決着、そして何を思う
いくら時間が経っただろうか。よろめきながら立ち上がる影。
東木である。
しかしマスクが破壊され安定剤がなくなった今、彼に時間は残されていなかった。
虫の息となったこの少年に早くとどめを刺さねば。 異常な信念 異常な生命力を持つこいつを、このまま放っておくわけにはいかない。
ふらふらと歩み寄り膝をつく。 そしてベルトに仕込んだ短剣を取り出し、刃を下にして両手で握りしめる。
薬が切れてきたせいで直に代償を受け、意識が朦朧としてきている。 早く…とどめを………!!
東木が刃を、蓮の心臓に突き立てる。
それよりも早く、短剣を蹴り弾いた影。 なっ、こいつ……どこから!?
「ま、間に合った!! 蓮を……離せええぇえぇえええ!!!!」
マントを翻したその青髪の影──クロードは蓮を抱き上げると、素早く東木の顔面を蹴り飛ばす。
「が……っは、あ!!」倒れこむ東木。
しかしフラフラとしながらも立ち上がる。
「きききキサマ…ぁ、そいつ、を、コロさせ、ろ………」
もう一発蹴りを入れようと構えるも、こちらへ向かってくる大勢の兵士たちが見えた。東木出撃時の撤退命令がやっと解除されたのだろうか。なんにせよあの人数は分が悪いし、今はなにより蓮が心配。 撤退が最優先だ。
「あいにく君にも僕にもそんなヒマはないみたいだ、また今度遊ぼうね!!」
クロードは蓮を抱えたまま壁の方に走り出す。兵士が追うも、身体強化の能力を使っているクロードの速度に追いつけるはずがない。瞬く間に壁の麓まで来ると、タッタッタッと垂直の壁を登っていく。こうなってはもう兵士が追うことはできない。壁の頂上まで登り、そのまま反政府側に飛び降りる。
「蓮、なんとか耐えてくれよ…!」
脈も呼吸も浅い。事態は一刻を争っていた。
一方東木のそばにいた兵士は、彼の異変に気がつく。彼は立ったまま気絶していたのだ。
すぐさま救護班が到着するも持ち合わせの安定剤は少ない。東木は担架に乗せられ、応急処置を施されながら運ばれていく。彼もまた致命傷を負っていたのだ。こちらにも時間は残されてはいなかった。
「…………く、クロ姉…?」 「蓮…!! よ、よかった……ほんとによかったよぉ………うぇええ」
目を覚ました蓮を、クロードは泣きながら抱きしめる。 廃墟に戻った彼女は、医療班とともにずっとつきっきりで蓮の面倒をみていたのだ。
「ぐずっ………ほんっとにバカなんだから……こんなに心配かけて…………」
記憶が混濁していて状況がよく分かっていない蓮は、呑気に「ねえクロ姉、お腹すいた」なんて言うのであった。
同じ頃、新政府の病院で東木も目を覚ます。看護師やそばで見守っていた幹部たちも一安心でため息をついた。「すまない、心配をかけてしまったな。」
ベッドの上で外を眺めながら東木は、あの反政府の少年のことを考えていた。 玄野 蓮……か。
お前は、いつか俺が殺してやる。 だからその前に他の奴らに殺されないよう、せいぜい頑張ることだ。
「俺もヤキが回ったか。」なんてぼやきつつ、東木は笑みを浮かべて再び眠りに落ちていくのだった。
これにて終演! でございます!
いやぁ最後の最後で助っ人を呼んで解決させちゃうっていうちょっとズルい?ようなオチでしたが、まぁこれもご愛嬌ってことで!!!(横暴)
ともかくここまで読んでくれてありがとうございました! たぶん誰かとの絡みでの長編小説とかを書くのはこれが最初で最後だと思いますが、これからもウチの蓮やGGGさんの武尊くんをよろしくおねがいします✨