9話
ーーーーー目が覚めると、そこは家のベッドだった。
体を起こすとエリスがそこにいた。
「だいじょーぶ?」
「……あぁ……痛ッ……まだ痛むよ、一体何があったんだ…?」
(そうだッ!あのおっさんにボコボコにされたんだッ!)
二日酔いの様な気だるさに、体の節々が痛む。
そしてゆっくり記憶を掘り起こすと、昨日の出来事を思い出した。
「おう、ようやく起きたか」
「てめえはッ!エリス、逃げるぞ!」
「うわわぁ!」
俺の部屋の扉を開けて、突然昨日の男が出てきた。
俺は逃がすために、エリスを抱えて飛び上がる。
「ヴァン!何してるの!」
「母さんッ!そいつから離れるんだ!」
(家族全員殺されるッ!)
母さんが昨日の白コートの隣からひょっこり顔を出した。
俺は必死で叫ぶが、聞く耳をもたない。
「そいつは俺を殺そうとして来た奴だ!」
「あなた、そんなことしたの!?」
「……い、いやぁ?俺は坊主の成長を見たくてだな?」
「坊主じゃなくてヴァンよ!4年間一度も帰らないで何してたの!?」
「仕方ねえだろ、帝国とやりあってたんだ」
(何やら言い争ってる…今がチャンスだ!)
俺は吸血鬼化して、昨日と同じように黒と金の紋章の装甲を局所に纏い、白コートのおっさんにしかける。
「食らいやがれ!」
「……ッ!……家ではやめろっての!」
(こいつ…また俺の技を軽々と受け止めやがった!)
俺が黒い波動を拳に纏い、そいつにぶつけるがビクともしない。
このままでは昨日と同じくやられる。
「あなたいつの間にそんな技を身に付けたのよ!」
「母さん、今のうちにエリスを連れて逃げて!」
「逃げるって……お前、俺を殺人鬼か何かと勘違いしてねえか?」
「お前に比べたら殺人鬼のほうがマシだッ!」
「そいつはひでえ……」
白コートが頭を抱えている、今のうちに力を蓄えて何度でもぶつけてやる。
「あなた達……いい加減にしなさいよ……」
「お、おい……落ち着けよ…?ヴァンのやつが勘違いしてるだけだって…」
「母さん!逃げるんだ!」
(なんだ?母さんの左手が輝いてる…?)
「来なさい!最上級炎霊!イフリートッ!」
その瞬間、母さんの左手が発光したかと思えば、全身が深紅に燃え上がる。
「落ち着けって…ッ!話せば分かるッ!」
「問答無用!」
その瞬間、母さんの拳が業炎を纏い、それをぶつけると、白コートが外までぶっ飛んだ。
母さんも、粉々になった壁から外へ飛び出して、翼をはためかせ白コートの前で浮遊している。
「4年も帰ってこずに、帰ったと思えばヴァンに大怪我させて……久々にキレたわぁ……」
そう呟くと、周りの大地が裂けて、空が黒くなる。
落雷がピンポイントに親父を狙い打ちする。
「勘弁してくれ!悪かったッ!助けてくれヴァン!」
「問答無用ッ!」
母さんが空へ手を掲げると同時に、白コートを起点に深紅の竜巻が登り上がる。
そのすぐ周りを広大な炎柱が何十本も立ち上ぼり、爆音が鳴り響く。
(えぇ……何これ……母さん超強ぇ……)
「ヴァン兄……な、何これ……?」
「わ、分からん……取り敢えず眺めておこう……」
ーーーーしばらく経って、黒焦げになった白コートの頭を踏んづける母さん。般若の様だ。
「あなた、さっきの話をヴァンにきちんと説明しなさい……」
「はいッ!」
雷に打たれたように黒焦げになった白コートが、全力で俺に向かって走ってきた。




