第十七話
翌日の正午、図書館の前でユーディーはリーゼから依頼した見取り図を受け取っていた。
「ありがとう。相変わらず仕事が早くて助かるよ」
簡単に目を通してから、ユーディーはそれをミリタリーコートのポケットにしまう。
「情報の漏洩についても、調べておくから」
耳に掛かるブロンドを掻き上げながら、リーゼは付け加えた。
「ああ、頼むよ」
一晩経っても『教団』への怒りと、エファを助けるという強固な意志は少しも衰えていなかった。むしろ、数日ぶりに一人のベッドで眠ったことで、エファへの想いはより強くなっていたのかもしれない。ユーディーは刺し違えてでも『教団』からエファを救う心算であった。
「大丈夫だとは思うけど、死なないでね」
リーゼがユーディーの目を見て、言う。
「『教団』の持ってる情報が報酬でしょ。ちゃんと持って帰ってきてよー」
そして、いつものように冗談っぽい笑顔を浮かべる。
ユーディーはその笑顔で少し気持ちがリラックスするように感じた。
「ああ、マティーニの奢りもあるしね」
そう言ってリーゼと別れ、ユーディーは『教団』の本部があるというツェントゥルムを目指し歩き始める。
首元の黒いスカーフが、涼しげな秋風に揺れていた。




