第1章 始
「んんっっ、、」
白い天井が目に映る。
どこだここ?そう思いながらゆっくりと体を起こす。柔らかくはないベットがキシキシ鳴る。窓から漏れる日差しが眩しい。
「俊くん、起きた?大丈夫?」
突然、静かな白い空間に甲高い声が刺さる。
「大丈夫だっての、明日香。それよりそんな大声出すなよ」
「だって、心配したんだからね!突然片倉君庇って吹っ飛ばされてんだから!もう一週間も眠ってたんだよ!」
「そうだったのか、、ダメだ全然覚えてない」
白いタイルの床に赤い毛布が落ちている。おそらく、昨日もここで心配してずっといてくれたんだろう。
「俺は、大丈夫だから。お前もゆっくり休めよ。多分ちゃんと寝てねーんだろ?」
「もう、一週間眠ってた人がよく言うよ」
「おい、楽しく話してんのはいいが、細川、お前はもう仕事の時間だ。行くぞ」
気づかなかったが、真田が病室のドアにもたれかかって腕を組んでいた。
「えー、せっかく俊くんが目覚めたのにー、もう少しいたっていいじゃー」
「あ、真田隊長いたんですか?いたならいたって言ってくださいよー」
「相変わらず元気で良かった、おい、細川お前は行くぞ。上官達に連絡だ」
えーっ 明日香は真田に引きづられるように病室から出て行った。
なんかまたあの夢を見ていたみたいだ。真田隊長はあのあと、奇跡の生還を遂げたが、俺はあのことを今でも夢を見ることがしばしばある。 敵の拳があと3センチ心臓よりにぶつかったら、彼はもうここにはいなかったのかもしれなかったのだ。
僕は未だに悔やんで入ることがある。あの時自分がアレを殺していれば、、思わずシーツを握りしめる。
ガタン
病室が静かになったのも束の間、大きな音を立ててドアが開かれた。走ってきたのか、息切れをした石田が入ってくる。
「立花、もう元気そうじゃないか、良かった。それより、緊急会議だ。まだ立てないようだったら、車椅子を使ってすぐ会議室に来てくれ。なるべくすぐにだ」
石田は早口にまくしたてると、ドアをバタン、と閉めてまた駆け出していった。
5月5日 午前7時50分 STU中央本部 大会議室
歩けるようだったので、俺はまだ痛む右腹を抑えながら会議室に入っていた。
戦闘服を着た隊員達がずらりと並んで座っている。STU本部長 柴田興三は、辺りを見回して髭の生えた顎を撫でると、マイクをトントンと叩き、口を開いた。
「これから、緊急会議を始める。横浜本部が何者かによって襲撃を受けた。今は横浜の隊員によってなんとか持ちこたえているが、厳しい状況だ。今すぐ中央本部からも応援を出すことになった。詳しい状況については里見君」
はい、と一人の女性が前列から立ち上がった。里見は、そのメガネをかけ直し、長い髪をかき上げながら資料を読み始めた。
「第3隊長 里見恵梨香から報告させていただきます。STU横浜支部への襲撃犯は約300、装備は銃、数種類の爆弾などを所持してしている模様です。横浜市民の避難指示は終了し、本部からの応援は、第1隊100名、第2隊50名、第3隊15名を予定しています。横浜支部からの報告によると敵の中に数体UNDEADと思われるものを発見したようです」
「あまり、時間の猶予は無さそうなので至急出発する。里見隊長、すぐに任務作戦を発表してくれ」
里見がホワイトボードの前に行き、略地図を書きながら、説明を続ける。横浜支部はみなとみらい周辺の東京湾沿岸に位置しているようだ。
「はい、まず、8時半に第1隊真田隊長ほか50名がみなとみらい方面から横浜支部の北門から内部へ援軍に行きます。
同時に、榊原副隊長率いる50名が中華街方面から南門へ突撃し、応援に行ってください。佐竹第1中隊長、同じく療養中の立花第1中隊長含む他の第1隊員は中央本部で待機です。
横浜支部は、東京湾沿岸にあるため、敵の援軍が海上から来ることも考えられます。そのため、第2隊30名は、STUの戦艦ARESにて待機、ARESの責任者を第2隊長竹中さんにお願いします。
第2隊、上杉狙撃班長他、狙撃班の皆さんはARES内にて待機、指示があれば、ヘリコプターで狙撃をして下さい。
残り第2隊員と第3隊は本部神奈川県警本部にて指示、支援を行います。作戦は以上です」
「では、8時5分に出発する。総員、準備を急げ!」
柴田が低い声で解散を言い渡すと、隊員は素早く準備向かっていった。
部屋から出て行く真田隊長に声をかける。
「心配するな、立花。すぐに戻ってくる。お前はゆっくり休んでろ。そんな体じゃ戦えもできんだろ」
「はい、隊長」
こうして、俺は参加せずに、STU主要部隊が横浜支部への応援に向かった。