教えてっ、部屋ってどうすればいい?
大量の荷物を抱えてモールを出た俺たちは、途中で寄ったコンビニでアイスを買ってそのまま食べながら家まで帰ってきた。
明日の朝は迎えに来てくれるらしい。
なんでも、俺一人だと何しでかすかわからないからだそうだ。
俺ってそんなに信用なかったっけ?
むぅ、納得がいかんな。
まぁとりあえず置いといて、と。
まずは買って来た荷物を片付けないとなぁ……あっ。
そういえば、俺の部屋に収納できるとこあったっけ?
いや、タンスとかはあるんだけど、中身が全部男物の服だったりするから新しい服が入る余裕がないんだよなぁ。
どうしたもんかと考えていると、ピコーンッと豆電球が光った。
……確かウチって二部屋ぐらい余ってたよな。そのうちの一部屋は物置として使われてるけど、もう一部屋の方は何もなかったはずだ。
憶測では俺たち以外にもう二人子供を作る予定だったとか、大工さんのミスだとか、さまざな憶測が俺と妹の間で飛び交っているが、未だ真実は闇の中だ。
一室丸ごと俺(Ver. 女)の新しい部屋としてイチから……いや、ゼロから作っていくのも楽しそうだな。
どうせ費用は全部親持ちだ。
そうと決まれば早速服を片付けていこう。
まずは部屋に入って、窓を全開にし、掃除機を使ってざっと掃除する。
だいたいきれいになったら紙袋を抱えて戻り、クローゼットの中に服をハンガーに吊るして入れていく。
ちなみに、このハンガーは元の俺の部屋から持ってきたものだ。
下着類は全部取り出してタグを切った後、綺麗に畳んでもともと入っていた紙袋へと詰めていく。
それが終わったら、今度は元の部屋から男女共通で必要なものを探して新しい部屋へと移動させていく。
さすがに一人では大きいものは運べないからベットとかは後回しだ。
いや、もういっそのこと大型のものは全部新調してもらうのもありだな。
なんてことを考えながら中型のテレビを運んで引っ越し(部屋 to 部屋)が終了した。
うーん、しかしなんか物足りないな。
ふと時計を見ると、もうすこしで五時になる。
中途半端な時間帯だな。
どうせ時間があるならと近くの百均で小物でも揃えるとしよう。
自転車に乗り、百均へと向かう。
うーん、小物を買うとは決めたけど、部屋のコンセプトはまだ決めてなかったな。
ここは女の子らしくメルヘンチックな部屋にするか? それとも必要最低限なものしか置いてないような質素な部屋?
むーん、難題だな。
ちなみに俺自身のキャラのテーマは凛々しいお姉様だ。
中身が男なので、自然と振る舞いも男らしくなる。
まぁ、ある程度は女の方へと寄せるつもりではあるが。
それでもやっぱり男っぽく振る舞う方が気は楽である。
閑話休題。
ふーむ、ここはベタにギャップ萌えとやつを狙っていくべきか?
普段は凛々しいお姉様。そのお部屋はたくさんのぬいぐるみや可愛いクッションが。
うん、これはイケるな。
凛々しいと可愛いのギャップは反則気味だろうな。
そこに俺の伝家の宝刀が加われば、マジで堕とせない奴なんていないんじゃないか?
よし、部屋のテーマは"お姉様の花園"でいこう。
いうまでもなく男子禁制だ。
野郎なんて物がなくなって寂しくなった元の俺の部屋で十分だ。
話を元に戻そう。
百均の小物といってもそれなりに種類があるはずだ。
その中から俺のテーマに沿ったものが一体いくつあるだろうか。
……なかったら最悪日曜大工の真似事でもするか。
そんなことを考えながらか自転車を漕ぐこと五分弱。
俺は目的の百均に到着した。
早速中に入り、品物を物色する。
……こんな言い方だとまるで強盗に入ったみたいだな。
女子ゾーンに入るのは初めてなので、物珍しさにキョロキョロしていると、予想外のものを発見した。
これは靴下か? なんで百均に靴下が売っているんだ……?
そういえば今日モールで夏が靴下も買う必要があるって言ってたな。
ちょうどいいし、買っとくか。
一足じゃ足りなさそうから二足ぐらい。
さて、それじゃあ本命を探し始めますかね。
んー、いい感じに可愛いやつ〜っと。
可愛い小物を探していると、珍しそうなものが目に入った。
これは……砂時計の液体版か?
名前は……『液体時計』。まんまじゃねーか。
見た目は……可愛い。
色のコントラストがいい感じで綺麗でもある。
とりあえずこれは買いだな。
こっちはただの瓶か。
そういえば昔に水に入れると大きくなるゼリー状のボールが流行ったよな。あれの名前って確かぷよぷよボールって名前だったか?
あのボールをこの中に入れて、水で浸してしながら下からライトでも当てたら結構イケるんじゃないか? あー、窓辺におけばライトはいらなさそうだな。瓶だけ買おう。
それからぁ〜、これは化粧ケースか。
化粧といえば、俺は化粧をする必要ってあるのだろうか。
これはただの自慢で何度も言っている事実だが、俺の顔はかなり整っている。
ファンデーションなんてする必要がないくらいきめ細やかで白い白磁の肌。
わざわざ口紅を塗らなくても綺麗な色をしている唇。
それに俺は自分で化粧ができない。
いくら女の動作を完璧にできると言っても動作だけ。
午前中のトイレの一例のように、技術面ではまだまだ精進する必要がある。
ま、そこらへんは夏に相談でもするか。
今は買い物に集中しよう。
探索を続けると、何個かいい感じの商品を発見し値段も予算内だったので購入して意気揚々と家へと帰った。
その後、買ったはいいがまだ飾るところがなく保管場所に困ってしまい、早まったなと後悔するのはまた別の話だ。