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教えてっ、服とか下着ってどうすればいい?

「ほら、行くわよ」



 夏に急かされ家を出る。今の俺はブラをつけていない。きつすぎて苦しかったのと、なんか壊れそうな気がして怖かったからだ。決して露出趣味なんてない。


 なので、いまの俺は膝丈まである白いゆったりとしたワンピースの下は白い肌着一枚にショーツというなんとも痴女チックな格好をしている。


 正直恥ずかしい。


 でもこれがTSの道への試練だと考えると……耐えられる!



「なぁ夏。いまどこに向かってんの?」



「近くにモールがあったでしょ? そのならたくさん服屋とかもあるし、下着の数も豊富だからね。……あんたのその胸のサイズに合いそうなブラがあるのは近場だとあそこしかないのよ」



 恨めしそうに俺のおっぱいを睨みつけてくる。夏のおっぱいも小さいってわけじゃないと思うんだけどな。



「あ、ちょっとコンビニ寄ってもいいか? お金おろさないと、財布の中に五千円しかない」



「はぁ? あんたそんなはした金でなに買うつもりだったのよ。今日は一式揃えるつもりでいるから十万くらい下ろしときなさい」



 なん、だと……!? 女子はそんなにお金がかかるのか。せいぜい一万円程度だと思ってた。これから親には苦労をかけそうだな。


 まぁだからと言って男に戻るつもりなんてさらさらないがな!


 それからしばらく歩いていると、



「……ねぇ、あんたその歩き方どうにかなんない? その見た目でがに股歩きされると一緒にいて恥ずかしいんだけど」



 ふむ、がに股歩きか。



「なら、こんな感じならどうだ?」



 そういって俺はしずしずとお上品に歩いてみせる。



「ぶっ! なんでそんな上品に歩けるの!? そんな歩き方私だってできないわよ!」



「くっくっくっ、これぞ『綺麗っ、上品なお姫様のポーズ No.9』だ。他にも口調・作法・舞踏など種類が豊富なのだ!」



「あーもうそんなのいらないからっ! お願いだから普通に女の子っぽく歩いて!」



「はぁ、仕方ないなぁ……」



 夏の顔が爆発しそうなくらい真っ赤だったので普通に女の子の歩き方をする。


 必殺ポージングを考えるよりも前に一通りノーマル女の子の所作はマスターしてあるから大丈夫! 口調はあえて男っぽくする。なんかそっちの方が萌えない?(謎理論)


 コンビニでお金を下ろし、それからしばらくしてモールの下着屋に到着する。



「おおぅ……」



 なんというか……昨日まで男だった背徳感からかお店に入るのを戸惑ってしまう。


 女の子の花園!って空気がすごい。



「なにしてんの。ほら、さっさと行くわよ」



 そんな花園に躊躇なく入っていける夏は女なんだなぁ……と謎の再確認をしてしまう。



「どうしたの?」



「いや、夏って女なんだなぁ〜って思ってただけ。他意はないよ!」



 顔を真っ赤にした夏からげんこつを頂戴した。解せぬ。



「ば、バカなこと言ってないで早く入りなさい!」



「へーい」



 勇気を出して、女の楽園へと飛び込むぜ!



「おおぅ……」



 なんというか……えっちだな!


 視界がパンツとブラでいっぱいになっている。男の時に来たらしばらくは立ち上がれなかったかも。



「それじゃあ先ずはサイズを測ってもらいなさい」



「は? 測る?」



「そ。どうせあんたバストとか測ってないでしょ? トップとアンダーを測らないとカップがわからないから、ブラを選びようがないのよ」



 へぇー、そこまでは知らなんだ。



「じゃあどうやって測るの? セルフ?」



「んなわけないでしょ! 店員さんに頼むのよ。あっ、すいませーん!」



 夏が店員を呼ぶ。これからナニされるのかと思うとちょっぴり恥ずかしい。やましいことではないってことは頭では理解してるんだけどね!



「はーい。どうしましたか?」



「この子のサイズを測って欲しいんです」



「あらあら、妹さん……には見えないわね。もしかしておっきくなってサイズが合わなくなったとか?」



「あははー、そんな感じです」



 あぁ、やっぱり恥ずかしい。謎の羞恥心のせいでお顔が真っ赤だ。



「それじゃあ行きましょうか」



 店員さんが微笑みながら話しかけてくるが恥ずかしくて顔を上げられない。


 男の時は上半身裸でも何にも感じなかったはずなのに……。もしかしてこれが『精神が身体に引っ張られる』というやつなのか?


 くっ、これから極上のTSライフを送るためにもこの試練、乗り越えなければなるまいて!


 店員さんに目を合わせて目を少し潤わせて軽くウィンクしながら「おねがいっ」と小声でつぶやく。


 これぞ『可愛いっ、お茶目な女子高生のポーズ No.39』! 


 店員さんは俺の必殺ポーズで照れたのか少し顔を赤くして目をそらした。


 フッ。完・全・勝・利!



「そ、それじゃあこちらへどうぞー」



 案内されたのはだいぶ大きい試着室的な場所だった。


 中に入るとメジャーを持った店員さんが二人いる。



「はい。それじゃあ薄着になってくださいね」



「はーい」


 薄着ねー。ワンピースの下は一枚しか着てないんだけどいいのかしら。


 あぅ……やっぱり恥ずかしい。だが、これから素晴らしきTSライフを送るにはこの程度の困難に負けていられない!


 意を決して勢いよくワンピースを脱ぐ。


──下に着ていた肌着も一緒に。


 まぁつまりは、銀髪美少女がショーツ一丁とかいう謎の画になるわけで。


 俺の顔が一気に真っ赤になって茹で蛸みたいになった。


 店員さんも気まずそうにしているも、俺の裸体から目を離せなくなっている。


「あー、着ますか?」


「ぃえ、もうこのまま測っちゃってください」


「わっかりましたー」


 メジャーをあてて測られるまえに、


「結構おっきいですね……少し垂れちゃってますんでお辞儀みたいにしてもらえますか?」


「……はぃ」


 腰を九十度に曲げて測ってもらう。


「えーと、上から89、60、85ですね。バストはEの70です」


「あっはい」


 なんてリアクションしたらいいのかわからずにテンパって答えてしまった。


 っていうかやっぱり俺ってEカップだったのか。


 ワンピースを着るまえにフニフニと下乳を持ち上げてみる。


 ……ふむ。巨乳だな。しかし結構重いなこれ。巨乳はよく肩がこるって聞くから気をつけないと。


 顎に手を当てながら考えていると、店員さんに温かい目で見られているのに気付いて急いで夏の元へと向かった。





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