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王女はどこだ

です、ほら。ポッケから力が漏れ出していませんか。マーガレットちゃん?」



バレットがいつの間にかアベルの後ろに移動して言った。前後で挟みこまれてしまった。

背後でマーガレットが息を飲んだのがわかった。



「ちょっとポケットの中を見せてもらえますか? ダメなら勝手にしますけど、嫌でしょ?」



バレットがマーガレットに寄って来た。ホント、こいつらはハイとしか言えない質問しかしないな。

アベルはバレットからマーガレットを庇うため、身体の向きを変えようとした。

すると、マーガレットがアベルの腕を掴んで止めた。掴む手の力は弱かったが、もう震えていなかった。



「わかった。だんだんわかってきた。でもまだ不安定だから。

 クレイア様、バレット様、ちょっと離れて。」



マーガレットが意味不明な返事をしたが、アベル以外は分かったらしい。バレットは素直にその場に止まり、クレイアは腕を組んでこちらを伺っている。

わからないのはアベルだ。なんだ?15年前の事を思い出したのか。ポッケに力が漏れ出すってなんだ?



「マーガレット?」



説明してほしいと目線をやると、マーガレットは沈んだ顔で上着の内ポケットから眩しいほどの光を放つキラ星石を取り出した。それは昨日見たぼんやりとした光とは比べようもない強い光だった。



「・・・・・・ごめんアベル。私、あちら側の人だったみたい。」



マーガレットは光を握りしめながら、ぽつりと言った。






初めは気が付かなかった。ただただクレイアが恐ろしかった。アベルの背に隠れるしかできなかった。


だが少し近づいて話を始めた頃に、クレイアから漂う何かがあった。目に見えるわけではなく、体の奥底から感じるような何か。それは段々と、濃く重いだと主張するように感じられた。


クレイアに対する恐怖よりも、漂う重い力に対する混乱が上回った頃、バレットの方からさらに明確に力を感じた。寧ろ押し付けられているとわかった。バレットは確信犯だ。

押し付けられた力はマーガレットの中を溢れさせ、上手く抑えていられなくなった。


まるで、見えない圧力で身体の中にぎゅうぎゅうと詰め込まれているようだ。三人の会話など、とても聞いていられなかった。

傍にはアベルが立っている。力の制御を失うとどうなるのだろうか? アベルを傷つけるかもしれない!

なのにバレットは力を押し付け続けた。マーガレットは抑え込むのに必至だった。



ふとした拍子に震える手がポケットのキラ星石に当たった。

当たった瞬間、身の内に詰め込まれている力が少し流れて行ったのがわかった。

これはいける! 直観的に思った。

一気に流すとどちらも壊しそう(石も自分も)なので、慎重に、慎重に、流れを制御しながらキラ星石に溜めていく。いける。上手く行きそうだ・・・・・・。





そして冒頭に戻る。





バレットは満足したのかもう力を押し付けて来ない。

マーガレットは恐る恐るアベルの反応を伺った。



「そうか・・・・・・。身元が分かって、良かったね。」



アベルは力が抜けたような微笑みを浮かべた。

予想はしていたが、いざ現実を突きつけられるとやはり動揺した。なんだがマーガレットが遠くなってしまうように感じたのだ。



「でも大丈夫? アイツらが何かしたんだろ?」



マーガレットの焦ったような様子は、客人方がマーガレットに強引に何かしたようだ。思わず客人であるのにアイツら呼ばわりしてしまった。



「おや、勘違いしないで下さいね。力を起こして制御を学ぶ方法は概ねこんな感じです。」



バレットは悪気なく言った。

あちらの国では、子供の頃から遊びの内にお互いの力をぶつけ合って、自然と学んでいくらしい。マーガレットは僅かしか力を使っていなかったから、力に目覚めていないと踏んで行動に出たと言われた。



