教えてっ、学校だけどどうすればいい? 3
「おっはよー!」
絢香から言葉遣いの指摘を受けてからしばらくしたのち、教室に来たのは夏の友達である下田明菜だ。
身長150センチにも満たない小さな体に愛嬌のある可愛い顔をしている女子だ。夏の親友らしい。
え? 紹介が適当だって? 仕方ないだろ。それ以上の情報を知らないからやろうにもやりようがない。
明菜が夏の傍にいる俺に気づき、一直線に駆けてくる。
「あれー? 休み前までこんな子いなかったと思うけど……転校生?」
明菜が小さな体を傾けながら夏に問いかける。
俺はまだ自分の席に座らず、夏の席の周辺で話していたからまだ誰かわからないのだろう。
それにしても……この子、小動物みたいで可愛い。癒し系とはこのことを言うんだなぁ。
「んー、この子についての説明は難しいから、みんなが集まってからでもいい?」
「ものすごく気になるけどぉ……わかった、我慢する!!」
夏が答えると、明菜はちょっぴりしょんぼりしつつも腕を振り上げて感情を表現する。
あぁ、かわいい。元気いっぱいだし、表情もコロコロ変わるし、ちっちゃいし……持って帰ったらダメかな?
…………わかってる。わかってるから、そんなに睨まないで夏。今の夏の顔とても乙女のものとは思えないよ?
「とても腹立たしいこと考えられてたと思うけど、それよりもまず明菜を離してあげて。埋もれてるわよ」
「おっと」
無意識のうちに抱きしめて明菜の顔を私の胸に埋めていたようだ。明菜は小さすぎて胸の位置にちょうど頭があるのだ。危ない危ない、私の巨乳が凶器になるところだった。
すぐに解放してあげると、ちょっとよろめいたものの、すぐに立ち直ると興奮して夏に話しかける。
「なっちゃんなっちゃんなっちゃん! すごいよ! このおっぱい、天上の枕くらい柔らかい!!」
「……まぁ、そんだけでかかったらそうよね」
夏が苦い顔をしながら俺の胸を睨みつける。
夏のも十分大きいと思うんだけどなぁ……アイアンクローが怖いから言わないけど。
「ねぇ、夏。この子持って帰ってもいいかしら?」
「ダメに決まってるじゃない」
可愛いものに目がない絢香が俺と全く同じことを考えていると言うことは、それくらい明菜が可愛いと言うことだ。
……あれ? 俺男の時こんなに可愛い物好きだっけ? TSしてから感性が変わってるような……。まぁいっか!
あと、俺の口数が少ないのは、女の言葉遣いをするための調整中だからだ。一通り覚えているとはいえ、すぐに反映することはできないからな。
こんな話をしているうちにも、クラスメイトたちは続々と登校してくる。
女子たちが教室に入ってくるたびに俺のことについて聞いてくるので少し億劫だ。あと、男子の目線が鬱陶しい。あまりにも露骨すぎて嫌になる。もうちょっと隠す努力をしたまえよ君達。
まぁ、俺の可愛さは世界にとどまるレベルじゃないし、胸もそんじょそこらの女とは形も大きさも段違いだからな! 見惚れても仕方ないね!
それからしばらくして、あと十分で始業のチャイムがなろうかというとき、教室に走り込んできた影があった。
「アウト? セーフ? ……あれ全然余裕じゃん!!」
時計を見て大騒ぎしている彼女の名前は大関瞳。明菜と同じく夏の親友だ。
「あれ? なっちゃん、その横の子は誰?」
瞳も例に漏れず俺のことについて尋ねてくる。
「……みんなが集まってからね」
げっそりした表情で答える夏。聞かれすぎて疲れたのかな? 絢香の方は全然平気そうだけど、やっぱり普段からしてる人付き合いの量が半端じゃないのか。
さすがは『元』学校一の美少女。人と話す機会が常人のそれとは桁違いなんだろう。
──そして、約束の時間が来た。