな。


 そんなしょうもないことを考えていると、来訪者を告げるインターホンの音が聞こえた。



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