8話
外へ出て、耳を傾ける。
やはり足音が段々と近づいてくる、そしてその足音も寸分狂いなく同じ歩幅で同じタイミングだ。
(軍隊か何かか?)
魔法を使える時間だ、存分に楽しもう。
俺は覇術と闇術を発動する。
「毎回思うが、幻想的だなこれ…」
発動すると、白と黒の波動が体中を纏う。
所々が電撃の様に迸っていて、黒と白の雷を纏っているようだ。
(詠唱がいらないのが不思議だ……)
ーーーーーー目と鼻の先に敵が訪れた。戦ってみようと思う。
「見つけたぞ!忌々しき小神王女の根城だ!」
「本当に中にいるのでしょうか…?」
「何いってんだ!とっとと殺して帰って酒を飲むぞぉ!」
重厚な鎧をつけた屈曲男達が高らかに吠える。
数にして約数十人と言ったところだろうか。
(騒がしいな、エリスが起きてしまう)
俺は歩みを進めて、ヌッと現れた。
「何の用…?」
俺が後ろから声をかけると、全員の肩が強ばり、一斉にこちらを見た。
「なんだ、このガキは!」
「何と禍々しいオーラッ!何者だッ!」
あまりにも唐突に現れたため、全員驚いている様だ。
「質問を質問で返すなよ……何のようだ……?」
俺の目が緋く光輝き、角と牙、そして黒い翼が生える。吸血鬼として覚醒したのだ。
(なんだ…これ…?さっき装備した物から黒い霧が溢れでてくる……?)
装備品から霧が溢れでて、俺を包み込む。
その霧が晴れると同時に、全身に黒の装甲が施されていた。
所々、金色で紋章が施されている。
(三歳児に装甲って…これはこれでありなのか…?)
「うわぁぁぁぁッ!なんだこいつゥゥッ!」
「聞いてねえぞこんなのッ!寝込んでるガキ殺して家を燃やすだけじゃねえのかァァッ!」
「助けてくれぇぇぇッ!」
(こいつらビビりすぎだろ)
客観的に俺の風貌を見たい、さぞ豪傑な子供なんだろうな。
それはさておき、俺は魔法をぶっぱなす。
「無詠唱ッ!?体が動かねえッ!」
「助けてくれぇぇッ!殺されるゥゥッ!!」
「爆発するぞッ!」
「ぅう……息が出来ねぇ……!」
「一体なんなんだよぉッ!!」
阿鼻叫喚の地獄絵図だ。
敵からしてみれば、黒色と白色の得体の知れない何かが襲いかかってきてる事しか分からない。
(これほどの魔法をクールタイム無しで撃ちまくれるのか……3歳にして敵なしだぜ……)
「フハハハッ!その程度か貴様らァッ!」
俺はノリノリで魔王チックな言葉を吐き、辺りに魔法をぶちこむ。
すると、奥の方から白いコートを来たオッサンが突っ込んできた。
「情けねえなぁお前ら、こんなガキ相手に」
俺が撃ち込む魔法を拳で弾いて、そのまま爆走してくる。
(なんだあいつ!そんなのありかよ…!)
「止まれ!」
俺は魔法を全力で打ち込むが、止まる気配がない。
俺の前方まで迫ると、おっさんは目の前で姿を消した。
「何だぁ?この白い魔法……小せえのにやるじゃねえか!」
「かはっ…!」
(一撃であばらが何本か逝った…!強ぇ…!)
突然背後から呟かれたと思いきや、後ろから蹴りあげられた。木々を薙ぎ倒しながらぶっ飛ぶ。
(意識が飛びそうだ…!)
「これで終わりじゃねえよな?んー?……その装備は一体なんだ …?」
俺を優しく受け止めた男、何か言っているが、意識が朦朧として何をいってるのか分からない。
「食らいッ…やがれぇ!」
「……ッ!お前、魔法を同時に使えるのか!」
「な!?うそだろ!?」
闇術と覇術を折り混ぜ、拳に集約してぶつけた俺の渾身の一撃を片手で払われた。相手は余裕綽々だ。
(完全に自惚れてた…ダメだ…死ぬ…)
「末恐ろしいなぁ…おい……」
何やら感心してる様子だ。
「それじゃ、こっちの番だな」
「カハッ…!」
(なんだこれッ…!闇術ッ…!?)
足が真っ黒に感光したと思いきや、とてつもない威力の回し蹴りが飛んできた。
当たると同時に爆発して、俺を吹き飛ばす。
(詰んだ…これは勝てない…逃げるべきだった…)
「さっきの威勢はどうしたよ?大丈夫か?」
吹き飛んでる俺に平行についてきながら、爽やかな笑顔で語りかけてくる。
そいつに向かって蹴りを放つが、またしても片手でいなされる。
「坊主、おねんねの時間だ」
(こんなところで死ぬのか……)
音速を越えた様な蹴りが額に直撃すると同時に、俺の意識はどこかへ飛んだ。




