2話 二度の恐怖
唖然としてるうちに機械じみた声も消え、今聞こえるの目の前でもしゃもしゃと何かを食べてるうさぎ?の大きな背中と周りの木々だけだ。
俺は、あまりのショックに呆然と後ろ姿を見ていた時だった。
見られていることに反応したのか、のっそりとうさぎが首をこちらに回した。
振り向いたうさぎ?の口は血で濡れいていた。
「獣の肉食っていたのか!? それになんだ、やつは何故あんなに興奮してるんだ?」
やつはフーフーと鼻息を荒げ、口に入っていた獣の骨のようなものを掴んで放り投げると今度は立ちあがり、体ごとこちらに向けてきたのだ!
腕は太く、爪は長くなんでも斬れそうなぐらいギラギラと光り目は、真っ赤で体は獣の血で濡れていた。
俺は怖さで尻餅をついた。がその瞬間、何かが目の前を通り過ぎ、ブオン! と空振りした腕が空を切った。
「振り向きざまに、もう攻撃してきやがった...やばい、にげないと! だけど、力が入らねぇ...折角異世界に来たって思ったのに、俺はここまでかよ...」
足腰に力は入らず、やつは次こそ当ててやろうともう片方の腕を俺に向かって振り上げた時だった。もうだめだ、俺は死ぬんだ...そう思い目を閉じた時だ。
グシャ!
何かが潰れるような音がし、恐る恐る目を開けた。
そこには、頭があったであろうところにたぶん木製であろう大きな棍棒が叩きつけられていたのだ。
そのまま、頭部を失ったうさぎ?がこちらに倒れ込んできた。そして、叩きつけたであろう巨大なモンスターがそこに立っていた。
Lv.15 オーク 地属性
2mを超えてるであろう、巨大なオークがそのままうさぎの足を掴みずるずるとどこかへ引きずっていったのだ。その時、オークがこっちを見た。
次はお前の番だからな。俺はその恐怖から逃げ切ることも出来ず、ただ尻餅をついた状態のままうさぎ?が引きずられていくのを見ていることしか出来なかった。
後に残ったのは、引きずらていったうさぎ?の血の後だけ。
「ははは...やばい、やばいぞ! 次は俺の番なんだろう? やつは俺が逃げ切れないってわかってるから先にうさぎだけ持っていったんだろうな」
この状況から逃げないといけないけど、目の前で二度も恐ろしいことが起こった為に考えが思いつかない、それに、気づいたら晴れていた空もそろそろ夕方になる頃まで時間が過ぎていた。俺は恐怖で止まらない震えをなんとか止めようとしながら、這ってでも移動することにした。
やつは見えないが、ずるずると引きずる音は遠くにいてもはっきりと聞こえていた。今はとにかく逃げるんだ!
木城 優木 ステータス:エラー