大きなお世話だ。

アベルもマーガレットも思考がハモった。



「マーガレットの力はモノに付加させて使うようだ。一般的な、害のない能力だろう。

 仕上げだ。ほら、余分な力を流してバレットに戻してごらん。」



クレイアがマーガレットに声をかけた。これが出来てレッスンは終了らしい。

マーガレットが再び手元を見つめると、石から光がどんどん弱まっていった。



「わぁ、光が消せたー。」



マーガレットは、光りを消せるようになったと喜んでいる。

現金だなと笑っていたら、クレイアが光らなくなったキラ星石をみて厳しい顔つきになった。



「マーガレット。・・・・・・これをどこで手に入れた?」



手を出すクレイアにキラ星石を渡しながら、おばあちゃんの形見だと伝えると難しい顔をした。



「これはララナのものだ。・・・・・・お前たち、早くララナの下へ案内しろ。」



冷たい表情をしたクレイアが命令した。

一気に凍り付いた場に、遠くから馬の嘶きと馬車を引く音が聞こえてきた。

やっと領主様からお迎えがきたようだ。


しかしマーガレットとアベルは指先一つ動かせなかった。

あの不思議な力だ。恐怖しか感じられない。



「クレイア様、お力の制御を。それ(・・)は私の力だといっておく設定ですよね?」


「・・・・・・それを今、お前がばらしている。」


「フフ、私もララナ様の手掛かりに嬉しくて動揺しているようです。

 思った以上に早く解決しそうじゃないですか。

 それにマーガレットちゃんはどのみちバレていますよ。」



その通り、マーガレットはクレイアから重苦しい力が襲ってきているのがわかった。

アベルは動けない体制が悪いのか、傷が痛み呻いている。



「マーガレットちゃん、正直に答えて下さい。この石は探している方の迷子札なんです。

 どこで手に入れました? 持っていた方はどこにいますか?」


ぎりぎりと締め付けてくる何かも、口元は自由にしてくれるようだ。ちっとも有難くないが。



「たぶん、私が迷子の時に拾った荷物の一部だと思う。

 おばあちゃんが、集めて取っておいてくれた物だよ。」


「迷子?」


「15年前にマーガレットは森で迷子になっていたんだ。おい、馬車から騎士が来たぞ!」



アベルが苦しい息で叫んだ。

いくら客人でも、人質を甚振っているところを見せつけないだろうと踏んで声を上げた。

予想通り、途端に体が自由になった。

高級な馬車は少し離れたところに停まり、騎士が二人でこちらに走って来た。領主様は城で待っていると告げると皆を馬車に乗せようとした。

しかしクレイアは鷹揚に手を上げ、騎士を制して言った。



「いや、結構だ。領主殿へ参るのは王女を見つけた後で行こう。馬車を借りるぞ。」


「重要な手掛かりを見つけたのです。思った以上に早く事が済みそうです。

 領主様へはよろしくお伝えください。」



ポカンとする騎士を置いて、客人はさっさと乗り込んだ。



「アベル君、マーガレットちゃん、早く乗りなさい。ララナ様の話を聞きます。」



騎士達に人質と憐れまれつつ、アベルはマーガレットに肩を貸してもらい、馬車に乗り込んだ。

マーガレットが、ララナ様は知らないが、迷子を迎えに来た人に渡せと言われた品があると言えばそちらに向かうと決まった。



バレットが行先を伝え、御者が馬に鞭を入れた。




馬車の中でバレットがクレイアの世話をしている間、マーガレットがこっそりと話しかけてきた。


「そう言えばアベル、ララナ様って王女様も迷子なんだね。

 なんでウチに王女様の迷子札があったんだろう?」


「15年前の行方不明者探しに、15年前の迷子。繋げて考えない方がおかしいだろう?」



マーガレットは間抜けた顔をした。

どうやら先ほどの力の訓練中は、話を聞くどころではなかったようだ。



「私って王女様なのーーー!?」



「いや、違う。」



ちょっと嬉しそうなマーガレットの叫びは、クレイアの冷静な一言でぶった切られた。



「我々は血の繋がりはわかるんだ。君ではない。」



マーガレットは恥ずかしそうに縮こまった。ここまできて王女様じゃないなんて神様もヒドイ・・・・・・とブツブツ言っていたが。


「マーガレットちゃん、君も力の使い方に慣れてきたらわかるはずです。

 きっとアベル君のルクシャーン人の血も感じ取れますよ。」


憐れんだバレットがフォローを入れてくれた。

だがしかし、そんな能力は要らない。

読んでいただきありがとうございました。

遅くなってすいません。

物語をつくって文章にするという作業、改めて難しいと感じました。

でも楽しいんですよね。次回も早くあげられるようにがんばります。

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