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ロバートの災難

猛暑日ですね。いつの間に・・・・・・・。

「俺、恋の占い師でやっていけるかもしれない。」



ロバートは投げ遣りに言った。人の執着心を覗き見てしまう力なぞ、なんと下品な能力だろうか。しかもばれたのがウィル兄さんだ。兄さんを覗いてしまったのは自分だが、あれは断じて不可抗力だ。


あの時。

自分たちを呼びに来た職員のニナに、さらに詳しく言えば、ニナのお尻の辺りに金の粉が舞うように光が纏わりついていた。その光はウィリアムへと続いており、二人が話すために近づけば更に光が増した。それを見たロバートは直感的に兄の激しい執着を感じ、思わず鳥肌が立った。

それに気付いたウィリアムがこちらを見て薄く笑っていたのだからたまらない。ロバートは冷や汗が止まらなくなった。

詳しく聞いて来ようとするアベルと魔女様に全部気のせいだったと押し通した。

しかし兄であるウィリアムには通じず、余計な事は言うなという無言の圧力を受け続けた。




「本当だね。上手く隠していたのに。

 あそこでロバートがしゃべりだしたら台無しになるところだったよ。」



ウィリアムは冷たい口調で言った。

そんな冷徹な態度にロバートの肩は小さく揺れた。

昔から兄弟一優秀な兄は、穏やかで兄弟げんかもいつも諫める側だったが、怒らせると兄弟一怖かった。


あの後、待ちくたびれた母親がアベルとメグをお茶会へ連れ去り、何かを知ってしまったロバートはウィリアムの私室へ連れて行かれた。



「何でニナさんなの? 彼女は庶民だし、兄さんより二つも年上だし、何より旦那が居たよね?」



張りつめた空気に耐えられず、ロバートはしゃべりだした。何とか兄の怒りを逸らしたいのだ。




「人聞きの悪い事を言うな。元夫は何年も前に女と逃げて、離縁手続きもとっくに済んでいる。」


ウィリアムは、僕が担当したんだから間違いない、と自慢げに言った。それはそれで不正なことをしていないか心配になるのだが。

しかしロバートはまだ疑問があった。アベルの単純騎士道一直線と違って、ロバートは人間関係に聡いほうだと自負している。しかしこれまで兄とニナが親しそうな関係に見えたことがなかったのだ。



「それに、ニナさんと兄さんが特別な関係に見えたことはなかったけど。

 いつから付き合っているんだよ。」


「・・・・・・まだ何も。」


「何も?」


「いや、外堀は埋めているよ。この前再婚話を持って来られた件は潰した。」


「再婚話を持ってこられた? それはニナさんに、だよね。それを、兄さんが潰した?」


今聞いた限り、交際相手でもない兄がどうしてニナの縁談を断るのだ。


「ニナさんにも、相手側にも気づかれないようにするのは骨が折れたよ。」



余計な事をしてくれて、と少し怒っている様子のウィリアムに、ロバートはぞっとした。余計な事をしたのはもしかしなくてもウィリアムだ。しかし命が惜しいロバートは口を慎んだ。


ロバートはこれまでウィリアムを兄弟一優秀で清廉潔白な人間だと思っていた。

しかしこれは役所の窓口でも聞く”付きまとい”という奴ではないだろうか。

何となく犯罪臭がしてきた。



「ロバートも何も気づかない振りで通してね。あ、でも悪い虫が寄ってきたら教えてね。」


「・・・・・・はっきりさせたいんだけど、兄さんとニナさんは恋人同士でもないんだね?」


「もちろん君たちが結婚したら求婚するよ。

 それまでに思いを伝えたら止まらなくなりそうで、自分を抑えているんだよ。」


行き遅れの弟達が早く片付いてくれないかなぁ、とつぶやいてこちらを見てくる。


「したらいいじゃん。俺たちに圧力かけるより、求婚したらいいじゃないか!」


話の矛先がこちらを向き、焦ったロバートは言った。キルラー家の両親はうるさく言わないだろう。働き者の嫁であれば尚の事歓迎するだろう。加えてそう言うと、長兄はうっすらと笑いながら教えてくれた。笑顔なのにイラついているように見えるのは気のせいだろうか?



「父上と母上なら受け入れてくれるだろうね。でも煩いのがいるだろ?

 だから君たちが先に結婚して婿入りする。すると跡継ぎの僕が独身であれば周りは焦るだろうね。

 そうしたら、平民の嫁だろうが再婚であろうが風当たりは小さいだろう?」


「それは・・・・・・・。」


「ニナさんには何の憂いもなく、幸せにお嫁に来て欲しいんだ。失敗は許されないにがさないさ

 だって僕が惚れたあの理想の曲線を持つ女神なんだよ?」


「理想の曲線おしり、ですか・・・・・・・。」



一般に、貴族間の結婚が望ましいとは言われている。貧乏暇なしキルラー男爵家は幸せであれば良いと思っているが、それでもある少ない付き合いも関係してくる。特に血縁関係は切っても切れない仲だ。遠い親戚筋には子爵を賜る家もあり、五月蠅く口を出してくる親戚には数件心当たりがある。



「だから、アベルの婿入りは大歓迎だ。もう領主様へ賛成だと連絡しておいた。」


「は?」



婿入り?

いつの間に領主様へ?

あの二人、たぶんまだ付き合ってもいないと思うけど?



疑問が一度に湧きすぎて、ロバートは言葉が出なかった。喉の奥で台詞が出番の順番でもめている。



「次はお前だ、ロバート。ニナさんのふくよかな美尻に次の魔の手が迫る。

 早く結婚相手を連れてこないと、お前は男が好きで結婚は無理だと噂を流すよ。」



そう確実に城下に広まるように作戦を立てなくては、そして僕はニナさんと・・・・・・、とうっとりと語りだした。

ウィル兄さんは壊れた。自分の性癖を暴露した上に、自分の欲望のために、弟達を結婚させようとしてることも隠そうともしなくなった。


俺に関してはもう社会的な抹殺に近い。


ロバートは稀有な力を手に入れたが、そのせいで危機的状況になってしまった。



「ウィル兄さん、俺、結婚に前向きになるからさ、ちょっと噂を流すのは待ってよ。」



ロバートはじりじりと部屋の扉まで後退し、イイ女探してくる!!と飛び出した。向かう先はアベルだ。余計な力を付けさせやがって。何か仕返しをしなけりゃ気がすまない。一発どころか何発でも殴ってやる!と心に決めて。

読んでいただきありがとうございました。

間が空いてすみません。

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