親の顔より見た土下座。
初手謝罪安定
歩く。歩く。歩く。
二人は、山の奥へと繋がる坂道を歩いていた。
勿論、豹変し凶暴化した動物。いや、魔獣に気づかれぬように慎重にだ。
「はぁ、はぁ。一体どこまでいくんや……?おれはもう歩けんぞ」
「随分と醜く肥えたな。小銭が欲しくて欲しくてたまらない顔してるぞ? なあ、妖怪・小銭稼ぎ。これがオワッタお前の呼び名の一つだろ? 情けねぇ」
「なんやとコラ!」
男は漢の暴言にいつも通りカッとなってしまい、キレ芸の癖で肘が出てしまいそうになる。
「ふん。そうやって直ぐキレる。何でもかんでもキレりゃ良いってもんじゃねえぞ、クソ猿ッッッッ!」
漢は肘をすんなりと受け止め威圧した。ビビりな男は「うわああああああああっ!」と驚き、三歩ほど後ずさった。
「はっ、キレやすいくせにビビりか。救えねえ。お前は猿にでも喰われろ!」
漢は男に愛想を尽かしたのか蹴り飛ばして、男の方を一切向かずに歩き始めた。これには流石の男も焦り始め、まるで話しかけられたコミュ障の様にキョロキョロする。
ここで、放って行かれたら男は間違いなく魔獣に喰われるだろう。もし、運良く隠れて生きていけたとしても先がない。どうしてでも漢について行かないと。ならば、男にはこれしかない。
「すみませんでしたああああああああああ!」
男は漢の前で渾身の持ち芸。土下座をかました。
「……。謝意が感じられん。形だけの土下座はただ、額を床に擦りつけているだけだ!」
「そ、そんな……」
「だが、ここで土下座をするのはいいことだ。土下座するセンスはギリギリ生きてる様だな。早く着いてこい。もう少しで住処に到着だ!」
息を吸うように土下座する男。