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UNDEAD  作者: 本堂魁
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序章

黒い雲に覆われた空から絶えず五月雨が降り注いでいた。もう夏になるというのに、この長い一日は、ずっと冷え切ったままだった。

雨より大きく聞こえてくるのは、今朝まで一緒に飯を食っていた仲間の悲鳴。

ザザザ...左手に持っている無線機が音を発した。もう何が聞こえてくるかはわかっている。

「第一隊、 松永隊員殉死!」

「第二隊、 大友隊長殉死! 第二隊、本部に撤退します!」

ああ、地獄だ。なんで俺は仲間の死を目の前にしてここに突っ立って入るだけなんだろう。今すぐ助けなきゃ、、階段を駆け降りようとした。

「おい、待て。俺たちの仕事は無駄死にすることじゃないだろ!」

同僚の一人がおれの腕を掴む。

「だったら、ここでじっとしてればいいのか!」

掴まれたてを解こうとする。

「そうだ!もっと冷静になれ!今ここでするべきことは何だ?もっと考えろ!」

俺は、力を緩め、仕方なく持ち場に戻った。


俺は、援護班として数名の同僚新兵とともに渋谷 旧109の屋上からこの惨劇をずっと見つめていた。と、そんな時唐突に背後から扉を開ける音が聞こえてきた。俺は寒気を感じた。すぐに新兵たちは、扉から入ってくる何かに向かって拳銃を構える。

「なんだ真田さんじゃないですか」

新入隊員の誰かが言った。そこにいたのは、STU第一隊長 真田一樹だった。彼は、STUでも屈指の強さを誇り、わずか三年で精鋭班の隊長になった実力者だ。 俺がSTUに志願したのも、この人に憧れていたからだ。

「新兵達は悪いが、第一隊の援護を頼む。すぐに、マークシティに来てくれ。」

この時、俺は初めて戦争の実感がわいた。と同時に死への恐怖が考えられないくらいに膨張して、一歩も歩き出せないかと思った。

「おい、何ビビってんだ、さっさと行くぞ」

俺は右ポケットの中から翡翠の勾玉を出して、握りしめ、マークシティビルへと向かった。


マークシティビルに着くと、すぐに奴の怪奇で不気味な姿が見えた。UNDEADと呼ばれる生物だ。その体は人間そのものだが、やけに筋肉質だ。多数の血管が遠目でもわかるくらい浮き出ている。まるでその怪物のような手で、常人の頭蓋骨はすぐに握りつぶされてしまうだろう。

1階エスカレーター前まで真田隊長の後ろに続きながら様子を伺っていると、窓ガラスが破れえるほどの雄叫びが聞こえてきた。

「新兵、俺があいつを倒す。お前たちは俺の援護を頼む。まあ、援護はいらないと思うがな。」

と言い真田はすぐに、動かないエスカレーターを駆け上がっていった。


その雄叫びの正体、駅員の格好をしたUNDEADが真田を見つけると、すぐに飛び掛かった。裂けた口をさらい開きながら右の拳を真田にぶつけた。と、思ったとき真田は小型のナイフを右手に投げつけた。すぐに、左手に持っていた日本刀を、右足を踏み出しながら、相手の右腕に斬りつける。敵の筋繊維は強く、切断はできない。と思った矢先、真田は日本刀で、敵の喉元を突き刺していた。敵は怯み、壁にもたれかかる。彼は、最後にとどめとして、拳銃を2発敵の頭に打ち込んだ。

強い、、、これが「三器使いの真田」か、。初めて、隊長の強さを実感した。俺も剣道二段を持っているが、竹刀より二倍も重い日本刀でこんな速い動きはまずできない。


「おい、さっさといくぞ、お前ら」

振り向いた真田の顔は、防護用ヘルメットを通してでも獲物を追う獅子のように凛々しく輝いていた。左頬についた昔の傷跡が、より頼もしく見える。

その後も、真田隊長と俺ら援護班は周りのUNDEADを倒しながら第一班の戦場に駆けつけていった。俺も、何とかUNDEAD一体の胴体に一発撃ち込むことができた。訓練とはあまりに違う緊張感、敵の予想外の強さに僕はすでに圧倒されていた。


4階マークシティ駐車場前にやっとの思いでたどり着いた。真田隊長によれば、俺たちを呼ぶ前、ここで第一隊が戦っていたはずだが、どこにも隊員の姿が見当たらない。次第に俺の心臓の音が破裂しそうなくらいに大きくなっていく。まさか精鋭の第一班が、、、

