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教えてっ、学校だけどどうすればいい? 4

 現在の時刻は八時二十五分。


 学校は八時半から始まるので、当然クラスメイトは全員登校してきているわけで。


 現在そのクラスメイト全員に取り囲まれている。


 これから弾幕のような質問責めに合うんだろうなぁ、と辟易していたのだが。


 俺の予想に反して誰も話しかけて来ようとしない。


 得体の知れない俺が怖いのだろうか。


 得体の知れないって……。俺は今お前らのマドンナの膝の上に座り(強制)、後ろから抱きかかえられているんだぞ。


 「ちょっと膝の上に座ってくれない?」とかお願いされて、気づいたらこの状態だよ。明菜を解放してからずっとこれだよ。足痺れないの?


 まぁ、なんだかんだでいまだに俺たちは睨み合って(?)いる。


 それじゃあ、今のうちに男だった時の俺の学校での立ち位置について話しておこうか。


 俺は陽キャと陰キャの性質を併せ持つ、いわゆるハイブリット枠に入っていた。


 それなりに友達もいたし、親友と呼ぶに足る人だっている。


 クラスではうるさすぎず静かすぎない絶妙なラインを攻めていた。


 そんな俺だったから、そこまで疎まれてなかった……と思いたい。


 説明終了。


 いつまでもこうして(睨み合って)いられないので藤原の腕の中から抜け出し、クラスメイトたちの包囲網から脱出して自分の席に座った。


 窓側の列の後ろから二番目。


 そう、男であるはずの一ノ瀬遥の席へとな!


 席について足を組み、クラスを睥睨した瞬間。


 教室がしんっとなった。


 わずかな物音すら立たない無音の空間。


 ──八時二十七分。


「お前らさっさと席につけよ。そろそろ先生が来るだろ?」


 俺の言葉遣いに全員がビクッとした。


 多分だけど、この見た目で乱雑な喋り方をすることにびっくりしたのだろう。


 だが、まだ俺だということには誰も気づいていない。


 それもそうか。席に座っただけだもんな。


 (銀髪美少女)(一ノ瀬遥)であることの証明かぁ。


 TSものでよく見るのだと、(一ノ瀬遥)しか知らない情報を何故か(銀髪美少女)が知ってるっていう展開があるな。


 んー、じゃあ親友の黒歴史でもバラしてみるか。


 割といい案を思いついた俺は、思わずニヤリと笑ってしまい、その表情を見たみんながまたビクッてなった。


 いけないいけない。今の俺は美少女だ。惹かれるような行動や言動は慎むようにしようっと。


 さて、俺が俺である証明(公開処刑)を始めようか。


「篠原、もう連日告白チャレンジはやってないのか?」


「!?」


「前田、まだお前の全裸スケボーの写真残ってるけど、見る?」


「!?」


「佐々木、お前には……『絶倫王』の称号をやろう」


「!?」


 今俺が名前を呼んだ(処刑した)三人が中学時代から付き合いのある親友たちだ。


 それぞれ、篠原啓介(しのはらけいすけ)前田修斗(まえだしゅうと)佐々木小次郎(ささきこじろう)


 こいつらの黒歴史は字面を見ればわかると思うが、一応説明しておこう。


 篠原の連日告白チャレンジは、中三の時に彼女が欲しい欲求に耐えられず、誰彼構わず告白しまったことだ。


 こいつの恐ろしいところは、本命も彼氏持ちも関係なく告白したことだ。そのせいで卒業まで篠原は『ヤ◯チン』だの『タラシ』だの、散々なあだ名を頂戴した。


 前田の全裸スケボーは、中二の時に篠原の家に泊まり深夜テンションで訳が分からなくなったせいで、何故か真夜中の道路を全裸で走り抜けるというなんともホラーな出来事が起こったのだ。


 当時の俺は爆笑しながら写真とビデオを連写した。


 佐々木の絶倫王は単純だ。一日に何回ヌケるのかという勝負で、十三回という記録を叩き出しぶっちぎりで優勝したからだ。


 篠原たちは俺の黒歴史暴露に衝撃を受けすぎたのか、完全に固まってやがる。


 そこからきっちり五秒後に再起動。


 前田が恐る恐る、声を震わせながら俺に問いかける。


「まさか……一ノ瀬か?」


 「まさか、そんなバカな」という表情をしている三人。


 そんな親友たちに、俺はとびっきりの悪意(笑顔)で返した。


「おう、みんな大好き一ノ瀬遥くん──いや、今はちゃんだな」


『!!?』


 俺の告白を聞いたクラスメイド全員が機能停止した。


 それから一泊後に、


『えぇええええええ!?』


 絶叫が学校中に響き渡った。


 余談だが、夏はずっと頭を抱えていた。


 笑。




────────




 あの後、みんなにもみくちゃにされながらさりげなくセクハラを受けるかもと警戒していたのだが杞憂だった。


 俺につめ寄ろうと一歩踏み出したのと同時に、いつの間にか教室に入ってきていたうちの担任が気だるそうな声で「座れ〜」と言ったからだ。


 マジ感謝。圧倒的感謝。感謝感激霰雨。


 まぁ、遅かれ早かれ質問責めにされるのは避けられないけど。


 っていうか、うちのポンコツ担任はなんで俺が女体化したことに気づかない?


 いや、ポンコツだからか。


 この人、見てくれはいいのに全然身だしなみを整えないからなぁ……。女失格だ。


 全校集会があるため、全員体育館に向かう道中も俺への視線はあるものの、誰も俺に話しかけてこなかった──いや、話しかけてこさせなかった。


 だって俺頭文字『い』だから出席番号一番だし。先頭だからみんな置いて行くほどの早歩きで人混みを駆け抜ければ誰もついてこれないし。


 諸行無常を感じつつ、束の間の平穏を噛み締めながら体育館へと向かっていった。


 何言ってんだろ俺。



⚪︎佐々木小次郎ささきこじろう[男]

・絶倫

・主に下ネタ担当

・(あえて、そう全く他意はなく本当にあえて何かとは言わないが)オールラウンダー


⚪︎篠原啓介しのはらけいすけ[男]

・彼女持ち

・バカするけど秀才

・ノーマル


⚪︎前田修斗まえだしゅうと[男]

・ちょいM

・常時ハイテンション[+暴走]

・(何がとは言わないが)拘束すきー

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