1話
今日はクリスマス、周りはカップルだらけ。
イルミネーションが光っていて、皆楽しそうに町中を練り歩いている。
俺はと言えば、これから夜勤の警備の仕事がある。
「みんな楽しそうだなぁ…」
高卒で特にやりたいこともなく、就職するのも面倒臭い。
かといって、働かなければ食っていけない。
だから今は、なるべく給料の良い仕事をしながらボーッと生活している。
目的もなく、何も考えない人生を歩んでいる。
「いつからこんなつまらない人生になったんだろう…」
クリスマスの夜ということもあって、憂鬱が加速していく。
目の前の現場までついた、今日は建築関係の警備だ。
「ガードマンさんお疲れー!足場組むから歩行者誘導してねー!」
「分かりました」
土方の兄ちゃんは元気だ、俺と違って家族や友達がたくさんいるんだろうな。
(俺だって本気を出せば…)
本気ってどう出すんだったっけ。
というか、本気を出したことすら無い気がする。
「おい、足場緩んでるぞ!あぶねえ!」
「崩れるぞッー!避けろッー!」
何やら大声が聞こえた、そちらの方を向けば、足場の鉄板が落ちる寸前だ。
真下には小さな男の子がボーッと立っていた。
「あぶねえッ!」
俺は咄嗟に踏み出して、その子を突き飛ばしていた。
と、同時に凄まじい音が聞こえた。
(なんだ…どうなったんだ…?)
うっすらと目を開くと、どこかのおばさんが悲痛の表情でこちらを見ていた。
その横には、先程の男の子らしき子が、なぜかおばさんがその子の目元を手で伏せている。
周りを見渡すと、皆が凄惨な顔をしながらこちらを見ている。
(なんだなんだ……?こんなに哀れみの視線を受けたのは産まれて初めてだ……)
俺は、ゆっくりと自分の体へ目を向ける。
足場が見事に俺の腹に刺さっていて、上半身と下半身が分裂していた。
辺りは血の海と化していた。
(あぁ……なるほど……これは詰んだ……)
なぜか冷静な自分がいた。
(目が見えない……とても寒い…………)
俺はゆっくりと目を閉じた。