仲間の姿を探し回っていると、割れたヘルメットを壁際に見つけた。その壁には、殴られたと思われる生乾きの血痕があった。

「おい、どうした! 高坂! おい、起きてくれよ、、、」

突然、真田隊長の叫び声が響く。真田とともに活躍していた第一隊所属隊士高坂忍が息を引き取っていた。

「被液か、、被液だけはやめろといっただろ!」

何も話さない部下に向かって叫び、悔しそうに顔を歪めた。

ほかの隊士も高坂と同じように死んでいた。死因は自決。UNDEADの体液を浴びたものは、浴びてから一日以内に死亡、その後一時間以内で自分もUNDEADになってしまう。しかし、浴びてから一時間以内に死亡すればUNDEADにはならないといわれている。そんな恐ろしいシステムのため、戦える兵士でもUNDEADの体液を浴びた者は15分以内に自決しなければならない。


そしてしばらく歩くと、この駐車場の警備員と思われる死体を発見した。頭から流れた血が雨に打たれている。おそらく、UNDEADになって高坂たちに討伐されたものだろう。UNDEADは本当に死ぬと、筋肉質の体はなくなり、元の体のままの死体に変わる。そのため、死体の調査ができずUNDEADに関することは、まだほんの一部しかわかっていない。


一階に下がり、本部渋谷駅に向かおうとしている時、突然、背後から隊士の悲鳴が聞こえた。

「くそ、まだいんのかよ、、」

隣の新人隊士、石田透が嘆きの声を上げる。さらに、前からももう一体唸り声を上げてこちらに向かってくる。

「やばい、挟み撃ちだ。」

背中に寒気がするのが分かる。

「俺は前を倒す。新兵は後ろをやれ!」

真田の指示がフロア内に響いた。俺らは後ろにいる大男のUNDEADに攻撃を仕掛けた。残った新兵八人で敵を半円状に囲み、拳銃を構える。 すると、敵は俺と反対側の隊士に向かって左拳を振り上げた。

「危ない!」

隣の石田が叫んで近寄り、敵の頭めがけて弾を打ち込もうとした。だが、敵の右ひじがピストルに当たり、彼はそれを落としてしまう。

「うぁ、くそ!」

そして、敵は三人の兵士を一気に殴り飛ばした。

「ウォオオオオオ!」

また敵がうなり声を上げる。

殴り飛ばされた隊士三人はまだ立ち上がれないでいる。もう敵はまじかに迫っているのに。

「うぁあ!こっちだ!」

俺は敵に向かって拳銃を乱射しながら挑発する。と、すぐに奴は血相を変えてこちらに迫ってきた。俺は敵に向かって必死に撃った。しかし、弱点の頭には当たらず、主に胸に当たった。もう一発頭に打ち込もうとして、引き金を引いた。しかし、金属の音が鳴るだけだ。

「弾切れかよ。。」

やばいやられる そう思った時、敵の肩から血が吹き出したのが見えた。敵はそのダメージの大きさでそこにうずくまっている。

「なめてもらっちゃ困るぜ」

その先にはドヤ顔で銃を構えている石田がいた。


一方、真田のほうでは、、

「さっさと殺してやる、」

そういいながら尻ポケットから小型ナイフを六本取り出し、指に挟んで一斉に投げつけた。ナイフは敵の首から胴体に勝ててすべて刺さった。敵は興奮して、真田をにらみつけると、一気に突進してきた。高くジャンプして飛び掛かってくる敵に向かい、腰の刀を素早く抜いた。その蓮治は敵の左脇腹。に強く切りつけた。だが、効果は薄い。

「ちっ、、」

すぐに相手の右腕が真田に向かってものすごいスピードで、降りかかってくる。真田は左に屈んでそれをよけ、相手の顎下に剣を突き刺した。

「ガァアアア!」

敵は、鼓膜が破れるくらい大声で叫んだ。

「うるせぇな」

真田は、敵のお大きく裂けた口から刀を脳天に向かって突き刺した。と同時に叫び声は途絶え、敵はフロアの床に倒れみるみるうちに蒸気を出しながら人間の姿へと戻った。

「ふぅ、上出来だ」

真田は微笑し、後輩たちの援護に行った。


石田は、それから敵の頭へ一発弾を撃ち込み、苦戦した敵もついには絶命した。

「石田、立花、よくやった」

後方から敵を倒し終わった真田がやってきて両手で俺たちの肩を叩く。俺の前に倒れたて敵から、蒸気が少しずつ出ている。

「よかった、、」

安心した俺はその場に座り込んだ。と次の瞬間、

「ガァア!」

倒れた敵が起き上がり俺にこぶしを振り上げる。

あぁ、もう終わりだ、と思った時、

「危ない!」

敵の頭が吹き飛ぶのと、真田の胸に拳が刺さるのがほぼ同時だった。

「真田隊長ー!」

真田を膝の上に抱えながら、俺は必死に叫んだ。


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